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合掌

  • 2010年06月23日(水) 00時00分
 辛く苦しいことがあったとき、身の回りに聞いてくれる人がいるかどうか。こんな切実な思いに陥ることは滅多に無いにこしたことはない。だが、じっと堪えるのが美徳なのだとばかり自分に言い聞かせている向きには、少しは気を緩める術を持っていた方がいいと、よく勧めている。もっとも、競馬をやる人間には、このタイプは少ないとも思っているのだが。

 ただ、胸の内では誰かに気づいて欲しいとあがいているのが、ごく普通の善良な人間だから、自分にゆとりのある者なら、なるべく他を思う心を持つようにしたい。もちろん、週末のリクリエーションの時も同じだ。不思議なもので、無理矢理にでも、或いはやせ我慢であっても、そう心掛けていると、ちゃんといい風が吹いてくる。もしかしたら、誰かに助けて欲しいとあがいているのは自分かもしれないのだから、安らぎを得る第一歩はこういうことかもしれない。

 昔から、人はたくさんの思い通りにいかないことを抱えて生きてきた。そう、どこを向いても苦しいことばかり。歯を食いしばってこらえているうちに、何かにすがりたいと願うように。現世利益を懇願する観音信仰は、こうして人々の間に広がっていったと聞いたことがある。観音さまは、助けを求める声をよく聞いてくれ、苦しむ人々を見逃さないというのだから、観音さまの人気はあって当然のこと。全国津々浦々、どこに行っても観音さまはいらっしゃる。

 そこで、少し気を緩めて楽にしていたいと思ったら、観音さまに手を合わせるのがいいと、ずっと以前から思うようにしてきたのだ。そして、こうすることで少しでもゆとりが生まれてくれば、他への思いも持てるのではないか。いい風も吹いてくるのだと。なんと都合のいい話で、これでは観音さまもたまったものではないとお思いだろうが、でも、広い心でつつんでくれるのである。合掌。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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