スマートフォン版へ

京成杯

  • 2012年01月16日(月) 18時00分
  • 30
 3歳クラシック路線には、そろそろ「ランキング」が登場し始める。候補にランクをつけることにはそれほどの意味はないが、勢力ピラミッドを描こうとするとき、その土台と骨組みがはっきりしているなら、これほど整理しやすいクラシック路線はない。

 京成杯には、ここまで重要な位置を占めると思われる「札幌2歳S、東スポ杯2歳S、朝日杯FS、ラジオNIKKEI杯2歳S」に出走し、その5つのレースでそれなりの成績を残した馬が出走していた。また、重賞ではないが大きなポイントを占める「ホープフルS2000m、京都2歳S2000m」の好走馬も出走してきたから、今後の路線を考えるうえで非常に大きな意味をもつ1戦だったろう。

 勝ったのは札幌2歳Sを小差4着のベストディール。2着はやっぱり札幌2歳Sを小差3着していたマイネルロブストだった。別のステップからここに出走して期待を集めた「アドマイヤブルー、レッドシャンクス、アーデント」は、もちろんたった1回の対戦で優劣のつくものではないが、残念ながら札幌2歳S好走組に打ち取られてしまった。この世代、明らかに「札幌2歳S組強し」である。

左から馬名、札2歳-東スポ-朝日杯-ラジオN-京成杯(*は非出走)
☆グランデッツァ   1-*-*-3-*        
☆ゴールドシップ   2-*-*-2-*
☆マイネルロブスト  3-9-2-*-2
☆ベストディール   4-*-*-*-1
★ディープブリランテ *-1-*-*-*
★アルフレード    *-*-1-*-*
★アダムスピーク   *-*-*-1-*
(★印は札幌2歳Sの上位馬を倒し評価の上がった馬)

「対戦成績表」はあくまで見通しをつけようというもので、同じ世代の中でどんな位置にいるのかの手がかりになれば十分。それ以上の意味はない。ここまでもっとも多くの候補と対戦しているのはマイネルロブストである。同馬は、自身が路線の有力馬であると同時に、この世代の「基準馬」になりつつある。秋以降、この馬に快勝した馬が高い評価を得ることになっている図式が一目瞭然。毎年、こういうタイプは出現するが、同馬は不良馬場の東京スポーツ杯2歳S以外、ポイントになるレースでいつもきちっと答えを出している。ここまで基準らしき馬として正直な結果を残してくれる馬も珍しい。

 京成杯を制したベストディールは、札幌2歳Sのころからマイネルロブストとほぼ同じ評価だったが、秋に百日草特別(東京)を完勝したあと再鍛錬の期間をつくり、方向を3歳春に向けたのが大正解。明らかにひと回り成長していた。最初は、いかにも父に似た体型の印象が濃かったが、全体にパワーを増した体は464kgになっている。

 レースの前後半「60秒4-60秒2」=2分00秒6の流れの中、意識的に前半は控えて進み、中団の外で折り合いピタリ。どの馬をマークするというのではなく、ピッチが上がった3コーナー過ぎから自分でスパートし、先に抜けた1番人気のアドマイヤブルーを外からねじ伏せるように差し切った。たくましさを感じさせた。国枝厩舎は初年度のディープインパクト産駒で、最初(6月)に答えを出してみせたが、2年目の管理馬は早くから3歳春を見据えて…の展望に沿ったローテーションを取っている。

 この世代のディープインパクト産駒には最初から中距離タイプを思わせる候補が多いが、この馬もディープブリランテ、アダムスピークと同じ。とくに距離適性を感じさせない「候補」に成長してきた。鮮やかな2000mの京成杯突破である

 マイネルロブストは2000mの今回は最初から控える作戦だったのだろう。ベストディールを見る位置になり、結果はこれをみるようにスパート開始。朝日杯FSを好走しただけにこの距離への対応がテーマだったが、上がり3ハロン34秒2は勝ち馬のそれを上回っている。半馬身(0秒1差)2着。この時期に2000m2分00秒7なら、文句なしに皐月賞の有力候補に評価アップである。

 巧みに流れに乗った人気のアドマイヤブルーは、勝ち馬と0秒3差だからいくらも負けていないが、同じ中山2000mのホープフルSを自身は明らかに上回って、ほぼ完ぺきな内容で2頭に差されたあたり、ちょっとショックだろう。1コーナーから行く構えをみせたレッドシャンクスは、確かにかかり気味のコスモアンドロメダに絡まれたが、流れは少しも苦しくない。中間に13秒台のハロンもある。先行策自体は失敗ではないだろう。それより、苦しくなったらほとんど抵抗できず、がんばろうという気力を見せなかった精神面が気になった。アーデント(父ディープインパクト)は、ベストディールと同じようなローテーションだったが、直線の伸びもう一歩。この日、ルメール騎手は冴えていなかった気がするから、こちらの距離適性はもう一度2000m級に挑戦してからだろう。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング