ユングフラウ賞(2月22日 浦和 サラ3歳牝馬 別定 南関東SII 1400m)
「ユングフラウ賞」は重賞に昇格して3年目。しかし桜花賞TRとしての歴史は古く、平成2〜20年まで準重賞、さらに遡ると「桃の花特別」というタイトルで、長く重要な役割りを担ってきた。1〜3着馬に本番(3月21日)優先出走権。ただ、昨年は何とも不幸なできごとが起こっている。言わずもがな大震災。競馬開催自体しばらく休止(4週間)、当然「桜花賞」も中止になった。ユングフラウ優勝クラーベセクレタには大きな受難。それでも今ふり返ると、塞翁が馬…とは、やはりため息が出てしまう言葉と思う。クラーベはそこでメゲるどころかハードルをさらに高く変えて結果を出した。羽田盃→東京ダービーの2冠制覇、交流JDダービーも事実上3着だった。
ともあれ、近年の南関東勢力図(特に明け3歳)は“牝高牡低”で推移している。今年もそう。「鎌倉記念」「ハイセイコー記念」「平和賞」、混合重賞を制したのはすべて牝馬で、先週大井準重賞「雲取賞」も牝馬ゴールドキャヴィアの圧勝だった。同馬についてはレース直後、川島正行師が「牡馬クラシック」と明言しており、それを聞いて、ごく客観的に納得という印象がある。もう1頭、重賞2勝、牝馬のみならず昨年2歳頂点に立ったエンジェルツイートは、今回“賞金別定57kg”を懸念して回避となった。同馬自体は仕上がり早、桜花賞ぶっつけでも全開のイメージだが、3歳牝馬同士を思えば、TRに妙な斤量差は、不適当であり興ざめだろう。レースの伝統と価値が台なしになってくる。
(1)…波乱含み。1番人気〔3-2-0-5〕は一応の合格点。しかし2番人気〔0-2-1-7〕とふるわず、結果、馬複1000円以下の配当は10年中3度しかない(万馬券2度)。ただ3番人気〔4-1-1-4〕の活躍は注目できる。
(2)…4場所拮抗。船橋、川崎、大井、それぞれ3勝、地元浦和も1勝している。船橋が2着数(4頭)でわずかにリードだが、これだけ拮抗した重賞も珍しい。アベレージをとれば〔3-1-2-15〕、大井優位という見方も可能。
(3)…道営出身。優勝馬平均キャリア=7・9戦、同2着馬=6・0戦。道営からの転入馬(ハイレベルの経験豊富)がきわめて強く、過去10年、6勝、2着3。昨年もクラーベセクレタ→マツリバヤシの決着だった。
(4)…捲り。逃げ=5、先行=6、差し=8、追込=1。目標になる逃げ馬より、3コーナーから捲っていけるタイプに分がある。「東京2歳優駿牝馬」出走組がやはり強く、前10年で優勝馬5頭、2着馬5頭。
※…データ推奨馬
▲グラッツェーラ…北海道1勝、昨秋大井・荒山厩舎に転厩した。トータル〔2-2-0-8〕は一見地味だが、道営時「フローラS」2着、前走浦和「ニューイヤーC」4着だから格下感はない。流れに応じ、先行差し自在。鞍上・坂井英光Jは、20年インカローズ、22年バックアタックと、このレースを2勝している。
☆ ☆
◎リカチャンス 55本橋
○アスカリーブル 55戸崎
▲コテキタイ 54張田
△ゴールドエルフ 54石崎駿
△グラッツェーラ 54坂井
△メイクアミラクル 54今野
△レイモニ 54杉村
アイキャンデイ 56的場文
ギンザファミリア 54森
モリヤッコ 54山崎誠
リカチャンスの充実度を買った。道営2勝、重賞「リリーカップ」3着。そこまでの実績は並みのオープン級だが、同馬の場合、転入後の成長が大きく光る。11月浦和千五(JRA交流)で南関東初勝利をあげ、明けて今季は「桃花賞」→「ニューイヤーカップ」と2.3着。前者ゴールドキャヴィア、後者ゴールドメダル、いずれも強敵に正攻法で食い下がった。父トワイニング、元より短距離ベターと判断でき、今回浦和千四は条件ベストといえるだろう。鞍上・本橋Jは若手のホープ。思い切りのよさ、勝負勘の鋭さが印象的で、とりわけ牝馬と相性がいいイメージがある。逃げ争いの直後から捲るイメージ。追い切りも余裕残しで絶好の動きだった。
対抗にとったアスカリーブルは完成度の高いレース巧者。兵庫4戦4勝で東上。前走「桃花賞」3着で牝クラシック路線にメドをつけた。この中間、川島正行厩舎転厩、鞍上に戸崎Jを配した挑戦。流れを見つつ自在の競馬ができるだろう。ブラックタキシード×ホワイトマズルの血統からは成長力も秘めている。▲コテキタイは、父サウスヴィグラスらしい快速馬。今季思い切った徹底先行で2連勝。それも前走「若水特別」千六1分43秒4は、同日ニューイヤーカップ(ゴールドメダル=44秒4)を現実に大きく凌いだ。気性面でやや危うさは残るものの、主導権さえとり切ればスピード上位。一気に突破があっても不思議ない。
以下も能力拮抗。流れひとつ、位置取りひとつでチャンスが浮かぶ。オープン2戦目、瞬発力がありそうなゴールドエルフ、ブリンカー着用で差す競馬を覚えたグラッツェーラ。メイクアミラクル、レイモニも、一貫強敵相手にいい経験を積んでおり、ハイペースの差し較べなら浮上がある。「ハイセイコー記念」「平和賞」、牡馬重賞2、2着アイキャンディも侮れないが、前2走続けて殿り負けはやはり解せない。代わって大穴はモリヤッコか。時計こそ目立たないが浦和3戦2勝。母イシノラピドはブライアンズタイム産駒、「東京プリンセス賞」2着馬で、クラシック向きの血筋を感じる。