シンボリクリスエスとノーリーズン、岡部幸雄と武豊、役者が揃うとレースに厚味が加わります。ダービー馬引退を受けた秋、どれが主役に収まるのか、G1前哨戦のひとつひとつに重い比重がかかってきます。
馬が主役にちがいなくとも、騎手の存在が大きいのがG1レース。ここに武豊が加わる意味は、大きいものがあります。
神戸新聞杯の武豊騎手は、恐らく何かを試す乗り方をするだろうと見ていたところ、やはり、後方にノーリーズンを構えさせ、ライバルをシンボリクリスエスと定めるや、大外から直線、一気に追撃に入りました。相手がどの程度の脚を使うか、きっちり差し切れるようなら、次への展望も大きく開けるところでした。ところが、岡部騎手のクリスエスは、みずから馬群のスキ間に入っていき、余裕を持っての抜け出し、しかも、迫まるノーリーズンを逆に、二枚腰で引き離す充実ぶり。余力さえ感じました。
両者がどこで顔を合わせるかはわかりません。しかし、ともに、夏のすごし方は成功したと見られるレース振りでした。
これで、3歳牡馬は春の実績がものをいい、3歳牝馬は、秋は新たな勢力分布での戦いということになったようです。ただ、各有力馬がどの路線を走るのか、未だ不明というむずかしさが残りました。
いずれにせよ、武豊騎手が加わることで、レースの雰囲気がちがってきます。あの、馬への負荷を極力避ける騎乗ぶり、ゴールできっちり馬の力を出し尽す騎乗ぶりには、舌を巻きます。
前哨戦は、それでいて次へのプラスアルファを残す乗り方で、その技は光ります。彼がここぞと思ったときには、十二分に、それまでに見られなかった力を出し切ります。信頼の手綱、それは、きゅう舎関係者のみならず、ファンの側にも伝わってきます。是非、G1戦には出場してもらいたいものです。