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愛すべき福島競馬場

  • 2009年06月20日(土) 03時00分
 今週からいよいよ夏競馬。私は例年通り、福島に4回、新潟に8回出張します。飲み過ぎと温泉の浸かり過ぎに注意して頑張る所存です。

 さて、福島競馬場と言えば、たいがい「小回りの」という枕詞をつけて紹介されるほどのコンパクトなコース。夏の福島競馬は、前に東京、後ろに新潟の開催があるものですから、余計にその小ささが際立ってしまいます。でも、JRA全10競馬場のコースをあらためて比較(最も内ラチ沿いを走るAコースで比較)してみると、ちょっと意外な事実を思い知らされました。

 まず、福島芝コースの一周距離は1600m。これは、中京芝コースと同じです。福島が一番短い、というのは正しいわけですが、“単独最短”ではなかったんですね。ちなみに、福島と中京の次に短いのは小倉で1615m。以下、新潟内回りの1623m(外回りは大きいのに、内回りはかなり小回り!)、函館の1627m、札幌の1640.9mと続きます。

 次に、芝コースの直線(4コーナー出口からゴールまでの)距離。福島は292mあって、JRA最短ではありません。では最短はどこか? 答えは函館で262mです。2番目が札幌の266.1mで、福島は3番目。小倉も短くて293mとなっています。福島と同じ一周1600mの中京は314m。一周距離が短くて直線が長いってことは、より平べったい楕円形をしているはず。福島より中京のほうが平べったいというのは、今まで気が付きませんでした(それって、私だけですか?)。

 続いてダートコースを比べてみましょう。福島の一周1444.6mはJRAで2番目に短い距離。こちらの最短は、たぶんもうお分かりでしょうが、1418mの中京です。昔、愛知の地方競馬が名古屋だけでなく中京でも開催されていたとき、中京は“大馬場”=大きくて広々したコース、と言われていました。名古屋競馬場が一周1100m、直線194m(なんと200m未満!)という“超小回りコース”なので、一周距離がJRAで最短の中京でも“大回り”に感じたわけです。

 その中京ダートコースの直線距離は312m。名古屋よりは100m以上長くなります。こういうところからも、愛知の地方競馬にとって中京は“大馬場”だったんでしょうね。一方、福島ダートコースの直線は295.7m。この数字を見て、「ムムッ」と思った方は、けっこう鋭い観察力の持ち主かもしれません。

「ムムッ」と思わなかった方のために、あらためて書きます。福島芝コースの直線距離は292mです。気が付きましたか? 楕円の内側にあるダートコースの直線距離のほうが、外側にある芝コースの直線距離より長いんです。こういう“逆転”の形態になっている競馬場は福島だけ(※厳密に言うと京都内回りも該当)。もし「JRA検定」なんていうものがあったら、これをもとにかなり難易度の高い問題が作れると思うんですけど(当コラムのご愛読者ならゼッタイ正解!)。

 この“逆転”があるため、福島ダートコースの直線距離は、最短の函館(260m)や2番目に短い札幌(264m)よりも30m以上長いだけでなく、一周距離では福島と40cmしか違わない小倉(1445m)の直線距離(291m)より5m近く長くなっています。

 いかがですか? 何から何まで、とにかく小さいと思っていた福島ですが、意外に大きかったり長かったりする部分があるんですね。そうは言っても、市街地の細い路地に沿ってスタンドがそびえていて、そのスタンドからコースまでの間がとても短い福島は、JRAでは最もコンパクトな競馬場です。それだけに、馬と人との距離が近いのが魅力。つまり、狭いのが取り柄の、愛すべき競馬場だと思います。

 夏の福島開催で私が楽しみにしているのは、スタンドの某売店で売っている冷やしトマトと冷やしキュウリの丸かじり。たぶん、近所で朝採りされたばかりのものを売ってるんでしょうね。みずみずしくて美味しいんです。飲み過ぎた朝の暑さしのぎには最適! 今年も毎週お世話になっちゃいそうです(飲み過ぎに注意、じゃなかったのか!)。

 みなさんもぜひ夏の福島へ。では、また来週!

地方、ばんえい、さらには海外にも精通する矢野吉彦のJRA・GI予想は「矢野吉彦の競馬日記」へ

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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