3歳重賞の黒潮盃SIIは8年前から地方交流戦として行われるようになりました。4年前に笠松のマルヨフェニックスが優勝した姿は圧巻。南関東を応援するものにとっても、強い他地区勢の存在は非常に刺激になりました。今年も楽しみな馬たちがやって来てくれましたよ!
無敗の兵庫ダービー馬オオエライジン(兵庫・橋本忠厩舎)。前走の兵庫ダービーは休み明けでまだ途上ながらも1870m1分58秒6(良)というタイムを叩き出したのはインパクト抜群でした。スピードがあって心臓も強く、天性のレースセンスの高さが強みです。
オオエライジン(提供:東京シティ競馬) 今回は6月9日の兵庫ダービー以来の実戦で少々間隔は空いていますが、7月のレースは競走除外になったものの体は作っていただけに問題はないそうで、「走るたびに力をつけてきて、今回は兵庫ダービー以上で今までで一番の仕上がりだと思います」(橋本調教師)
この馬が本当に良くなるのは秋口と見ているそうで、今の段階で南関東勢とどのくらいの力差があるのか楽しみでなりません。
「初物尽くしなので未知な部分が大きいですが、晴れの舞台に土をつけずにこのまま白い状態で兵庫に帰りたいです」と橋本調教師。これをきっかけにどんどん外に挑戦していきたいそうですよ。
繊細な面があることから当日輸送を敢行予定。Uターンラッシュと重なるだけに順調に大井競馬場入りしますように……。
岩手ダービーダイヤモンドカップの勝ち馬ベストマイヒーロー(岩手・瀬戸幸厩舎) は前走ジャパンダートダービーに挑戦して12着に敗れました。あのレースを改めて瀬戸調教師に振り返ってもらうと、「前半の流れが速すぎて馬が迷った面もあったし、レース中に怪我をしたのも響きました。輸送を考慮して結果的に控え目な調教で体も15キロ増えていました」とのことで、力を全く出せませんでした。
ベストマイヒーロー(提供:岩手県競馬組合) 怪我のために調教を10日ほど休んだそうですが、もちろんこの大舞台に出すからには態勢が整ったからこそ。前走の敗因を踏まえて、前走以上のハード調教をしてきたので、体が減っていても問題はないそうです。
「スタートさえ決まればテンは速いので包まれることはないと思うし内枠は競馬をしやすいでしょう。前走で終わりにしたくないですし、名誉挽回したいです」(瀬戸調教師)
レース前日輸送でしたが、Uターンラッシュに巻き込まれることなく順調に大井競馬場に到着したそうです。
北海道から南関東に来て、また北海道に戻ったピエールタイガー(北海道・堂山厩舎)。北海優駿を立派に勝って、こんなにうれしいお里帰りはありません。
ピエールタイガー((C)netkeiba.com) 8月13日に門別競馬場を出発し、14日に大井競馬場入り。18時間かけての輸送は順調だったそうで、早めに入厩しただけに疲れを回復して元気に挑めるそうですよ。
帯同してきてるのは2歳時から担当している高波厩務員で、「馬房以外ではヤンチャな馬ですが、2歳の頃に比べたら落ち着きが出てきました。北海優駿は地力の高さで頑張ってくれたと思うし、今回はその時よりも雰囲気はいいですね」(高波厩務員)
迎え撃つ南関東勢の話題をお届けしましょう。
ブラックサンダー(大井・澤厩舎)にとって非常に楽しみな一戦を迎えたと言っても過言ではありません。
ブラックサンダー 澤調教師は騎手時代に東京王冠賞でアローウイナーを勝利に導いたことでも知られていますが、06年に厩舎開業以来、調教師として重賞初制覇がかかっています。
まず今回のブラックサンダーの強みと言えば、戦ってきた相手が違うということ。ハードなペースの中で走り続けてきたのは財産です。
逆に歴戦の疲れが懸念されますが、いい意味で状態は維持できているそうです。
「ここは目標にしてきたレースだしチャンスだと思う」と澤調教師にも力が入ります。
今年の南関東3歳勢は全体的に見ても牝馬が大活躍し、なでしこ旋風が巻き起こりました。東京プリンセス賞と関東オークスをともに4着のハルサンサン(船橋・佐藤賢厩舎)もここは非常に怖い1頭だと思います。
ハルサンサン コンビを組む御神本訓史騎手のお話しでは、最後まであきらめないで一生懸命走る根性がスゴイということでしたが、確実に伸びてくるあの強靭な差し脚は度肝を抜きます。
だからこそ懸念されるのが、道中折り合っていかに脚をためられるかということです。前がやり合ってくれた方がこの馬向きとも言えるでしょう。
ちょうどレース前日にハルサンサンの元を訪ねると、「うん、いいよ。カイバを食べてくれるのが何よりいいし、明日は楽しみ」とセレン&セルサスでもお馴染みの吉田厩務員は言っていました。いつも寡黙な吉田厩務員の言葉だけに、それだけ好調さを肌で感じているんでしょうね。
こちらも頼もしい牝馬のラカンパーナ(大井・月岡厩舎)は放牧休養明けです。前走の東京プリンセス賞はスムーズさに欠いたり不利がありながらも、それでも3着に入ったのは力の証しでもあるでしょう。
「今回は実戦から離れている分まだ途上のように感じるけど、それでも馬の性能は違うと思うし頑張って欲しいね」(月岡調教師)
セントマーチ(小林・荒山厩舎)はここまでの成績を見ても非常に安定しています。唯一惨敗した京浜盃は気性面の難しさが出て自分の走りができずに終わりました。乗り難しいと言われている馬だけに、テン乗りの的場文男騎手がどう導くんでしょうか。
「今回は1800mだし折り合ってためていければ……」(荒山調教師)
レース後にテンションが上がりやすいそうですが、今回は非常に落ち着きがあっていい雰囲気だそうです。潜在能力の高さは一級品。
展開の鍵を握るゴーディー(大井・赤嶺厩舎)は、「仕掛けると行きたがるから、馬なりで逃げられればいいね。1コーナーの入りがポイント」と赤嶺調教師。自分のペースで逃げられれば最後まで渋太さを発揮する力もついてきました。