函館の芝2000mのレコードはサッカーボーイの1分57秒8(1988年の函館記念)だが、これはまだ野芝当時の記録。1995年にほぼ現在と同じような寒冷地向きの「洋芝コース」に変化して以降、今回の1分58秒5は事実上のレコードに相当する圧倒的な高速決着だった。
映像を通してなので、あくまで見た目の印象にすぎないが、ハービンジャーがレコードで独走したアスコット競馬場の芝は例年とはかなり様相が異なり、やけに芝が短く刈り込まれていた気がした。今年の函館の芝もA、Bコースを問わず、週によってはいつもの函館とは思えない速い時計が記録されるから、野芝よりずっとタフなコンディションとされる洋芝コースだからこそ、芝丈、地盤の固さしだいでは野芝以上に、いつもとは異なる馬場に大きく変化するのだろう。
この時計の出やすい芝が大きなプラスになったのは、勝ったマイネルスターリー以下、2着ジャミール、3着ドリームサンデーだった。この3頭には共通点がある。みんな比較的時計の速い札幌コース(ほぼ同じ性質を持つ洋芝とされてはいるが、函館より明らかに時計は速い)に良績のあった馬。みんなそろって函館コースは初めてだったが、「時計がかかれば…」の函館巧者を苦もなくスピード能力で圧倒することに成功した。
もちろん、いつもの函館らしくない時計勝負の馬場で快走したからといって、上位馬の評価が下がるわけではない。むしろ、このあとの重賞路線では強気になれる。マイネルスターリー(父スターオブコジーン)は、東京、新潟など時計を要求されるコースに2000m1分58秒台前半の記録があり、同じD.ホワイト騎手で挑戦する予定の「札幌記念」だけでなく、秋のビッグレースも展望できる立場になった。母の半姉は1994年の函館記念を今回のマイネルスターリーと同じように3馬身差で独走したワコーチカコ(父リヴリア)。夏の平坦巧者にとどまることなくもうひと回りの成長も期待できる。
ジャミール(父ステイゴールド)は、今回は完敗だったとはいえ、体つきはこれまでよりたくましく映った。早めにスパートして先頭に並んだりすると「気を抜いてしまいがち」といわれる気性を考慮し、スパートを待っていた印象もあるから着差ほどの能力差はないだろう。今春オープンに出世して3戦、この4歳馬はまだ凡走がない。
ドリームサンデー(父タイキシャトル)は、テイエムプリキュアが離して飛ばしたため(前半1000m通過57.8秒)、この馬にはもっともレースのしにくいパターン。他の馬の目標になりつつ、うながされるようにスパートしなければならなかった。理想は自分でレースを作れるマイペースの逃げ。とくに凡走後は展開に注意したい。
ベテランの函館巧者は。この流れ、この時計で決着してはとても無理。世代交代も重なっていただろうが、楽しみに待っていた函館の芝ではなかった。直線、サクラオリオンは前が詰まって鞍上が立ちあがっていたが、不利があったというより、マイナス20kgの体ではむしろこのあとが心配である。