地方競馬の祭典・JBCの開催が近づいてきました。今年の舞台は名古屋競馬場。一周1100m、直線200m足らず(日本一短いそうです)という“究極の小回りコース”なので、優勝争いに加わるためには、きついカーブをこなす器用さが求められそうです。
前回、05年秋に名古屋で開催されたJBCでは、スプリント、クラシックともに、同年春のかきつばた記念で上位に来た馬が好走しました。小回りの名古屋競馬場ならでは、直近の同コースでの実績が反映されたわけです。
ところが今年は、5月のかきつばた記念を圧勝したスマートファルコン、2着のトーセンブライトが不在。勝ち馬から10馬身、2着馬から5馬身離された3着馬のリミットレスビッドがスプリントに、3着馬からさらに3馬身差の4着だったマルヨフェニックスがクラシックに出てきますが、この着順を素直に信用していいのかどうかは疑問です。
むしろそれだったら、3月の名古屋大賞典でスマートファルコンの半馬身差2着があるワンダースピード(クラシックに出走予定)がおもしろそう。スプリントでは、名古屋ほどではないにしろ、同じように小回りの園田で好走実績のあるスーニに魅力を感じています。
さて、かくいう私、今回のJBCの実況を仰せつかりました。JBCスプリント&クラシックだけではありません。当日の全レースの場内実況で、その音声はテレビ中継「まるごと名古屋!〜09JBC地方競馬の祭典〜」(グリーンチャンネル14:30〜16:30、スカイパーフェクTV!282ch「EXスポーツ」10:00〜17:00)にも流れることになっています。
これは、ハッキリ言って身に余る光栄、身の引き締まる思いのする大役です。この“告白”をお読みのみなさんの中には「オマエで大丈夫か?」と心配されている方もいらっしゃるでしょうね。自分でもそう思ってますから。でも、せっかくご指名をいただいたからには、ふだん名古屋競馬の実況を担当されているアナウンサーや、これまでのJBCを実況されてきた地方競馬場内実況アナウンサーの方々のためにも、とにかく頑張らなくちゃ。みなさんのご期待に添えるかどうかはわかりませんが、張り切って実況させていただく所存です。
実は先日、名古屋に下見に行って来ました。実況席は1コーナー寄りのスタンド4階、ゴール板をかなり過ぎたところにあります。まずは、内外の馬が離れて接戦になったときに着順を判別しにくいことがわかりました。きわどい勝負になったら、心して喋らないといけません。
そして、実況席の前面はガラス張りです。かつて、全国実況アナウンサーフェスティバルを開催した競馬場の中には、そういうところがいくつかありました。「ウイニング競馬」の実況席は“吹きさらし”なので気にすることはないんですが、ガラス張りだと、臨場感を伝えられるかどうかが課題になります。JBCの当日ともなれば、大勢のお客さんの熱気がガラス越しでも伝わってくるでしょうし、GIレースならではの高揚感があるので、迫力不足の実況にはならないとは思いますが、これもちょっと気になるポイントです。
さらに、もっと厄介な問題がありました。西日です。私が下見に行った日は、秋の日差しが一杯に降り注ぎ、汗ばむほどの上天気。午後4時頃には陽が西に傾いて、3〜4コーナーは完全に逆光になりました。黒と青と緑や白と黄色、橙と桃を判別するのは至難の業。「ウイニング競馬」で実況している競馬場に、こういうところはありません。なにしろ勝負どころですから、これは悩みのタネです。
11月3日なら、肝心のスプリントとクラシックが行われるちょうどその頃に、西日が邪魔になりそうです。当日が好天になってくれないと客足や売り上げに響いてしまいますので、私としても晴れてくれることを望んではいるのですが、そうなると逆に、実況はタイヘンだろうなと覚悟しています。
「そんなことばっかり書いて、失敗したときの言い訳にしたいんだろう」ですって? いやいや、とにかく今回はメッタにない大役を仰せつかったわけで、コースのチェックは入念にしておかないといけませんからね。小回りでフルゲート12頭のコースだからと言って、侮ることなかれ、です。
なにはともあれ、JBCスプリント&クラシックはもちろん、未来優駿シリーズ第6戦のゴールドウィング賞も、そしてその他のレースも、心に残る好レースになることを期待しましょう。私としては、今年のJBCの盛り上がりに少しでも貢献できれば、と思っています。みなさんも万障お繰り合わせの上、ぜひご参戦ください。では、また来週!
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