7月24日、大井「サンタアニタトロフィー」はベルモントアクターの鮮やかな差し切りだった。前走船橋記念に続き2つ目のタイトル奪取、同時にデビューから無傷の連勝記録を「17」と更新。2着に3/4馬身差だが、内容はまず完璧としていいだろう。およそ2年ぶりの大井コース、しかも16頭立て16番枠。それでも道中好位の外めをスムーズに進み、直線あと1ハロン、鞍上のステッキに応え抜群の瞬発力で突き抜けてみせた。フィニッシュの脚いろはまだまだ勢いがあり、必要十分なだけ勝った印象。豊かなスピードと卓越した競馬センス。ここというところでグイと加速する反応のよさ。まさしく一流を証明したレースといえる。
サンタアニタトロフィー(サラ3歳以上・ハンデ・1590m・良)
◎(1)ベルモントアクター (54.5・石崎隆) 1分39秒5
△(2)コアレスフィールド (56・張田) 3/4
(3)ストロングゲット (52・的場文) 3/4
(4)キングリファール (56・佐藤隆) 1
△(5)スピーディドゥ (57・見沢) 21/2
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△(6)カシマダイン (52・納谷)
▲(13)ミリオンヒット (56・鷹見)
単160円 馬複6120円 馬単6910円
3連複12160円 3連単67410円
ベルモントアクターはこの夜マイナス5キロ。うっすらアバラが浮いてみえる絶好の仕上がり。それでもさすがに久々の輸送、ナイターでパドックのテンションは高くみえた。鶴首でときおり歩様が乱れ、二人引きの厩務員さんがなだめにかかる。が、やはり利発な馬なのだろう。返し馬を終え待避所に入ったころはすっかり平常心を取り戻し、いざ実戦でしっくりと折り合った。前半は馬自身がむしろセーブするような行きっぷり。外に出した最後の直線、鞍上のGOサインを受けて初めて本気で競馬をした。フェブラリーSのトーシンブリザードと少し似ている。危険がない、大丈夫と判断してそこから一気にエンジンが全開する。「いやぁ今日はちょっとひやっとした。なかなか動いてくれないからね」と石崎騎手。ただし微笑が浮かんでいる。傍目からもけっして「一杯」にはみえなかった。一見平凡な1分39秒5は気持ち時計のかかる馬場であること、相手なりの競馬であること。いずれにせよ今日はさまざま不利な状況下を勝ち切った事実に重みがある。
「慣れない大井で大外枠。負けるとすればここかなとは思っていた」と、レース後の出川克己調教師。「ただデビュー以来最高のデキになって、前走(船橋記念)も強かったでしょう。落ち着いて見ていられた」。何度か書いたが、アクターは3度に渡る故障、ブランクを乗り越え、スタッフが大事に大事に暖めてきた馬である。6歳は昔でいう7歳だからもう高齢の部類だろう。素質を見抜いた人間の「眼」、さらに気の遠くなるような日々の辛抱。外野でただ無責任に予想、観戦している筆者なども、こういう馬の大成は無条件にやはり嬉しい。英断と努力が、必ずしも結果に結びつくとは限らない競馬の世界で、夢を見事に実現させた。不可能を可能にしたといってもいい。
コアレスフィールドは、1000m通過60.9秒、気分よく逃げるカシマダインを直線入口で捕え、久々ながら底力を感じさせる2着だった。当日13番人気。ひと息ムラながら意外性を秘める快速馬。南関東G2~3レベルならまだまだ好勝負が期待できる存在だろう。逆に持ちタイム1分38秒8だけ走れなかったカシマダインは、オープンの壁か、あるいはやや調子落ちか。うまく脚をタメてイン強襲、「一瞬勝ったと思った」(的場文騎手)というストロングゲットも、終わってみればもう少しオープンのキャリアがほしかった。キングリファール、スピーディドゥはレースの流れ、ハンデを加味してまず善戦というところ。ミリオンヒットはやはり左回りの方がスムーズに走る。
再びベルモントアクター。次走は8月川崎「報知オールスターカップ」、あるいは大井「アフター5スター賞」になるようだ。収得賞金がいよいよA1に届き、あとは自在にローテーションが組める。「暮れの東京大賞典に出せたらいいな」と出川克己師。モガンボ(MRプロスペクター)×マルゼンスキーの配合。レースぶりからも2000mは何ら問題ないだろう。ただ石崎隆騎手にとっては例によって選択の悩みがある。「ブリザードと同じレースを使ってほしくないんだけどね…(笑)」。そのトーシンブリザードは、9月地元船橋「日本テレビ杯」を経て、10月盛岡「南部杯」をめざすと聞いた。