今週から中山、阪神、新潟に戦いの舞台を移し、秋競馬がスタートしました。今後しばらくは、菊花賞、秋華賞、天皇賞・秋へ向けての前哨戦から目が離せません。
一方、来年のクラシックを目指す2歳馬たちのレースは、先週、札幌、小倉、新潟で2歳ステークスが行われ、夏競馬デビュー組の勝負は一段落しました。これまでにデビューした馬の中に、来年のクラシックを勝つ馬がいてもおかしくありませんが、“過去の傾向”からすると、そういう大物が新馬戦に出てくるのはむしろこれから。なので、新馬戦もしっかりチェックしておきましょう。
“過去の傾向”、と言っているだけでは信ぴょう性が疑われてしまいますので、改めて調べてみました。2000〜09年の10年間に春のクラシック=桜花賞、皐月賞、オークス、日本ダービーを勝った馬、計35頭(2冠馬が牡3頭、牝2頭いますので、この数になります)の新馬戦についてです。
6〜8月に行われた新馬戦でデビューした馬は、チアズグレイス(00年桜花賞=6月12日函館)、テイエムオーシャン(01年桜花賞=8月5日札幌)、タニノギムレット(02年日本ダービー=8月5日札幌)、メイショウサムソン(06年皐月賞&日本ダービー=7月31日小倉)、ローブデコルテ(07年オークス=7月23日函館)、キャプテントゥーレ(08年皐月賞=7月8日阪神)、トールポピー(08年オークス=7月8日阪神)、ロジユニヴァース(09年日本ダービー=7月6日阪神)の8頭。35頭中22.9%は、夏競馬デビュー組でした。
ここ4年連続であわせて5頭出ているということからすると、今年も、すでにデビューした馬(勝った馬とは限りません)の中に、来春のクラシックを勝つ馬がいるかもしれない、ってことです。
では、9月の新馬戦デビュー馬は? というと、これがなんと2頭しかいません。ジャングルポケット(01年日本ダービー=9月2日札幌)、レジネッタ(08年桜花賞=9月9日札幌)だけ。
つまり、今週開幕した中山、阪神競馬にあたる開催の新馬戦でデビューし、次の年の春のクラシックを勝った馬は、過去10年に1頭もいないわけです。
この時期の中山、阪神競馬で2歳馬をデビューさせるには、夏の暑い盛りに美浦や栗東でキッチリ調教して、ある程度仕上げておかなければならないはず。それって、考えただけでもタイヘンで、“大物候補”にそんな負担はかけられないでしょう。
9月の中山、阪神でデビューする馬に大した馬はいない、とまでは言い切れませんが、“過去の傾向”からすると、この時期の新馬戦に大物が出てくる可能性は低いと言えます。
これが次の開催、しかも京都競馬が始まると、様相一変。10〜11月の京都競馬の新馬戦でデビューし、翌年春のクラシックを勝った馬は、ネオユニヴァース(03年皐月賞&日本ダービー=11月9日)、キングカメハメハ(04年日本ダービー=11月16日)、ラインクラフト(05年桜花賞=10月16日)、ダイワスカーレット(07年桜花賞=11月19日)、ヴィクトリー(07年皐月賞=11月5日)、ウオッカ(07年日本ダービー=10月29日)、ディープスカイ(08年日本ダービー=10月8日)、ブエナビスタ(09年桜花賞&オークス=10月26日)、アンライバルド(09年皐月賞=10月26日)の9頭もいます。03年以降に限ると、23分の9で39.1%の高率。06年を除いて毎年出ています。これは大注目ですね。
さらに言えば、それらの馬が走った新馬戦の距離は、1400mが3頭(ネオユニヴァース、ラインクラフト、ディープスカイ)、1600m(内回り)が1頭(ウオッカ)、1800mが3頭(キングカメハメハ、アンライバルド、ブエナビスタ)、2000mが1頭(ヴィクトリー)となっています。もう言うまでもないことかもしれませんが、10〜11月に行われる京都芝1400〜2000mの新馬戦は必見です。
これに対し、同時期の東京競馬デビュー組からは、エアシャカール(00年皐月賞=10月31日)以来、春のクラシックホースが出ていません。関西馬の優勢を思い知らされる結果でもあります。
年末の阪神競馬の新馬戦も要注目。ここでデビューした馬では、アグネスタキオン(01年皐月賞=12月2日)、スティルインラブ(03年桜花賞&オークス=11月30日)、ダイワエルシエーロ(04年桜花賞=12月28日)、シーザリオ(05年桜花賞=12月25日)、ディープインパクト(05年皐月賞&日本ダービー=12月19日)の5頭が翌春のクラシックを制しています。
同時期の中山デビュー組からは、ダンスインザムード(04年桜花賞=12月20日)、ダイワメジャー(04年皐月賞=12月28日)、キストゥヘヴン(06年桜花賞=12月17日)の3頭を輩出。秋の東京デビュー組より健闘しているようです。
あとは、年明けデビュー組が、シルクプリマドンナ(00年オークス=1月30日京都)、アグネスフライト(00年日本ダービー=2月6日京都)、レディパステル(01年オークス=1月8日中山)、ノーリーズン(02年皐月賞=1月5日京都)、カワカミプリンセス(06年オークス=2月26日阪神)の5頭。それに、秋の福島デビュー組がスマイルトゥモロー(02年オークス=10月27日)、地方競馬出身がアローキャリー(02年桜花賞=5月9日道営札幌)の1頭ずつとなっています。
これら35頭のうち、新馬勝ちした馬は22頭。中でも、年末の阪神デビュー組5頭は、すべて新馬勝ちしています。
あとの13頭はデビュー勝ちできませんでした。08年7月8日の阪神芝1800m戦でトールポピー2着+キャプテントゥーレ8着、09年10月26日の京都1800m戦でアンライバルド1着+ブエナビスタ3着(2着はリーチザクラウン)という例があるように、同じ新馬戦でデビューした複数の馬が後にクラシックを勝つこともあります。新馬戦で負けた馬の中にも“大物候補”はいるはず。ファンの方は先刻ご承知でしょうが、そういうところにも目を向けておきたいですね。
取りあえず今月は、夏にデビューした馬を改めてチェックしておいて、来月の京都開催が始まったら、そこでの新馬戦に大注目という心構えでいいんじゃないでしょうか。ただし、“過去の傾向”に当てはまらない馬が出てくるかもしれません。それはそれでおもしろいと思いますよ。
いずれにせよ、秋が深まるにつれて、新馬戦の重要度が増してきます。秋競馬をタップリ楽しみましょう。では、また来週!
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