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兄弟ダービー制覇も夢ではないダノンムーン

  • 2011年07月06日(水) 12時00分
●アワーグラス(牝 栗東・中竹和也 父アグネスタキオン、母ファレノプシス)
 母ファレノプシスは四冠馬ナリタブライアンとほとんど血統構成が同じという良血馬で、現役時代に桜花賞(GI)、秋華賞(GI)、エリザベス女王杯(GI)などを制した。繁殖牝馬としてはラナンキュラス(10年フィリーズレビュー-GII・2着)、アディアフォーン(08年ファンタジーS-GIII・3着)などを出している。父アグネスタキオンは、母の父ブライアンズタイムとも、2代母の父Storm Catとも芳しい結果を残していないが、母のポテンシャルが高いだけに期待できる。

●エーシンドクトル(牡 栗東・松永昌博 父Montjeu、母Solaia)
 半姉OlayaはロングアイランドH(米G2・芝12f)の勝ち馬で、母Solaiaはランカシャーオークス(英G3・芝12f)の2着馬。これにSadler's Wells系の名種牡馬Montjeuを交配して誕生したのが本馬。Sadler's WellsとMiswakiの組み合わせといえばGalileoの名が挙がるので、本馬はMontjeu産駒でありながらGalileoにも似ているという血統構成。問題は日本向きの素軽さがあるかどうか。パンパンの高速馬場よりは多少力のいる馬場のほうがいいのは確かだろう。母方にあるアメリカ血統でスピード面をカバーできればおもしろい。

●サクセスセレーネ(牝 栗東・藤原英昭 父ディープインパクト、母リアルエクスペクテイションズ)
 母はアメリカで4戦して未勝利に終わったものの、2代母Educated RiskはトップフライトH(米G1)、フリゼットS(米G1)など6つの重賞を制した名牝で、母の父A.P.Indyはアメリカで一時代を築いた名種牡馬。ハイレベルな良血だけに繁殖牝馬としての期待は大きい。過去に「ディープインパクト×A.P.Indy」は1頭だけデビューして芳しい結果を残していないが、配合的に見てとくに悪いところはないので問題はないだろう。底力の担保となるKey to the Mintが入るので大物感十分。桜花賞もオークスも狙える万能型。

●ジヴェルニーアート(牝 栗東・吉田直弘 父Giant's Causeway、母Tee Kay)
 有馬記念(GI)と天皇賞・秋(GI)を2連覇して2年連続JRA年度代表馬に輝いたシンボリクリスエス(父Kris S.)と、ダート準OPのピサノデイラニ(父Fusaichi Pegasus)の半妹にあたる良血。シンボリクリスエスの父Kris.Sは芝向きのスタミナタイプ。ピサノデイラニの父Fusaichi Pegasusはパワー型の中距離タイプ。母Tee Kayは父の特徴を産駒に表現するタイプの繁殖牝馬のようだ。本馬の父Giant's CausewayはStorm Cat系の名種牡馬で、芝・ダート双方をこなせるが、基本的にはパワー型。日本ではスズカコーズウェイ、エイシンアポロン、エアマックールなどが代表格。芝・ダート兼用の中距離タイプだろう。

●ダノンムーン(牡 栗東・藤原英昭 父ディープインパクト、母ムーンレディ)
 半兄エイシンフラッシュ(父King's Best)は日本ダービー(GI)の勝ち馬。母ムーンレディはドイツ産馬で、芝2200m以上の重賞を4勝した名牝。ドイツ血統は、世界的に主流を形成している米英愛仏とは異質の、狭いドイツの閉鎖的な環境のなかで育まれた独特の血統。現代の血統のなかでドイツ血統の果たしている役割は大きく、日本でもマンハッタンカフェやブエナビスタなどはドイツ血統を含んでいる。本馬の父はディープインパクト。ディープとドイツ血統の組み合わせからはトーセンレーヴ、ペルレンケッテなどが出ているので悪くない。Busted−Crepelloを強化したクラシック配合で、兄弟ダービーも夢ではない。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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