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セレクションセール1歳

  • 2009年07月22日(水) 11時59分
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 今年、北海道の7月は例年以上に雨が多く、先週のセレクトセール以降、ほぼ2日に1日の割合で降雨がある。21日と22日は日高軽種馬農協主催の「セレクションセール」が北海道市場にて開催されているが、20日(月)の1歳市場前日展示こそ好天に恵まれたものの、翌日のせり当日は時折ザーッと激しい雨に見舞われるあいにくの空模様となった。

 かと思うと、雨が上がり、雲間から日の差す時間帯もあったり、また再び雲が広がって雨が落ちてくるといった目まぐるしく天候の変化する1日。気温はやや低めで長袖の人が多い。

 せり開始は午前10時。前日、比較展示を実施したため、この日は個別に待機馬房まで購買者が出向き、目当ての馬をチェックするしかない。せりの前には、候補馬の馬体や歩様などを最終確認するために、数多くの購買者が厩舎を訪れ、熱心に見て回る姿が見られた。

水野豊香理事

 午前9時55分。せりが始まる前に、北海道市場で購買されたセイウンワンダー(新潟2歳S、朝日杯FS)とジョリーズシンジュ(シンガポールダービーなど重賞3勝)の表彰式が行われ、JRAの水野豊香理事、Dr.K C Tan氏がそれぞれ日高軽種馬農協の荒木正博組合長から表彰状と記念品が授与された。

Dr.K C Tan氏

 定刻にせりが始まった。上場馬は241頭。欠場が16頭である。せりはリザーブ制が採用されており、スタート価格からリザーブ価格まではどんどんせり上がる。販売申し込み者と購買者の一種の駆け引きがそこで生まれるわけだが、中には「時間の無駄」としか思えないようなケースも多く、ただ時間を浪費しただけに終わった上場馬もいた。

表彰式

 購買者が声をかけやすい価格からスタートし、リザーブ価格までは機械的にせり上がるものの、それを超えなければ落札にならない。従って、場外で聞いていても、落札か主取りかを判断しかねる馬が続出する。ただ、購買者は事前に販売申込者にリザーブ価格をいくらに設定しているのかを聞き出しているケースも多いと思われ、このせり上げ方法についての疑問を呈する購買者もいたのは事実だ。

 さて、いつもならば会場内にてせりの進行を見たり、場内を歩き回って様々な人々と会話したりするのが通常のスタイルだが、この日は落札馬全頭の立ち写真を撮る必要が生じたため、終始出口付近で過ごした。リザーブ制のために、実況を聞いているだけでは「売れたかどうか分からない」馬が多く、実際に上場馬を引く本人(従業員)に確認しても「さあ、分かりません」と返答されるケースも多々あって、混乱した。

 落札馬の立ち写真を撮るのは1週間前のセレクトセールと同じだが、この北海道市場では撮影場所が決まっておらず、馬が出て来たところで引き手に声をかけ、適当な場所まで移動しての撮影となる。しかし、上場馬は、パレードリンク~せり会場と緊張を強いられながら“仕事”をこなし、ようやく外に出て来たところとあって、かなりのハイテンションになっており、立ち写真の撮影は容易なことではない。

 落札価格とカメラマン数はここでもほぼ比例しており、高額馬が出ると10人ほどの団体が集まっての記念撮影風景となる。ただしセレクトセールほどの人数ではもちろんない。通常は2~3人程度である。午前10時過ぎより午後5時半くらいまで、ずっと撮り続けであった。

 せり結果は上場241頭(牡149頭、牝92頭)で落札が132頭(牡89頭、牝43頭)。売却率は54.77%。売り上げ総額は13億105万5000円(税込み)。

 前年との比較では、上場頭数が13頭の増加、落札頭数も25頭の増加。売却率も7.85ポイント上昇した。また総額も1億4343万円多かった。

 とはいえ、平均価格は牡1143万円、牝659万円。合わせて985万6477円と、前年比で96万2448円の減少。「予想していたよりも数は売れたが、価格は伸び悩んだ」といったところだろう。

 なお最高価格馬は239番「インディペンデンスの20」の3060万円(税抜き)。父ネオユニヴァース、母インディペンデンスの牡、黒鹿毛。

インディペンデンスの20

 浦河・丸幸小林牧場生産。落札は(有)フォーレスト。続いて136番「プラチナハートの2008」の3000万円。父ファンタスティックライト、母プラチナハートの牡、芦毛。新ひだか町三石の土田農場生産。落札は(有)大野商事。

プラチナハートの2008

 周知の通り、歌手の北島三郎氏の会社である。ご本人も会場に姿を見せ、落札馬とともにカメラに収まる一幕もあった。

北島三郎氏とプラチナハートの2008

 3番目は163番「マドモアゼルシッシの2008」の2500万円。父スペシャルウィーク、母マドモアゼルシッシの牡、黒鹿毛。新ひだか町静内の矢野牧場生産。落札はダンツの冠名で知られる山元哲二氏。

マドモアゼルシッシの2008

 牝馬の最高価格馬は229番「アナロイドの2008」(父ネオユニヴァース)の1020万円。売却率もさることながら価格的にはより牝馬が苦戦した市場であったと言える。牡馬の売却率は59.7%とほぼ6割だったが、牝馬は46.7%にとどまった。牡牝半々の割合で生まれるのが通例だが、これは生産者にとってはかなり辛い現実である。

牝馬最高価格・アナロイドの2008

 なお、今日22日(水)は当歳が登場する。せり開始は正午である。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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