11月11日浦和競馬。大井・御神本訓史騎手と同じ経緯で益田から移籍した岡田大(おかだだい)騎手が、南関東再デビューを果たした。翌12日、第9レースで早くも初勝利。サラC1、2番人気パラダイスタイガーで鮮やかな逃げ切り。益田リーディング3位の確かな腕をアピールした。「(調教に乗って)走る馬だと思っていたので、勝ててホッとしました。益田と違う左回りにまだ戸惑いがありますが、これから一鞍一鞍大事に乗っていきます…」。岡田騎手は24歳、御神本Jの3年先輩。記者の素人目からみても、鞍ハマリのいい安定した騎乗フォームで、さすがに実績だけのものを感じさせる。精悍なマスク、多少力不足の馬でも何とか動かそうという気迫あふれるレースぶり。貴公子然、いかにも天才肌の御神本Jとは、またひと味違う魅力を持ったジョッキーだろう。浜村忠厩舎。3日間、計18鞍に騎乗したあたりにも、周囲の大きな期待がみてとれる。
明けて14日、今度は川崎競馬で沖野耕二騎手が再デビューした。こちらは益田?2。通産2000勝にあと2勝という33歳。「(益田競馬廃止で)いろいろ考えましたけど、一度引退したつもりで新天地に賭けたいです…」。新進・河津裕昭厩舎。15日現在まだ未勝利だが、2日間で8鞍の騎乗依頼なら、やはり腕を見込まれているということだろう。すでに重賞「鎌倉記念」にも騎乗した。
急速に進む敏腕ジョッキーのスクランブル。そういえば、安藤勝己Jを突破口としたJRA免許試験の合否がほどなく出る。一般受験した小牧太、川原正一…以下、6名の地元スターにどんな判定が下るのか。より大きな舞台で自らの腕を発揮したい、また十分に自信があるという彼らの思い。やはりプロ野球のFAにも事情が似ている。そしてその後当然出てくるダブル免許問題。もっとも当の安藤勝己騎手はこんなコメントを出したという。「僕らがJRAで乗りたいというのは、日本全国、機会があればどこでも乗りたいということ。JRAの免許を取って大井で乗る、それも一つの夢なんです…」。まず地方競馬相互の垣根を取り払い、初めて話が先に進む、そういうことでもあるだろう。いずれにせよ流れは大きく動き出した。
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鎌倉記念(川崎11月15日、サラ3歳、ハンデ、1500m良)
◎(1)パレガルニエ (54・今野) 1分34秒5
△(2)ウィンブロー (53・張田) 3
(3)ピープルズチャンプ (53・金子) 11/2
(4)エミネントプリティ (54・的場文) 3
(5)スギノワンダー (54・佐藤隆) 3/4
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△(6)グリンゼファー (54.5・石崎隆)
○(9)ホクトエース (54.5・鷹見)
▲(11)スオウライデン (56・森下)
単240円 馬複4760円 馬単5100円
3連複24670円 3連単71600円
パレガルニエが堂々たる強さで勝った。フルゲートの大外枠ながら素晴らしいダッシュ力。逃げるスオウライデンを2番手でマークし、4コーナー手前、ごく自然流に先頭。そのまま余裕十分にゴールを駆け抜けた。「位置取りはレース前描いた通り。カカるところもないし自分で競馬をしてくれました。走る馬です」と今野騎手。1500m1分34秒5は、昨年ジェネスアリダー36秒0を大きく凌ぐ快時計。馬場状態を加味しても古馬準オープンに届いている。父シアトルダンサーII、むしろ重厚な血統で、490キロ台の馬体もあくまでパワフル。本質的に中~長距離向きだろう。牝馬という点だけが正直惜しい。次走は12月30日、大井「東京2歳優駿牝馬」。25日川崎「全日本2歳優駿・統一G2」は、残念ながら現時点で視野にない。
2着ウィンブローは意外に人気薄だったが、前走TR・若武者特別でもいい末脚をみせていた。今日は中団のインでうまく折り合い、直線内ラチ沿いを鋭く伸びた。父ジェイドロバリー。一戦ごとに競馬を覚え今後もクラシックレベルで期待できる。ピープルズチャンプも道中流れに乗って先行、あわや連対のシーンを作った。ただこちらは父デュラヴ。胴の詰まった体型からも短距離ベストの印象が濃い。
ハイセイコー記念組は壊滅した。スオウライデンは気迫で先手を取ったものの並ばれてあえなく失速。ホクトエースは中団からジリ下がりで見せ場なし。グリンゼファーも道中ずっと行き脚が鈍く、直線差を詰めるだけに終わった。前2頭は初コースの不利もあるが、結果的に一連大井オープン路線が低レベルだった印象も否めない。パレガルニエ不在の「全日本2歳優駿」となると、やはり新星登場が望み。3戦3勝カセギガシラ(父スキャン・大井)、2戦2勝ステルステクニック(父フサイチコンコルド・船橋)あたりががぜんクローズアップされてくる。
東京記念(大井11月21日、サラ3歳以上、別定、2400m)
◎スプリングシオン (佐藤祐)
○オンユアマーク (鷹見)
▲プリンシパルリバー (石崎隆)
△コアレスハンター (的場文)
△マイシーズン (鈴木啓)
△ミラーズライト (柏木)
△カサイグローリア (桑島)
顔ぶれはコアレスハンターが勝った「かちどき賞」とほぼ同様だが、今回距離2F延びて2400m。別路線からの上昇馬スプリングシオンを狙ってみる。JRA出身、南関東転入後[7-2-1-0]のディンヒル産駒。息の長い末脚を誇る芦毛の巨漢で、そのレースぶりはいかにも長丁場向きを感じさせる。まだまだ昇り目十分。ここは斤量にも恵まれそうだ。オンユアマークは東京記念3着、大井記念3着の実績がすでにあり、ひと叩きしてここが照準のレースだろう。かちどき賞で期待を裏切ったプリンシパルリバーは、ひとまずここが正念場。JDダービー3着からは勝って当然の相手だが、馬体、気性とも期待ほど成長がないうらみがある。ただし元より“心臓”がよいとされていた馬で、長距離には不安がない。コアレスハンターは同厩舎フレアリングマズルとイメージがダブる快速馬。目標になる展開ではやはり楽観できないだろう。ほぼ4頭の勝負。あえて穴なら、転入2戦目マイシーズン、混戦向きミラーズライト、カサイグローリア。