4月28日、今年度の道営ホッカイドウ競馬が開幕した。今年度はいよいよ赤字体質からの脱却を実現しなければ存廃問題が再び浮上しかねない中、昨年までこの時期だけ借用していた札幌競馬場での開催を見送り、全日程を門別一場でのナイター開催に踏み切った。
この日、北海道は朝から怪しい雲行きで、競馬場が開門する午後2時には風雨も強くなり、あいにくのコンディション。それでも開幕を待ちかねたファンが次々に競馬場を訪れ、半年振りとなるナイター競馬を楽しんだ。
初日の目玉は第7レースに組まれた「スーパーフレッシュチャレンジ競走」。全国で最も早い2歳新馬戦で賞金も通常の認定競走(170万円)よりも高い300万円。開幕日に合わせて用意され、11頭の2歳馬が出走した。
このレースを制したのは、川島洋騎手の乗った2番人気パフォーマンス。父アッミラーレ、母プラチナウィンク(アフリート)という牡栗毛で、田中正厩舎。生産・野島牧場で馬主も野島春男氏というオーナーブリーディングホースである。
年間いくつ組まれるレースなのか判然としないが、300万円の1着賞金はダントツで、翌日の北斗盃(重賞、200万円)より100万円も高いという豪華版。パフォーマンスは楽々と先頭に立つと後続を引き離し4馬身差でゴールインし、今年の2歳戦勝利馬第一号となった。
途中から雲が切れてきて、雨が上がったかと思うとまた時折思い出したように降雨に見舞われる安定しない空模様の一日であった。終日風が強く、おまけに寒い。そのためにスタンド内部で過ごすファンが大半で、外で観戦するには辛い初日となった。
この日の入場者は最終的に884人。売り上げは1億3991万7200円。
翌29日は祝日だったが、雨、不良馬場のスタートとなり、931人、1億5571万9400円。周知の通り、道営競馬は、売り上げの大半を場外に依存しており、とりわけ南関東地区との相互発売によって支えられている。したがって、本場である門別の入場者数は、全体の売り上げにそれほど影響を与えない。
それを改めて見せ付けられたのが、5月4日であった。
この日はコスモバルクの引退式が行われた。スタンドはバルクを一目見ようというファンでぎっしりと超満員。セレモニーはウイナーズサークル横に特設スペースが用意され、午後5時半、赤い馬服に身を包んだコスモバルクが登場すると一斉にカメラが向けられた。
バルクがウイナーズサークルを周回する間、そのすぐ隣でバルク関係者(ビッグレッドファーム=岡田繁幸、美佐子夫妻、田部和則調教師、五十嵐冬樹騎手、鹿島秀樹、榎並健史両厩務員)に対し、功労馬表彰や知事感謝状、花束などが贈呈された。
セレモニーの最後にマイクを持った岡田繁幸氏は、この馬を400万円で購入した経緯や認定外厩第一号として中央=地方の壁を突き破るために様々な挑戦を繰り返してきた戦跡を振り返り、熱弁を展開した。
最終的にこの日は、バルク効果によって入場者が2867人に達し(たぶん)過去最高となった。
その反面、売り上げは1億6431万4000円と、前週2日間と比較しても微増に止まり、改めてここ門別が極端な場外依存型の競馬であることを思い知らされた気がする。
さて、最後に苦言を一つ。コスモバルク引退式に関することである。
松葉杖に頼りながらバルクの生産者である加野喜一氏が姿を見せた。
しかし、表彰式の場に生産者の立つ場所が用意されていないのであった。
そのために、加野氏は、セレモニーが終わるまでウイナーズサークルの片隅でずっと待っていた。
表彰状や記念品などなくとも良いが、せめて関係者として遇する配慮ができなかったものか。花束の一つもなぜ手渡してあげられなかったのだろうと残念に思うよりも腹立たしく感じた。
これでは「馬産地競馬」の名に値しない。画竜点睛を欠くとはこのことである。