自律神経は交感神経と副交感神経で構成されている。このバランスが崩れると、体調を崩す。実は私もかなり昔から自律神経失調症になっている。
若い人に弟子入りを志願されたりするのだが、申し訳ないがいつも断っている。この世界で生きるということは、まさに命を削るようなもなのだ。長年続けて、無事で済む可能性はそれほど高くはない。だからお勧めできない。
自律神経のバランスが崩れると、通常ならあり得ないようなことがさまざま起きる。例えば頭痛が治まらずに丸三日まったく眠れなかったり、体が急速に冷えて体の中を突風のような冷気が右から左に波打ちながら流れ続けたり、あるいは下痢をしてるわけでもないのにいくら食べても体重が減り続けたりと、普通では考えられない、ギョっとするような現象が立て続けに起きるのだ。
精神的にも肉体的にも参ってしまうので、ここから自力で立ち直れる人は少ない。私の場合は西洋医学はもちろん、漢方、気、瞑想法、ヨガなど、あらゆるものを勉強し、実践することで、かなり立ち直ることが出来た。そこで学んだのは、生命はリズムで成り立っているということだ。したがって、リズム運動や呼吸、時間の認識などで、そのリズムをコントロール下に置くと、ある程度自律神経のバランスを取ることが出来る。
治療のほか、自分で学習した理論を系統立てて頭の中で繰り返し構築することにより、なんとか日常生活に支障を来さないレベルに持ってこられた。
だが、馬の場合はそうはいかない。リズムが崩れていたり、バランスが悪くなっていることを理論的に言い聞かせることなど出来ないのだ。
もちろん、馬は野生に近いから、そのぶん人間のように狂気に近づく可能性は高くない。ところが、サラブレッドの場合は人為的に管理され、特殊な競技に身を置いているので、下手すれば人間以上に容易に心身のバランスを崩してしまう。
先日、自律神経の本をいろいろ読んでいるうちに、安保徹氏という免疫学の人の本に出会った。その中に、副交感神経が優位になると体が敏感になるので、それまでの不調が分かるようになるという話があった。なるほど、この「元々あったものが分かる」というのは面白いニュアンスだ。
それによると、忙しいとき、原稿の締め切りが近づいているときや競馬開催のときは、気分はハイになる。交感神経が優位になっている状態だ。このときは気が張っているので、頑張れる。だが締め切りが終わると、どっと疲れが出て風邪をひく。これは副交感神経が優位になって、体の不調が「よく分かるようになったから」ということだ。
で、話を先週の
チャーリーポイントに戻そう。
小倉滞在という環境変化で、しかも調教をビシッと追う。このとき、気が張ってハイになる。そして唐戸特別を3着に好走。もちろん、体が仕上がっていたこともある。
だから、次は調教を軽くする。体が出来上がっている馬の中1週では、強い調教は必要ないからだ。
では次の小倉城特別の場合、馬はどう感じたか?
環境が変わって、ハイテンションで頑張って仕事をした後の緩い調整。すると気が緩む。そうなると、仕事明けに風邪をひく人間のように、体中の不調がよく分かってくるわけだ。
ただ、外見だけ見ても、それはなかなか分からない。なぜなら、体の機能そのものに、変調はあまりないからだ。不調が本人に「よく分かるようになった」だけなのだ。
そうなると、自然に走るのを手加減する。結果、2番人気10着。前走とまったく同じ小倉芝2000mという条件なのに、真逆の結末を生んだのである。
もし、この状態でもう1回強く調教をしたら、小倉城特別もハイテンションで激走出来たかもしれないが、心身に対する負荷、ストレスはより強くなる。ただそれに本人が気付いていないから好走したに過ぎない。
これを続けていくと、「故障」という結果が待っている可能性が高いわけだ。したがって馬を管理する人間としては、仕上がっている馬にむち打つ必要など無いのである。
ところが、現実にはそうでないケースも出てくるから、競馬は奥が深い。
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