帝王賞(6月29日 大井 サラ4歳以上 定量57kg JpnI 2000m)

「帝王賞」は、昭和53年新設。そのタイトル通り“天皇賞・南関東版”を意識して創られ、第1〜8回は南関東馬限定、距離2800m、以後第9回からJRA交流、同時に距離2000mと改定された。33年間の歴史、もちろんあっという間ではあるけれど(競馬ファンの常)、今改めてファイルをめくると、その節目節目に勝った馬は、何やらしみじみ懐かしい。南関東同士、2800m時代で印象に残るのはカツアール、ロッキータイガーの両ステイヤー。交流後は2000m第1回を制したトムカウント(石崎隆之J・出世レース)。以後、ライブリマウント、ホクトベガの時代があり、取って代わったアブクマポーロ、メイセイオペラも、記者記憶の中、それほど遠くには行っていない。際限がない昔話…。しかしそれが競馬のよさだろうとも正直思う。平成18年、アジュディミツオーVSカネヒキリも、やはり語り継ぐべき名勝負だった。今回史上初・帝王賞3勝目をめざすフリオーソ直前回避(トモ疲労)は何とも残念。ただ逆にいえば、それも一つドラマへの布石になる。GIに限れば、初めて受けて立つ立場となったスマートファルコン。さまざまな思惑で臨むチャレンジャーをどう捌くか。

(1)…波乱含み。1人気[3-2-1-4]、2人気[2-2-0-6]、3人気[0-1-3-6]。波乱含みと書いたが、むしろ“両極端”の言葉が当たるか。馬連に限っても、最低160円〜最高6150円と落差が大きい。

(2)…JRA対船橋。JRA=5勝、2着9、船橋=5勝、2着1。層の厚いJRA勢に、船橋精鋭が互角の戦いを演じている。大井、川崎、浦和、他地区とも、ここ10年はまったく出番がなかった。

(3)…5歳馬。5歳=5勝、2着4と大きくリード。4歳=1勝、2着2は案外で、それなら7歳=2勝、2着1を注目か。総体的にリピーター有利で、17年タイムパラドックス(7歳)などがその典型。

(4)…大賞典馬不振。前年の東京大賞典馬=11・5・11・6・不・1・2・不・不・8着。巡り合わせはあるとしても意外に冴えない。逃げ=4、先行=5、差し=7、追込=4。脚質はさして関係なく、能力優先。

※データ推奨馬
▲ボンネビルレコード…正直苦しい推奨馬だが、昨年3着、カネヒキリに頭差、ヴァーミリアン、サクセスブロッケンに先着を思えば狙いは立つ。帝王賞5戦5・6・1・3・3着の“年輪”があり、とにかくこの舞台、鞍上・的場文Jで例年闘志がよみがえる。高齢馬=要注意のデータ。波乱があれば。

　　　　　　　☆　　　　　　　☆

◎06.スマートファルコン　武豊
○11.エスポワールシチー　佐藤哲
▲01.バーディバーディ　　松岡
△04.ボンネビルレコード　的場文
△10.マグニフィカ　　　　石崎駿
△07.シーズザゴールド　　今野
　02.フィールドルージュ　酒井学
　09.タートルベイ　　　　御神本

　スマートファルコンの独走が浮かぶ。重賞14勝、課題だったGIも、昨秋軽々と2勝達成。とりわけ「東京大賞典」では、大井2000m2分00秒4、不滅ともいうべき大レコードを樹立した。常に自分で自分を引っ張り、グイグイ高みに昇っていく(時計短縮)パワーと闘志。エネルギーの塊――今の同馬にはそんな言葉がしっくりくる。武豊Jとコンビを組んで5戦4勝、呼吸、波長が合うパートナーを得たことも、もちろん大きな転機だった。今回フリオーソ回避、よりのびのびとリラックスした競馬ができる。

　エスポワールシチーは同期(6歳)であり、父も同じゴールドアリュール。思えば今回初対決が不思議だが、JCダート・フェブラリーS、GI5勝の格、内容というなら、ファルコンを大きく凌ぐ。ただ同馬の場合、当初から“切れ”と“センス”が特徴で、長く活躍するダート王者にしては、アカ抜けすぎている(洗練されすぎている)印象もないではない。前走かしわ記念3着も、ラヴェリータを捕え切れなかった点でやはり不満。2着有力は当然として、逆転までのイメージは正直薄い。

　3連勝馬券の妙味としてボンネビルレコードを推す。前述通り昨年3着はカネヒキリにわずか頭差。鞍上・的場文男騎手(帝王賞3勝)とともに、このレースの大きな“顔”だ。ごく普通に3番手となるバーディバーディは、今回補欠出走で、追い切り内容などやや物足りない感じもある。絶対能力、大井2000m適性(大賞典3着)でそこをどう補うか。もう1頭注目は、マグニフィカ。昨夏JDダービー快勝以来嘘のような不振だが、当時の内容(バーディバーディ完封)からも、血統(父ゼンノロブロイ)からも、このままジリ貧とは思えない。先週船橋グランドマイラーズからあえて連闘。いい刺激という可能性もある。