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ばんえい競馬の“馬柱”

  • 2009年11月28日(土) 00時05分
 11月19日の開催で今年度の全日程を終了したホッカイドウ競馬。その馬券売り上げが、前年を上回ったそうです(詳しくは、田中哲実さんのコラム『生産地だより』をお読み下さい)。旭川からの撤退、札幌開催の縮小、門別開催のオールナイター化など、大胆な取り組みが功を奏した結果でしょう。不況の真っただ中というのに、これは立派な成績です。

 一方、同じ北海道にあって、ばんえい競馬は苦戦を続けています。廃止の危機から生き残って3年目。帯広市とオッズパークがタッグを組んだ効果も徐々に薄れてきてしまったようで、またもや廃止の危機といってもいい状況に陥ってしまいました。

 “地元密着”と言っても、帯広周辺や北海道内だけで馬券の売り上げをアップさせるには限界があります。ホッカイドウ競馬のように、インターネット・電話投票や道外での場外発売の拡大といった“販促活動”の強化は喫緊の課題です。

 ところが、ばんえい競馬の場合、レース予想に欠かすことのできない競馬新聞の成績表、いわゆる“馬柱”が、ふつうの競馬とまるで違うスタイルになっているため、スポーツ紙の競馬欄や他場の競馬新聞に簡単に組み込めないという、とても厄介な問題を抱えています。

 例えば、馬場状態の表記。ふつうの競馬なら、「良、稍重、重、不良」と漢字で表したり、開催日の数字を「良=○囲み、稍重=□囲み、重=○白抜き、不良=□白抜き」といったスタイルで表せばいいのですが、ばんえい競馬だと水分量のパーセント表示にしなければなりません。

 また、道中のタイムも、ふつうの競馬は前半3Fと後半3Fの所要タイム(100分の1秒まで)を表示していますが、ばんえい競馬では、スタートから第2障害まで、第2障害通過、第2障害からゴールまで、の3つのタイム(秒単位)を表示する必要があります。

 もちろん、負担重量も同様。56kgか53kgとか、ふつうの競馬なら2ケタ、ときに57.5kgなんていうのもあるので、2ケタ+小数点1位の表示で済みます。しかし、ばんえい競馬は500kg前後から1000kgまで、そのまま表示すると3ケタから4ケタになってしまいます(600kgは60、755kgは75.5として、どこかに『ばんえい重量は10?単位』という説明があれば、ふつうの競馬の表示法を適用できますが)。また、馬体重も1000kgを超える馬がザラにいるので、これも4ケタを表示できるようにしなければなりません。

 というように、ばんえい競馬の“馬柱”は、ふつうの競馬の“馬柱”の数字を入れ替えれば済むものではないんです。

 するとどうなるか。最近、ばんえい競馬の馬券も、各地の地方競馬場で場外発売されるようになってきました。とはいえ、ばんえい競馬の成績表を、ふつうの競馬と同じように地元の競馬新聞に載せるわけにはいかず、ばんえい専門紙「競馬ブック」の特別版を別に用意して、これを配布するという方法を取らざるを得ません。つまり、“チラシ”を配るのと大して変わらないやり方になってしまうわけです。

 これで馬券売り上げを伸ばせ、というのは、どう見ても無理ですね。先日、レディースジョッキーズシリーズ観戦のために水沢競馬場に行ったときも、当日のばんえい競馬メーンレースが場外発売されていました。「ばんえい競馬特別版」は、水沢競馬場のマークカード記入台に置いてあったんですが、それを自ら手に取って、ばんえいのレース検討をしている人はあまり見かけませんでした。もし、岩手競馬の専門紙にばんえい競馬の成績欄が載っていれば、もう少し興味を持ってくれる人がいるかもしれないのに、と、あらためて考えさせられてしまいました。

 ばんえい競馬の“馬柱”問題。なんとかならないものですかねぇ。そうそう、最近、地方競馬全国協会の公式サイトがリニューアルされました。同サイトでは、全国の地方競馬全レースの出馬表が閲覧できます。そのばんえい競馬の出馬表に、先に書いた道中3つの通過タイムを載せてみたらどうでしょう?

 実は、これを計測しているのは、専門紙「競馬ブック」だけ。主催者は計測していないので、公式のものがないんです。だから、地方競馬全国協会の公式サイトには載せられないんだろうと思います。でも、そこをぜひなんとか…。当然、「競馬ブック」サンのご協力が必要でしょうが。

 ばんえい競馬の馬券が、JRAの競馬場でも、とまではいかなくても、各地の地方競馬場で手軽に買えるようになれば、まだまだ売り上げは増えるはずです。ただ、それには、レース検討に必要な資料をきちんと提供するシステムを整備しておかなければなりません。誰が音頭を取ってそれをやるのか。それは主催者でしょう。帯広市とオッズパークには、もっと頑張ってほしいと思います。

 ところで、ばんえい競馬のシーズンは、これからいよいよ佳境を迎えます。29日のメーンは、古馬オープンの一線級が顔を揃える伝統の重賞・北見記念。どうかみなさん、私の予想も載っている「ばんえい競馬情報局」でシッカリ情報をチェックして、馬券を買ってお楽しみ下さい。なにとぞよろしくお願いします。では、また来週!

▽参照(ばんえい競馬情報局)
http://blog.oddspark.com/baneiinfo/

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※上記はプレミアサービスのコンテンツです。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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