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よりスマートになってほしい岩手競馬

  • 2009年11月21日(土) 00時10分
 先週のエリザベス女王杯。逃げたクィーンスプマンテと2番手のテイエムプリキュアがそのまま1、2着に残って大波乱になりました。メジロパーマーとダイタクヘリオスが大逃げを打ち、メジロパーマーが残って優勝、大荒れとなった1992年の有馬記念を思い出した方も多いのでは?

 でも、あの時のダイタクヘリオスは12着に惨敗しています。今回は大逃げの2頭がともに残っちゃいましたから、17年前をしのぐ希有な逃走劇だったわけです。

 さて、エリザベス女王杯の翌日(16日)、私は“騎手の女王”を決める戦いを見に行きました。そう、レディースジョッキーズシリーズ(LJS)2009の開幕戦、水沢ラウンドです。

 この日は、第1戦「女性騎手の祭典開幕賞」と第2戦「オッズパーク特別」の2レースが行われ、第1戦は名古屋の山本茜騎手、第2戦はJRAの西原玲奈騎手がそれぞれ優勝しました。先行馬に有利な不良馬場だったこともあって、両レースとも逃げた馬がそのまま優勝。第1戦は3、4、1番人気の順で3連単2万円台、第2戦は9、6、7番人気の順で同94万円台の高配当が飛び出しました。“騎手の女王”決定戦も、エリザベス女王杯同様、逃げ馬が波乱を巻き起こしました。

 当日、水沢競馬場では、地元の皆川麻由美騎手が他の参加メンバーを紹介したり、地元民放局の女性アナウンサーがレース実況を担当したりと、LJSならではの企画で雰囲気を盛り上げていました。騎手紹介のセレモニーやレース後の表彰式で、ファンが写真を撮るための時間を設けていたのもよかったと思います。

 ただ、ちょっと気になることがありました。この日の岩手競馬(水沢本場や各場外)では、ばんえい帯広競馬の第10レース「とかち北あかり賞」を場外発売していました。水沢の最終レースが15時55分、帯広の第10レースは16時15分発走というプログラム。水沢のレースを見た後、帯広のレースをジックリ検討してから馬券を買える、理想的な時間割でした。当然ながら私も馬券を購入。しばらくすると発売締切のベルが鳴り、さぁ、場内テレビでレース観戦、となりました。

 ところが、なんとその時間に、LJSの表彰式がスタート。場内テレビはその映像に切り替わり、ばんえい競馬第10レースは、表彰式が一段落したところで、ようやく録画放映されたんです。この段取り、どうにかならなかったんでしょうか?

 ひょっとしたら、「LJSの表彰式が最終レース終了後なので、ほとんどの人がそれを見ないで帰ってしまいそう。だったら、他場発売しているばんえいのレースを録画放映にして、場内に残ってくれる人を少しでも多くしよう」と目論んだのかもしれません。

 あるいは、参加メンバーの中に、帰りの飛行機や新幹線の都合で時間に制約があるジョッキーがいて、なるべく早く表彰式を終わらせなければならなかったのかも。でも、それだったら、あらかじめ「ばんえいのレースは表彰式終了後に録画放映します」というアナウンスを流してほしかったですね。ばんえいの発走時刻になったところで、いきなり「さぁ表彰式です」っていうのは、ちょっと無造作すぎると思うんですけど。

 まぁ、これは、ばんえいファンの私だから気になっちゃったんでしょう。とはいえ、他地区のレースを売っていたとしても、同じことが起きたはず。LJSの開催日だから自場最優先、というのではなく、そういう日だからこそ、“スマート”な段取りにしてほしいものです。

 どうやら岩手競馬の自場最優先という姿勢は、この日に限ったものではないようです。名古屋でJBCが行われた今月3日。地方競馬は、門別、水沢、大井、園田、荒尾でも開催されました。このうち、水沢以外の4競馬場では、JBCスプリント&クラシックと、その前のゴールドウィング賞が行われている間、名古屋競馬の場外発売とレースのナマ放送に“専念”したんです。

 門別、大井、荒尾は、約2時間から2時間半ほど、自場のレース間隔を空けるという形。園田は、当日の自場のレースを13時50分発走の第7レースまでとし、あとはJBCの場外発売だけを行いました。休日の稼ぎ時に自場のレース数を減らすというのは、大英断だったはずです。

 ところが、水沢は、JBCクラシックに合わせてその前後のレース間隔を5分広げただけ。あとはほぼ通常通りに自場のレースを実施しました。年に一度の地方競馬のお祭り、JBCデーなんだから特別、という意識はほとんどなし。大英断を下した園田とは正反対の方向を向いていたようです。

 自場の売り上げがJBCによって減ってしまうのは痛い、という苦しい台所事情はわかります。でも、同じように苦しいはずの荒尾だって、頑張ってレース間隔を空けたんですから、岩手にできないことはないでしょう。当日の各競馬場の時間割を見比べると、水沢だけが“我が道を行ってしまった”ように見えます。

 地方競馬の主催者にはそれぞれ特有の事情があり、なかなか1つにまとめられない、という現実は理解しているつもりです。他場はライバル、と思っている主催者は岩手だけではないはず。自場最優先でやっていきたいのは全主催者の本音でしょう。

 しかし、それぞれが本音を押し出したままでは、今の厳しい状況は打開できません。他場との連携はゼッタイ必要です。それをより“スマート”なものにしないと、ファンにソッポを向かれてしまうと思います。地方競馬の主催者のみなさん、どうかここは本音の部分をグッと抑えて、全主催者が一丸となれる方向へ舵を切っていただくよう、お願いいたします!

 さてさて、エリザベス女王杯でもブエナビスタが3着に敗れて、秋のGI戦1番人気馬は5連敗! この流れはどこまで続くんでしょうか。マイルCSも1番人気馬を馬単、3連単の頭にするのは危険かもしれませんよ! では、また来週。

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テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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