今月5日付けの朝日新聞・科学面に「3を究める」という記事が掲載されました。冒頭には「昭和を象徴する巨人軍・長嶋茂雄選手は『背番号3』。古くから伝わる『三種の神器』『御三家』、『仏の顔も三度』『石の上にも三年』といったことわざから、現代の『3K職場』まで、日本の文化には3が欠かせません」とあります。
さらに本文では、「野球は3ずくめ。ストライク三つで三振。3アウトでチェンジ。3かける3の9回を9人対9人で争う」などと、野球にまつわるさまざまな「3」を取り上げていました。
私は、「野球は『3』の積み重ねでできているからおもしろい」と思っています。
日本には「二度あることは三度ある」「三度目の正直」という言葉もあるでしょう? 正反対のことを言っているのですが、どちらもよく使われます。「二度続いたことがもう一度起きる」のか? それとも「三度目こそ、二度目までとは違う結果が出る」のか? そこが大きな分かれ目というわけです。
小さいときからこの言葉に慣れ親しんできた日本人にとって、野球はピッタリのスポーツ。それを踏まえたかどうかはわかりませんが、「野球はツーアウトから」という格言が生まれました。守備側から言うと、簡単にツーアウトを取ったのに、その直後にホームランを打たれた、とか、フォアボールでランナーを出して失点した、なんていうことになると、かなりの痛手を被ってしまいます。そうならないように、スリーアウト目もしっかり取ろうと気を引き締めるために、この格言が持ち出されます。一方、ツーアウトを取られてからでもあきらめずに攻撃する姿勢が大事、“つなぎの野球”で粘っていこう、という攻撃側にもこの格言。とても便利な言葉です。
ここで重要なのが、守備側と攻撃側、どっちにも通用するというところ。極論すれば、そこが野球の真髄と言えます。アウトもストライクも、3つ取って初めて相手を封じ込めたことになる、3つ取られるまでに何とかする。それが野球でしょう?
ただし、野球は単純な「3」の積み重ねにはなっていません。守備側から見て、3つ目までは許されることがあります。そのひとつが、ボールの数。スリーボールではなく、フォアボールで出塁です(もともとはナインボールで出塁だったとか)。それと、塁の数。三塁の次のベースが本塁ですから、3人を塁に出して満塁になっても、その後を抑えれば点を与えることはありません(いわゆる“三角ベース”は“別種目”です)。このことが、野球に深みを与えているとも思います。
まだまだ野球の「3」について話したいことはたくさんありますが、そろそろ競馬の話を。競馬にも多くの「3」が存在します。「三冠レース」に「3連複」「3連単」。今はあまり使われなくなりましたが、レースの勝負どころを意味する「三分三厘」という言葉もあります。
日本の競馬になくてはならないのが「上がり3F(600m)」のタイム。競馬発祥の国イギリスにこれを計る習慣はありません。誰が最初に「ここが肝心」と気が付いたんでしょうか。JRAでは「上がり4F(800m)」のタイムも掲示していますが、どちらかと言えば「3F」のほうが重要視されています。ふだんから「3」に囲まれて生活している日本人ならではの着眼だったりして…。
「3強」が揃うと競馬がおもしろくなる、というのも私の持論。飛び抜けた「1強」に対して次々にライバルが挑戦する、とか、「2強」が対峙する、という図式もいいですが、馬券的には「3強直接対決」くらいが一番おもしろいはずです。
昔は、「3強が出るレースの馬券は堅い」と思っていました。枠連、馬連しかなかった頃、「1強」はその馬が飛んだだけで大荒れ、「2強」だと、何かが2頭の間に割って入っただけで波乱になりました。でも、「3強」となると、3頭のうち2頭がコケて初めて荒れるわけです。言い換えれば、「3強」以外の馬は、「3強」のうちの2頭を負かさなければいけません。これはタイヘン。しかも、実力互角の「3強」が揃えば、連勝式の人気が3点に分散されますから、3頭のボックス馬券を買って当たればたいがい儲かります。なので、「3強」が揃ったレースは、ファンにとってはドカンと勝負できる、主催者にとっては馬券の売れるレースでもあったんです。
今は「3強」と言われるレースでも、その中に人気先行の馬がいることが多く、必ずしも堅い決着になるとは限りません。むしろ「3強を疑え」。今年の皐月賞の後に作った私の格言です。
ご存知のように、サラブレッドの父系をたどれば必ず3頭の種牡馬、「三大始祖」に行き着きます。これはあくまで結果論ではありますが、近代競馬は、そもそも「3」から始まっているわけです。「3」という数字、ただものではないですね。
さて、「三度目の正直」が通用しない私の予想。「仏の顔も三度」なら、とっくの昔に見放されているはずですが…。NHKマイルCの予想も「矢野吉彦の競馬日記」(※注1)で公開しています。では、また来週。
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