淀で伏兵・ヒルノダムールが天皇賞・春を制した5月1日。その裏でほぼ連続して、ひっそりとふたつのレースが行われた。福山ダービーと荒尾ダービーだ。
一般にレベルの低い地方競馬場といえば、ハルウララの例もあり高知競馬場が思い起こされるだろう。だが実際のところ売上規模はともかくとして、人馬のレベルは決してそこまで低いわけではない。それよりも上であがった2場所こそ、不名誉ながら日本競馬最底辺であると思って間違いない。そのダービーにしても、荒尾では佐賀との交流競走となって以降(当初は九州皐月賞という副称がつけられていた)10年間地元馬の勝ちはなし。福山もわりと最近までアラブによる競走だったことを割り引いたって、今年の出走馬が全て牝馬だったという驚愕の事実をみれば、そのレベルは容易に想像がつく。ダービー・ウィークに入れないのは、相応の理由があるのである。
そんな牝馬だらけの福山ダービーを制したのは、ブラックホーク産駒のムツミマックス 。年末年始にヤングチャンピオン・若駒賞と重勝を連勝したおかげで、ダービーまでは古馬のB級に混じって戦ってきた。ダービー後も賞金16万円のB級戦を走って2着している。
荒尾ダービーを3秒以上の大差をつけて大楽勝したのは佐賀競馬所属のリリーだが、荒尾所属馬では4着のアミフジエンブレムが最先着。父ロドリゴデトリアーノだから九州産馬かと思いきや、なんと珍しい茨城生産馬。新潟でデビューしてそれほど悪くない戦績(少なくともタイムオーバーにはなっていない。それだけで荒尾では立派なモノだ)を残した後、船橋を経て転厩してきている。今後は肥後はなしょうぶ賞3着を挟んで、唯一の荒尾代表として栄城賞に参戦する予定だ。
両馬ともこの時期からこの2場に所属しているようでは先はしれているし、実力でいえば中央の未勝利戦を突破できるかさえおおいに怪しい。それでも、その馬なりの身の丈にあった馬生を精一杯生き抜いてくれたなら、と思えてならない。なにより、ピッカピカの中央競馬のダービー馬よりは、こちらの方が自分などには親近感が沸いてくる。「社台の運動会」なんてのは道理の分からぬ口の悪いファンの戯れ言だとしても、ああいったエリート馬ばかりというのがイマイチしっくりこないのも事実なのだから。
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