今年最後となる当歳・1歳馬の市場「オータムセール」が19日(月)より始まっている。
初日の当歳市場は、予想通りに惨憺たる成績に終わり、本気でこの市場を存続させるべきかどうか議論する時期に来ている。89頭上場中、78頭が主取りという結果をどう捉えたら良いのだろうか。落札はわずかに11頭。全体の傾向として、購買者のニーズが当歳市場から1歳市場にシフトしつつあるとはいえ、いくら何でもこれでは話にならない。いよいよ見直すべき段階に来たことを実感させられる厳しい結果であった。
名簿上では106頭(牡76頭、牝30頭)の上場申込があったものの、当日には17頭が欠場し、89頭(牡65頭、牝24頭)が上場。落札11頭の内訳は牡8頭、牝3頭である。売却率は12.35%。総額6478万5000円(税込)。平均価格こそ前年比で約22万円上回ったものの、それ以外は、全て前年を大きく下回る結果に終わった。
のみならず、過去5年間と比較しても、これほど低調だった例はなく、売り上げはついに、前年より半分以下のレベルまで下落してしまった。憂慮すべき事態である。
最高価格馬は86番、「グリーンヒルマックの09」(父ステイゴールド牝)で税抜き1260万円。サンライズマックスの全妹という良血で、竹中一彰氏が落札。生産は新冠・(有)ヒカル牧場。
さて、2日目の20日(火)より、1歳市場である。この日は、名簿上で225頭(牡99頭、牝126頭)が上場予定のところ、194頭(牡85頭、牝109頭)の上場。落札は89頭(牡43頭、牝46頭)と、45.87%という高い売却率となった。
残り3日間の成績を待たなければ集計できないのだが、昨年の初日と比較すると、上場頭数で+24頭、落札頭数で+34頭。売却率では約15ポイントも高く、売り上げも1億円ほど多い2億7205万5000円に達した。
数字だけ見るならば、大健闘と言える結果だが、これにはいささか「からくり」があって、実質的にこの日の市場を下支えしたのは「ダーレー・ジャパン」からの上場馬群であった。
ダーレーの1歳馬は、名簿上では17頭の上場申し込みながら、2頭欠場してこの日15頭がせりにかけられ、いずれもお台付け価格50万円からのスタート。当然のことながら、どの上場馬も活発な競り合いとなり、ついに1頭残らず完売となった。
手元にある名簿からダーレー上場馬15頭の落札金額を合計してみると、7192万5000円(税込)に達する。「いくらでもいいから売りさばいてしまいたい」という意図があったのだろうとは思うが、日高の生産者にとっては何とも手ごわいライバルの出現となった。手ごわいどころか、損得抜きのお台付け価格のために、ダーレー・スタリオンの主力とも言うべきアルカセットやファンタスティックライトの産駒が、種付け料を大きく下回る150万円〜200万円(税抜き)で次々に落札されてしまった。そうなると、日高の生産者が上場する同じアルカセットやファンタスティックライト産駒にとっては、ひじょうにやりにくいセリとなる。ダーレー価格と比較すると、そもそもお台付け価格の時点で「割高感」が漂い、結果的に日高の馬は主取りとなるケースが続出した。
それぞれの立場の違いもあって同列には論じられないものの、ダーレーにとっては「見切り品処分」でも、日高の生産者にとっては「主力商品販売」である。このバーゲンセールは、いささか影響が大きかったものと思われる。
なお、最高価格馬は269番「ドバイソプラノ2008」(父ファンタスティックライト、牡鹿毛)の1350万円(税抜き)。販売申込者は(株)ダーレー・ジャパンで、落札は(株)BOBOS。この馬に限らず、ダーレーからの上場馬はブラックタイプの充実している素材が多く、どう考えても「お台付け50万円」では安すぎた。因みにこの馬も50万円スタートである。
こうした思い切った販売方法が、来年の種牡馬ビジネスに影響しなければ良いのだが…。