このところ中国をめぐる新たな動きが盛んに報じられるようになった。
12月13日付「日高報知新聞」によると、中国への安定的な軽種馬輸出を確立すべく日高軽種馬農協と、胆振、十勝の両軽種馬農協、及びJBBA(日本軽種馬協会)、JAIRS(ジャパン・スタッドブック・インターナショナル=財団法人・競馬国際交流協会と財団法人・日本軽種馬登録協会が平成22年に合併し新たに設立された団体)の5団体が、去る9日に現地(北京市)で、大型国営企業「中国牧工商集団」と競走馬の輸出協力をする協定を結んだ、とある。
従来、道内からは約120頭が中国に向けて輸出されてきたというが、各軽種馬農協では、国内産馬の価格向上や、取引の歳のリスク軽減を図るために、中国国内における輸入代理業務を行う業者を探していたらしい。
もちろん、これら各軽種馬農協が中国企業と協定を結ぶのは初めてのことらしく、中国牧工商集団は、今後、日本の市場において中国人に購買された馬の輸入業務を代行する、とある。
また、双方(日本側5団体と中国牧工商集団)が誠意をもって、日本馬の中国市場における宣伝活動を推進することや、情報交換、市場開拓、技術研修などを共同で実施することなどが協定で確認されたという。
9日にかの地で結ばれた協定には、日本から前記5団体の各組合長や滝沢勇理事長(JAIRS)、西村啓二副会長(JBBA)が揃って出向き、中国牧工商集団の薛廷伍(セツ・テイゴ)副社長と情報交換をした際の記念写真が掲載されている。
並々ならぬ熱意という他なく、いよいよ中国に向けての本格的な軽種馬輸出に、関係5団体が本腰を上げた印象である。
去る10月下旬に開催された「オータムセール」には、最終日27日に寇彪という方が初めて北海道市場を訪れ、計10頭のサラブレッドを落札した。仄聞するところでは、寇彪氏は伝書鳩業者とのことだが、市場主催者側の気の使いようは大変なもので、前日(26日)の夕刻、市場前庭にワゴン車が到着し、中から寇彪氏が降り立つと、組合長以下、理事や職員が最敬礼で出迎える場面を目撃した。
結局、寇彪氏はこの市場で10頭(1617万円=税込)を落札したが、市場終了後には、パレードリングに落札馬を並べ、1頭ずつ確認しながら記念写真を撮る念の入れようであった。
これらのサラブレッドたちは、かの地で競馬に供されることになる。
だが、まだ中国では馬券発売を伴った公認競馬が実施されておらず、今のところ“草競馬”の域を出ていない。とはいえ、「速い馬を求める機運」は高いようで、すでに、各地に立派な競馬場が建設され実際にそこでレースが行われているようだ。
その様子を「JBBA NEWS」12月号が伝えている。
武漢(湖北省)にある東方馬城競馬場にて10月30日(日)に開催された速度競馬(中国ではこう表記するらしい)には、数1千人の観衆が詰めかけ、全14レースを行ったという。
距離は1000m~5000mと幅広く、スターティングゲートを使用するレース以外にも、白線を引いた上からの発馬レースもあったらしい。
写真で見る限り、競馬場の施設はかなり立派なもので、スタンドは収容能力が3万人規模という。大型ビジョンもあり、後は馬券発売体制さえ整えばすぐにでも公認競馬を始められるところまで来ている印象だ。
ただし、出走表には血統の表記がないらしく、どこの国で生まれたどんな馬なのかがまるで分からないのが現状のようで、この辺が今後の問題であろう。
すでにヨーロッパや米国、オセアニアなどから数千頭規模の馬(乗馬、競走馬)を輸入しているようで、日本はそれら諸国と比較するとかなり出遅れしている感が強いのだが、日本のサラブレッドの国内の需要は今のところ頭打ち状態に近く、現在の閉塞状況を何とかしたいという軽種馬生産者や市場関係者は少なくない。
まずは中国で馬券発売を伴う公認競馬が実施されるのを待つしかないが、その後は、日本産馬がかの地でどれくらいの活躍を見せるかが今後のカギとなるとなるであろう。果たして、有力な市場として期待できるのかどうか。今後の展開を注視したいと思う。