終わってみれば、5日間のうち4日間が必ずどこかで雨にたたられるあいにくのコンディションだったサマーセール。もともと北海道市場の敷地は泥炭層で水はけがよくない。そこに連日の雨とあってはせっかくの芝生も人馬が行き交うために早々に泥濘と化し、ゴム長靴でなければ歩き回ることさえままならないほどであった。
結果はすでに各種報道にもあるように、5日間のトータルでは1209頭が上場され、519頭が落札された。売却率42.93%は昨年よりも2.27%の上昇で、長引く不況や東日本大震災などの影響を考えたらまずまず上出来の数字であろう。
総売り上げは20億円の大台を超え、20億2723万5000円。昨年よりも4567万5000円の増加であった。ただし、落札馬1頭あたりの平均価格はついに390万6040円となり、前年比で23万828円の減。

サマーセール会場
「売れてはいるものの、価格が伸び悩む」市場であった。価格の低落はここ10年間ほとんど右肩下がりで推移しており今に始まったことではないが、それにしてもセリではありながら活発に競り合う場面が少なかったがために、結果的に「一声」で落札される上場馬が続出した。
生産コストを大きく割り込んでいるであろう落札馬が多く、個々の取引を見ていると決して手放しでは喜べないケースが目に付く。
しかし、ここで売っておかなければこの先価格はさらに下がることが予想されることや、来月のオータムセールに再度挑むまでの経費(コンサイナーに預託している馬も多い)を考えたら、同じ損失を計上するならばできるだけ傷口を浅くしたいという配慮もあって、ここで手放す決心をした生産者が少なくなかったものと推測される。
最高価格馬は初日に登場した116番「プライムオブユース2010」の1806万円(税込み)。父ステイゴールドの牡黒鹿毛で日高大洋牧場の上場馬。落札は(有)ビッグレッドファーム。
ステイゴールド産駒はこのセールで11頭が上場され(2頭欠場)、すべて完売する人気の高さであった。ただし、突出した高額だったのはこの馬だけで他はいずれも1000万円を下回った。
また牡牝でも明暗を分ける形となった。牡(4頭)の平均が966万円だったのに対し、牝馬は334万円にとどまった。
最も平均価格が高かったのはフジキセキ産駒。10頭中6頭の落札ながら牡馬3頭がすべて1000万円以上の落札価格となったことから、平均価格もまたこの市場で唯一の1000万円超えとなる1051万7500円を記録した。
周知のように今年度フジキセキは交配を行っておらず、そうしたことも平均価格を押し上げる要因となったと考えられる。
その他、マンハッタンカフェ(8頭中7頭落札、平均769.5万円)、ダイワメジャー(7頭中5頭落札、平均777万円)、ハーツクライ(5頭中4頭落札、平均905万6250円)、バゴ(5頭中4頭落札、平均735万円)、チチカステナンゴ(5頭中5頭落札、699.3万)あたりが好成績を残した。総じて人気が社台系種牡馬に偏ってしまう傾向が強いことは言うまでもない。
一方で、かなり厳しい成績に終わった種牡馬も数多くいる。いちいち名前を挙げないでおくが、上場された産駒の売却率が平均を大きく下回る種牡馬は今後苦戦が予想される。
平均価格の下落は、低価格馬の増加によってもたらされたものであろう。今年、落札価格が100万円未満の馬は6頭(昨年7頭)と変化がなかったが、100万円~200万円クラスが107頭(昨年73頭)と激増した。200万円~300万円のクラスは105頭(昨年102頭)、300万円~400万円では115頭(昨年99頭)である。
ここまでで計333頭。落札馬全体の64%がこの中に入ることになる。ほぼ3分の2である。高額馬は落札1000万円以上が昨年23頭を数えたが、今年は15頭にとどまった。わずかとはいえ平均価格が下げ止まらなかった要因がこうした部分にも見て取れる。
なお、今回の主取り馬(落札されなかった馬)の相当部分が、来月下旬に開催されるオータムセールの後半(3日目、4日目)に再び登場する予定になっている。