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世界の壁を打ち壊せ!

  • 2011年09月29日(木) 18時00分
 待ちに待ったGIシーズン。

 その開幕戦、スプリンターズSにはドバイゴールデンシャヒーン勝者ロケットマンや、先日のセントウルSで迫力ある走りをみせた香港のラッキーナインなど、ワールドレベルの馬が揃いました。

 なので、頑張れニッポ〜ン! と気合いを入れて日本馬を応援したいと思います。

 まずは、3頭出しの安田隆行厩舎。

 大将格のダッシャーゴーゴーは、前走セントウルSで1番人気の推され、接戦の末に1/2馬身差の3着。安田助手(あっ、先生の息子さんです)は、「いっぱい、悔しい思いをした」と言い、雪辱を誓っています。

 安田先生も「前走は、かかって甘くなった。負けた原因が分かっているから問題はありません。むしろ、一度走ったことが、いいガス抜きになりましたよ。内面もパワーアップしているので、力負けはないと思います。万全の態勢で世界の強豪に挑みますよ」と気合い十分。

 当然ですが、世界短距離王は気になる存在のようで「ロケットマンに前で壁を作ってもらい、3〜4番手からレースを運んで一気に交わしていきたいですね」と作戦を練っています。

 また、ただいま破竹の4連勝を決めているカレンチャンは、同じくスプリンターズSに出走するトウカイミステリーと併せ馬をし、52-8-37.9-24.0-11.9秒という猛時計を繰り出しました。

可憐なカレンチャン

 しかし、調教後に洗い場に入ったカレンチャンは、まさに可憐な乙女。また、全体に筋肉が均一についていて、バランスのいい馬体をしていました。それに、とっても姿勢がいいんです。これは、体重が増えてトモがしっかりしてきたからなんだそうです。

 もちろん、状態も良好。「息遣いもいいし、スイッチがはいると押さえきれないぐらいの闘志が出てきた」と安田先生。

「競馬界のなでしこジャパンですからね。ロケットマンとの対戦もなんですが、ゴーゴーとの対戦も楽しみにしているんです」と言うのは担当の岩元助手。

 また岩元さんは「環境、血統、高速決着など、勝つには難しい条件は揃っています。まずはスタートが勝負だと思います。あとは展開しだい。前に壁を作って、中団から仕掛けていくような競馬ができればいいいですね」と言いつつ、虎視眈々と5連勝目でのGI制覇を狙っていました。

 さて、調教相手のトウカイミステリーも好調です。併せのタイムは53.2-38.0-24.2-12.0秒とこちらも好時計。安田先生も「問題なく、いい動きでした」と満足そうでした。

トウカイミステリーも好気配

 ミステリーは脚運びがスムーズで、柔らかい馬体をしています。担当の村木さん曰く、短距離馬は固い馬が多いのに、この馬は柔らかいんだそうです。あっ、性格はノンビリ屋さんだそうですよ。

 ちなみに、安田先生の立てた2頭の作戦は「ロケットマンが先行すると思うので、ゴーゴーはその後ろですよね。それに、ミステリー、カレンチャンと続きたいです。そして、内々を回して終いで仕掛ける」というもの。

 取材中、先生はずっと拳を強く握って話していました。その姿から、「ホームでの一戦で負けられない!」という先生の気迫が伝わってきましたね。

 3頭が世界を相手に、どんな走りを見せてくれるのか楽しみです。

 さて、サマースプリントに優勝したエーシンヴァーゴウにとっても、ここは負けられない一戦。

 前走のセントウルSも、素晴らしいものでした…が、「実はキーンランドセールのために米国に行っていたので、見ていないんです。残念でしょう?」と小崎先生。帰国してから、VTRでレースを見たんだそうです。

「夏より、さらにひと皮剥けて、精神的にも強くなりました。この状態で本番までいきたいですね。先行馬なので枠もありますが、騎手と馬の両方が折り合うとところを発見できたことで、互いに競馬が上手くなってきました。そうそう、サマースプリントで獲得した26ポイントは過去最高なんだそうですよ。だから、今回もそれに恥じない走りがしたいですね」(小崎師)

 しかし、「ロケットマンはパワーとスピードが半端じゃないですよね」と小崎先生も世界的スプリンターを気にしていました。そして、「でも、向こうは坂とコーナーの経験が少ないから、その点はヴァーゴウが有利かな?」とも話してくださいました。

 さて、実際にヴァーゴウの追い切りに跨ったユーイチに感触を聞いたところ、「夏の疲れが残っていると思ったけど、大丈夫だったよ。今日の追い切り? 先生からは最初ゆっくりとの指示だったのに、帰ってきたら49.4-12.6秒だったって聞いてビックリしたよ」と開口一番に話してくれました。

 レースに関して「中山はトリッキーなコースなのに、外国馬はこのコースでの経験は少ない」のは、日本馬にとって有利と考えているようで、「(ヴァーゴウが)最初のコーナーが直線のように見えるので、勘違いしてスイッチが入らないように気をつけるよ」とのことでした。

 ところで、これほどまでにみなが気にするロケットマンって、どんな馬なんでしょう? そこで、日本競馬界一の海外ツウ、ユタカさんに聞きました。

「どんなに強い馬でも、輸送をすれば馬体が減ったり、飼い葉食いが悪くなったりするものでしょ。この馬は海外経験が豊富なので、ほかの馬より輸送に慣れているんだよね。それに、レースではスタートが抜群にいい。そして、名前のごとくロケットのようにスピードがあるんだ」(武豊騎手)

 う〜ん、これは強そうです。っていうか、強いんですが。では、この馬に日本馬が勝つとしたら?

「たまに、スタートがよくない時がある(笑)。それから、コーナーワークがあまり上手くないかな。そこが、日本馬にとっての狙い目だと思うよ」

 コーナーワークか…それなら、日本馬に得意な馬はたくさんいるぞ! それに、迎え撃つ日本勢も、いずれ劣らぬ短距離巧者。互角以上の戦いをしてくれるでしょう。

 今年は、本当にいいレースが見られそうですよね。今から週末が楽しみです。

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1977年8月2日、大阪府生まれ。96年3月に中尾正厩舎所属でデビュー。同期に福永祐一、和田竜二らがいる。96年3月10日、タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビューからの約5か月で12勝をマーク。しかし同年8月、レース中に落馬事故を起こし意識不明に。その後、奇跡的な回復をみせて復帰。03年には中山GJでビッグテーストに騎乗しGIを制覇をする。 04年8月28日、小倉競馬場で行われた豊国JSで再び落馬。レース復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は、栗東トレセンを中心に、精力的な取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)にて『常石勝義のお馬塾』(毎週土曜日9:45〜)に出演中。

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