6月19日「帝王賞」。今年は久々に地方側圧倒的優位の顔ぶれとなった。ファストフレンドの引退、レギュラーメンバーの戦線離脱。アグネスデジタルの野望はすでに別次元へと飛び、ノボトゥルー、ハギノハイグレイドも微妙に路線を変更した。JRA側はまだそれに代わるダート中~長距離馬の新星が育っていない。出走馬5頭中、リージェントブラフを除き4頭が大井初コース。過去のデータから推してもこの状況はかなり厳しい。
帝王賞(サラ3歳以上・定量・統一G1・2000m)
◎トーシンブリザード 石崎隆
○トーホウエンペラー 菅原勲
▲インテリパワー 張田
△リージェントブラフ 吉田豊
△ミラクルオペラ 幸
△マキバスナイパー 左海
△オンユアマーク 鷹見
カネツフルーヴ 松永幹
マンボツイスト 蛯名
ワンモアマイライン 角田
トーシンブリザード、トーホウエンペラーは、昨暮れ東京大賞典、明けてフェブラリーS、2度対戦し1勝1敗。ただここ一番の爆発力、精神面の強さなど、ブリザード大きくリードとみる。南関の身びいきだけでもない。エンペラーの勝った大賞典はブリザード骨折明け。およそ半年ぶりながら積極的にレースを運び、直線あと1ハロン、いったん先頭に立つ3着だった。何より驚かされたのは続く東京フェブラリーS・2着。初コース、未体験の高速馬場に手を焼き4コーナーではギブアップの手応え。それでいて最後はアグネスデジタルに猛然と迫っている。その後ダイオライト記念で一頓挫あったが、おそらくこれは力走の目に見えない反動だろう。前走かしわ記念を鮮やかに差し切って再びいいリズムを引き戻した。記者の胸中で、ブリザードはやはり十年に一度だけ現われるアブクマポーロ級のスーパーホース。ここであっさり頂点に昇れば、未来への視野もさらに明確にみえてくる。
対してトーホウエンペラーはフェブラリーS・5着後、名古屋大賞典を勝ち文句なしのムードで臨む。得意の右回りが何より好材料。逆転があればブリザードより一歩早めに抜け出したときだろう。いい脚を長く使う、そのパワーを生かしたい。
JRA馬では、コース適性でリージェントブラフ、底力でミラクルオペラだが、前者は不器用さ、後者は昨秋JCダート以来のステップに疑問が残る。それなら7歳にして再び旬を迎えたインテリパワー上位だろう。この春、金盃、ダイオライト記念を勝ち、前走かしわ記念はブリザードの2着。際立ったスピード、切れ味は浮かばないものの、代わりに実戦向きの集中力、競馬センスが素晴らしい。一種不思議な強さを持つ馬でもある。昨年の覇者マキバスナイパーも久々ながらほぼ万全に仕上がってノーマークにはできないか。ロジータの仔カネツフルーヴの挑戦も興味だが、一線級相手となるとまだ精神面の甘さが気になる。大穴は混戦向きのパワーを買ってオンユアマーク。
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12日「船橋記念」はベルモントアクターの圧勝だった。道中3番手を持ったまま進み、直線外から豪快に抜け出す横綱相撲。1800m1分51秒8、リガメエントキセキ(かしわ記念5着)を3馬身ちぎり、しかも脚いろに余裕があったから、軽量52キロにせよ中身が濃い。期待以上、イメージ以上に馬が強かったということ。デビューから無傷の16連勝は南関東レコード。が、その数字より何より、重賞初挑戦をいともたやすくクリアした事実が重い。
船橋記念(サラ3歳以上・ハンデ・南関東G3・1800m重)
◎(1)ベルモントアクター (52・石崎隆) 1分51秒8
▲(2)リガメエントキセキ (57・佐藤隆) 3
○(3)ミリオンヒット (56・的場文) 11/2
△(4)ハセノガルチ (56・白田) 3/4
(5)エリモソルジャー (56・甲斐) 1
単160円 馬複250円 馬単380円
3連複760円 3連単1760円
ベルモントアクターは3歳1月デビュー、3年半かけて重賞のゲートへ到達したとは前回書いた。陣営の辛抱と努力、馬を見る目の確かさには改めて敬服する。例によって「しばらく様子をみて次走は未定」だが、今のところ8月21日大井「アフター5スター賞」が有力。むろんその先には統一Gの夢がある。出川克己調教師=楠厩務員=石崎隆之騎手のラインは、南関東最強トリオというらしい。かつてアブクマポーロを育て、一昨年の東京ダービー馬ヒノデラスタも彼らが仕上げた。もっともアクターがそこまで行き着けば、さて石崎騎手はどれに乗るか…。本人はまた嬉しい悩みを抱えることになるのだが。