混戦模様と言われてきた牡馬クラシック戦線も、最後の2週ではっきりと勢力図が見えてきたと言えそうだ。
ナンバー1は朝日杯FSを勝った
ローズキングダム。近年は同レースからクラシックをにぎわす馬が出ていないが、この馬は別格。大人びたレースぶりといい、「薔薇一族」特有の瞬発力と勝負根性といい、近年の2歳チャンプとしては抜けた存在と言えるのではないか。
乗り替わりの多い昨今、「僕が馬に教えられてます」(小牧)、「何も言うことはない。すべて小牧に任せている」(橋口調教師)という人馬の強い信頼関係もクラシックを戦い抜く上では大きな武器となるはず。
更にはこの時期に東京、中山と春の2冠が行われる舞台を経験しているのも強み。ローテーションなどで無理をする必要もなく、大一番に絞って調整できるのも他馬にはないアドバンテージと言えるだろう。
そして、このローズと“双璧”と言えるのが
ヴィクトワールピサ。新馬戦ではローズの後塵を拝したが、まさに敗れて強し。そして、そのあとのラジオNIKKEI杯2歳Sまでの3連勝の内容がこの馬の底知れぬ強さを証明していると言えるだろう。
前走は初の多頭数の競馬となったが、後方でじっくりと待機。先行勢の動きを見ながら追い出しのタイミングを計れるあたり、まさに「鞍上の意のまま」という言葉がピタリと当てはまる。着差こそわずかだったが、これも武豊が意識してのこと。
「いつでも動けるポジションというのであの位置から。差はそれほどでもなかったが、強い内容でしょう。来春が楽しみ」と早くも気持ちはクラシックに向いているようだ。近年は新馬から手綱を取り続ける“パートナー”が安定しなかった同騎手。この馬にかける想いはかなり強いものがあると言えそうだ。
この“2強”の後は大混戦。京都2歳S上位組が続くラジオNIKKEI杯で惨敗するなど、不安定極まりない。そこで注目したいのが暮れの未勝利を勝ち上がった
レーヴドリアン。
前走は1000メートル通過が64.1秒という超スロー。これを後方の8番手から進んだが、「不思議と負ける気がしなかったんですよ」と藤岡佑。そして、その言葉通りにゴール直前で逃げたサクラルーセントをきっちり捕えてみせた。これには「実戦にいっていいな。これならどこに出してもいい」と松田博調教師もかなりの高評価。
次走は福寿草特別を予定しているが、除外などがあれば重賞挑戦も視野に入れているとのこと。それだけの器の馬、と言えるのではないか。
関東馬のワンツーという決着だった阪神JF。それだけに今年の関西牝馬は質量ともに例年よりやや落ちるか。それだけに未デビューの馬たちに期待がかかりそう。その筆頭に推したいのがブエナビスタの半妹
アーデルハイト。
現在はノーザンFで調整中だが「520~530kgあったのが、500kgくらいまで絞れてきた。まだ弱いところはあるが、以前に比べればだいぶまし。入厩するところまでいけば勝手に仕上がる血統。今年の牝馬ではこれというのがいないし、(この馬が)ポンポンと言ってもおかしくない」と松田博調教師。気になる入厩もそう遠い話でもないようで、勇気を持って指名したPOゲーマーが報われる日も近いのでは。
また、阪神の最終日に勝ち上がった
アドマイヤテンバも血統通りの走りを見せた。気性面では母親ほど難しいところがないようで、無事にいけばこのあたりが来春の主役を張るのでは。ともあれ、牝馬路線はまだまだ予断を許さない情勢と言えよう。

筆者:吉田竜作
「日本一のPOG記者」との異名を持つ大阪スポーツ記者。
【編集部からお知らせ】 当コラムは2010年から隔週更新となります。須田鷹雄さんによる注目馬のこぼれ話、POGのポイント、来期に向けた分析などをお届けします。引き続きご期待ください!
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