スマートフォン版へ

40年前のダービーは…

  • 2009年05月30日(土) 10時00分
 さぁ、いよいよ日本ダービー。アンライバルドの2冠制覇なるか、あるいはロジユニヴァース、リーチザクラウンが巻き返すか、それとも…。オークスもブエナビスタが勝って、相変わらずGIでの“車名馬馬券”が続いていますが、さぁダービーは…?

 競馬というのは、レースの前に「ああでもない、こうでもない」と話をしている時が一番楽しいですね。私の予想は、いつものとおり「矢野吉彦の競馬日記」で公開しています。

 さてさて、このところの関東地方は雨天続き。31日も雨の予報が出ており、今年の日本ダービーは不良馬場での開催になりそうです。ダービー当日は天候に恵まれることが多く、重または不良馬場での開催はメッタにありません。最近では、03年(ネオユニヴァース)、01年(ジャングルポケット)が重馬場。それ以前では1985年(シリウスシンボリ)も重。ところが、不良馬場でのダービーとなると、1969年(昭和44年)、ダイシンボルガードが勝ったレースまでさかのぼらなければなりません。今年のダービーが不良だったら、実に40年ぶりのことになるわけです。

 その1969年のダービーはどんなレースだったか。私はまだ8歳(+7か月)。父の影響でテレビの競馬中継を見始めた時期にあたります。前年、68年が「タケシバオー、アサカオー、マーチス」という3強の時代。この3頭はとにかくいろんなレースに出てきたので、「そういう強い馬がいるんだ」ということで名前を覚えてしまいました。しかし、どのレースをどのように勝ったか、なんて覚えていません。なにしろ7〜8歳の頃ですから。69年の記憶も同じようなもの。なので、記憶より記録をもとにして書かせていただきます。

 1969年の日本ダービーは、5月25日、28頭立てで行われました。優勝賞金は2000万円。1番人気は嶋田功騎手(現調教師)が乗るタカツバキでした。同馬は、同年2月の当時中京のダート1700mで行われていた重賞・きさらぎ賞の優勝馬。さらに、スプリングS・2着、皐月賞3着と好走を続けます。その2戦をともに制したワイルドモアがダービーを前に故障で戦線を離脱したため、押し出されるような形で1番人気になりました。

 ところが、28頭立ての真ん中少し内側、11番枠から発走した同馬は、スタート直後に両側の馬に挟まれて落馬してしまいます。これが、かの有名な「タカツバキ落馬事件」。ダービー史上初めて(その後もいまだになし)の本命馬の落馬でした。同馬は、中央競馬会が買い上げてから、購入を希望する馬主に抽せんで売却する「抽せん馬」(=ふつうに売買される馬より格安)だったため、「そんな馬にダービーを勝たせてなるものか」という“意図”が働いて落馬させられた、なんていう噂も流れたほど。なぜそんな話になったのかについては、牧太郎さんのコラムにヒントがあると思われますが、とにかくタイヘンなレースになっちゃったわけです。

▽参照(牧太郎氏ブログ)
http://www.maki-taro.net/index.cgi?d=20070222

 そんなレースを制したのが、大崎昭一騎手騎乗のダイシンボルガードです。同馬は、皐月賞14着、ダービートライアルのNHK杯も4着に敗れ、ダービーでは6番人気にとどまっていました。穴馬的存在だった同馬が直線で抜け出し、ゴールに向かおうとした瞬間、タカツバキ落馬に勝るとも劣らない大事件が起こります。興奮した同馬のきゅう務員サンが我を忘れてコースに飛び出してしまったんです。レース後、当然ながらそのきゅう務員サンは厳重な処分を受けたそうですが、今から思えば、競馬史に残る感動の名場面と言えるでしょう。なお、勝ち時計は2分35秒1、単勝は1390円の払い戻しでした。

 タカツバキ落馬のシーンも、ダイシンボルガードのきゅう務員サンがコースに飛び出して声援を送る中、同馬がゴールインするシーンも、後になって映像や写真で見たことがあります。空前絶後の大事件がスタート直後とゴール寸前に2つも起きてしまったこの年のダービー。おそらく、これから先も末永く語り継がれていくレースだと思います。

 JRAのホームページでは1955年以降のダービーの全着順を見ることができます。それによれば、1969年のほか、65年(キーストン)、59年(コマツヒカリ)、55年(オートキツ)のダービーも不良馬場でした。いずれも1番人気の馬が敗れています。今年はどうなるでしょう? ここまで書いたのに、不良馬場にならなかったら、という不安(?)もありますが。

 ちなみに、40年前の不良のダービーを制したダイシンボルガードは28頭立ての18番枠。最近、重馬場で行われた03年のダービーは皐月賞馬ネオユニヴァースが優勝しています。今年、ネオユニヴァース産駒の皐月賞馬アンライバルドが18番枠を引き当てました。これも何かの縁でしょうか? では、また来週!

地方、ばんえい、さらには海外にも精通する矢野吉彦のJRA・GI予想は「矢野吉彦の競馬日記」へ

毎週、3歳馬を格付け!丹下日出夫の「番付」がnetkeibaで復活!

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング