今回は、先週見に行ったオーストラリア競馬のレポート。中でも、2009年にオープンしたばかりのTabcorp Park Melton競馬場に的を絞って書かせていただきます。
同競馬場は、ヴィクトリア州のハーネス(繋駕)競馬を統轄するHarness Racing Victoriaが作ったハーネス専用のコース。メルボルンから西へ鉄道で40分ほどのところにあるメルトンという町の郊外に新設されました。かつて、メルボルンのハーネス競馬は、平地のビッグレース・コックスプレートが行われるMoonee Valley競馬場で開催されていましたが、平地競馬との併用で開催日などの制約を受け、不自由を強いられてきました。ハーネス専用競馬場の新設で、その課題は一気に解消されたわけです。札幌を間借りしていた道営競馬が自前の門別競馬場をオープンさせたようなもの、と考えればいいでしょう。
競馬好きの人間にとって、ここは“極上の空間”です。1周1040mのハーネスコースと国内外の競馬とドッグレースの馬券&犬券が買えるTAB(投票券発売所)に加え、レストラン、ホテル、スロットマシンラウンジも併設。レースのない日もTABなどの施設は営業していますから、思う存分、泊まりがけで場外馬券を買うなどして楽しめる“ギャンブルコンプレックス”になっています。
この競馬場の年間開催日程(10年7月~11年6月)を見ると、ヴィクトリア州内にある地方競馬クラブ(主催者)のうちの約6割にあたる18のクラブが、ここを舞台に競馬を開催しています。その中のいくつかは、自前の競馬場が強風の被害で使用不能になったための代替や、自前の競馬場を持たず(昔はあったかもしれませんが)、これまでも他場を借りて開催してきたクラブがここを使うようになった、というもの。でも、中には自場開催日のうちの何日かをここに振り替えている、というケースもあります。
地方の競馬クラブのメンバー(ゴルフ場やフィットネスクラブの会員権を持っている人を想像してください)は、そのクラブがここでレースを開催してくれれば、当日限りとはいえ、最新鋭の競馬場のメンバーになれるわけです。これはメンバーを繋ぎ止めたり、新しいメンバーを勧誘したりするのに効果を発揮するはず。自場開催をここに振り替えるのは、そういうメリットがあるから、と考えられます。
ちなみにTabcorpは、シドニーのスターシティをはじめとする有名カジノ&ホテルや、シドニーのあるニューサウスウェルズ州とメルボルンのあるヴィクトリア州のTAB、さらには競馬+ドッグレースの専門TVチャンネル・Sky Racingなど を傘下に収める巨大ギャンブル運営会社。同競馬場のいわゆる“冠(ネーミングライツ)スポンサー”です。
今回訪れたMelton競馬場に、オーストラリア競馬の“進化”を見たような気がします。では、また来週。