新春2日、浦河神社を会場に行われる「浦河神社騎馬参拝」は、101段ある石段を騎馬で駆け上がるのが見どころの伝統行事である。
今年は100周年という節目の年にあたり、記念の絵馬を奉納したり、揃いの法被を作ったりと、大々的に祝った。歴史の浅い北海道にあって、100周年を迎える伝統行事はあまり例のないことで、毎年、これを楽しみに浦河神社を訪れる参拝客も大勢いる。
ところが、この伝統行事に「待った」がかかっている。ことの発端は10月下旬に遡る。騎馬参拝実行委員会事務局のK氏が浦河神社を訪れた際、神主のS氏から「正月三が日は外してもらえないだろうか」との打診があったというのだ。
神社側の言い分はこうである。「三が日は、神社を訪れる初詣客が多く、新春2日の午前10時~11時の従来騎馬参拝が行われていた時間帯はもっとも混み合う。できれば4日以降のいずれかの日に移行していただけないか」というのである。
そして、「そもそも騎馬参拝は、当神社の行事ではなく、ただ場所を提供していたに過ぎない」ことも同時に明言されたという。
騎馬参拝実行委員会は、この行事に関わる多くの団体の有志により結成されており、100周年も無事に終えたことなどから、浦河神社側の受け入れ態勢がよもやそこまで冷えていることなどまったくの想定外であった。はっきりと言葉にして表現されたものかどうか詳らかではないが、「歓迎されていない」という雰囲気だけは十分に理解できたという。
そこで、急きょ、実行委員会は臨時の会議を開き、対応を協議することになった。神社側が「三が日を外してくれ」と言う以上、それを押し切って無理矢理強行することはできない。だとするならば、三が日を外して実施する方向で考えられぬか? と新たな可能性を探る意見も飛び出したという。
しかし、それにはかなり問題の多いことも明らかになった。騎馬参拝は、一般道を騎馬の団体が進んでくる。新春2日だからこそ比較的交通量も少なく、これまでそれほど大きな混乱を来すことなく10kmの道のりを進んで浦河神社までたどり着いてきた。それが仮に4日以降の実施となると、交通量が激増して危険度もまた急上昇する。
加えて、騎馬参拝に参加する人員確保にも問題が生じる。毎年人馬ともに協力を仰いでいるJRAを始め一般参加の人々などにも都合のつかない人が続出するであろう。それにポニーで参加する浦河ポニー乗馬スポーツ少年団が毎年待機場所、馬積み下ろし場として拝借しているスペースも、借り上げできなくなる可能性が高い。
だいいち交通規制のためにお世話になっている地元浦河警察署の協力も得られなくなることが予想され、全ての面にわたり、三が日を外した実施は不可能である、と実行委員会サイドでは結論が出たらしい。
そうなると、再び、神社側との折衝にかかってくるのだが、氏子総代を交えた協議の行方は未だ混沌としており、結論が出ていない。ただし、実行委員会としては、もちろん歓迎されていない以上ゴリ押しするつもりはなく、来年は騎馬集団の出発点であった「西舎神社」での参拝のみで終了することになってもやむを得ない、という考えのようだ。日時を変更しての浦河神社参拝はあまりにも問題山積であり、現実的ではない、という結論に落ち着いたと伝えられる。
一方、浦河町としては、今年100周年を迎えた騎馬参拝を、町で行われている伝統行事として内外に向け大々的に紹介している関係上、ここで止めることになるのは惜しい、と考えている。今週中に神社側との最終協議の場が設定されており、未だ結論が出ていないのだが、見通しとしては甚だ厳しいと言わざるを得ない。いかなる結論が出るものか、まだ予断を許さないが、いずれにしても、従来のように、1月2日午前10時~11時あたりの浦河神社石段駆け上がりは、もう無理なのではあるまいか。
言うまでもなく、騎馬参拝最大の見どころは、浦河神社の101段ある石段を騎馬で駆け上がる場面である。それがあるからこそ、当日は多くの見学者が訪れ、寒い中をじっと待って伝統行事を見守っていたはずなのだが…。
浦河神社、実行委員会、浦河町それぞれの考え方に温度差があり、この問題がいかなる決着を見るものかひじょうに気になるところだが、今週中には結論が出る。次回もこの問題にもう一度触れたい。