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英国障害の注目レースを占う

  • 2011年12月21日(水) 12時00分
 チェルトナムのゴールドCに次いで、英国スティープルチェイス界で第2の権威を誇る「キングジョージ6世チェイス(ケンプトン、芝3マイル)」の開催が、26日(月曜日)に迫っている。

 ブックメーカー各社が2.25倍から2.375倍のオッズで1番人気に支持しているのが、前年に続くこのレース連覇を狙うロングラン(セン6、父カドゥーダル)だ。

 フランス産馬で、08年5月にフランスでハードラーとしてデビュー。当初は生産者の所有馬として走っていたが、08年秋に現在の所有者であるロバート・コーヘン氏が購入し、09年4月までハードルで8戦を消化。G1カンバセレ賞をはじめ3つの重賞を含む5勝を挙げる活躍を見せた。

 09年5月からスティープルチェイスに転向。09/10年シーズンが開幕し、G3オルカダ賞、G1モーリスギヨワ賞と連勝した段階で、馬主のコーヘン氏はこの馬のイギリス移籍を決断。ニッキー・ヘンダーソン調教師の管理下に置かれたロングランは、シーズン末までに3戦し、ケンプトンのG1フェルトハム・ノーヴィスチェイスに優勝した他、チェルトナムフェスティヴァルのG1RSAチェイス3着などの成績を残した。

 10/11年シーズンは3戦。ケンプトンのG1キングジョージ6世チェイス、チェルトナムのG1ゴールドCを制し、スティープルチェイス界の最高峰に君臨することになった。

 前走、今季初戦となったヘイドックのG1ベットフェアチェイスはコートスターの2着に敗れたが、もともと叩き良化型の上に、ケンプトンはここまで2戦2勝と得意としていることから、今回は巻き返すと見るファンが多いようだ。

 各社4.5倍から5倍のオッズで2番人気になっているのが、コートスター(セン11、父ヴィレッジスター)である。

 2006年から2009年までG1キングジョージ6世チェイスを4連覇しているのに加え、チェルトナムのG1ゴールドCも07年・09年と2度にわたって優勝。英国障害界で既に伝説の領域に達しているのが、この馬である。

 10歳となって迎えた2010年のチェルトナムGCで、落馬の憂き目にあったあたりから年齢的な衰えを指摘されるようになり、自身の5連覇がかかった2010年のキングジョージ6世チェイスが、雪の影響で3週間順延となったのが更なる潮目となり、年明けの1月15日に行なわれたキングジョージ6世チェイス、続くG1チェルトナムゴールドCで、いずれもロングランに大きな差を付けられる3着に敗退。10/11年シーズンの最終戦となったパンチェスタウンのG1ギネスゴールドCでは、全く精彩のないレースで競走を中止し、マスコミやファンの間で引退を勧める声が高まる事態となった。

 だが今シーズンも現役に留まり、半年振りにファンの前に姿を現したのが11月19日にヘイドックで行われたG1ベットフェアチェイスで、ここでコートスターはロングランに8馬身差をつける快勝。鮮やかな復活を遂げて限界説を払拭し、自身5度目の優勝がかかるキングジョージ6世チェイスに挑むことになった。

 単勝5倍から6.5倍のオッズで、ブックメーカー各社が3番人気に推しているのが、マスターマインデッド(セン8、父ニコス)である。

 ロングラン、コートスター同様、この馬もフランス産馬で、フランスでハードラーとしてデビュー。4戦目に早くもスティープルチェイスに転向した後、イギリスに移籍した2シーズン目の2月に、ニューバリーのG2ゲイムスピリットチェイスで重賞初制覇。次走チェルトナムフェスティヴァルのG1クイーンマザー・チャンピオンチェイスにも優勝し、スティープルチェイス戦線の最前線に躍り出た。

 08/09年シーズンは、G1ばかり4戦し、クイーンマザー・チャンピオンチェイス連覇を果たしたのを含めて、G1・4連勝を達成。自身の3連覇がかかった2010年のG1クイーンマザー・チャンピオンチェイスでは4着に敗退し、2011年のG1クイーンマザー・チャンピオンチェイスは8着と大敗するなど、ここ2シーズンほどチェルトナムフェスティヴァルでの成績こそ芳しくないものの、それ以外のレースでは堅実な競馬を続けており、今季2戦目となった前走、アスコットのG2アムリン1965チェイスで12度めの重賞制覇を果たして、キングジョージ6世チェイスに向かうことになった。意外にも初コースとなるケンプトンをどう走るかがカギだ。

 各社7〜9倍のオッズで4番人気に推しているのが、キャプテンクリス(セン7、父キングズシアター)である。まだデビューから通算12戦とキャリアが浅いが、今年3月のチェルトナムフェスティヴァルでG1アークルチャレンジトロフィーを制して、自身初のビッグタイトルを獲得。続くパンチェスタウンのG1ライアンエア・ノーヴィスチェイスも連勝し、今後のスティープルチェイス界を背負って立つ期待をかけられた馬である。

 今季初戦となった11月1日のG2ホルドンゴールドCの最終障害で、自身初となる落馬を喫したが、陣営は強気にキングジョージ6世チェイスにぶつけてくることになった。

 ボクシングデー(12月26日)恒例のビッグレースに、皆様もぜひご注目いただきたい。

【お知らせ】
『世界の競馬』の次回更新は1/11(水)になります。ご了承の程よろしくお願い致します。

▼ 合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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