この時期の3歳馬にとって、アーリントンCの行われる阪神・芝1600m戦は厳しい舞台だ。広い外回りコースに加え、回るコーナーは2つ。それだけ直線を走ることが多い、ということになる。
右回りの競馬場としては、国内No.1のホームストレッチの長さ。約470mを誇るうえ、ゴール前には坂まで待ち構える。勾配の角度は急坂で有名な中山競馬場と同レベルで、上りきってからさらに、ゴール板まで100mもある。古馬でもきつい設定を3歳馬が走るという事実を、まず脳裏に刻みこんでおきたい。
4角を回ってからが長いことに加えて、坂の存在がある。前半に速いラップが続くレースは少なく、必然的に上がり勝負の傾向が強い。そして06年の改修以降、明らかに当コースを得意としている種牡馬が3頭いる。アグネスタキオン、スペシャルウィーク、キングカメハメハ。このビッグ3は常に、このステージでの安定度が図抜けて高い。
ところが、今年はこの3頭の産駒が登録の段階で不在。裏を返せば、種牡馬の方も新興勢力を中心視していく必要があるということだろう。
1世代のみながら、当コースでの奮闘が目を引くダイワメジャー産駒。全3勝は、ここ2年に的を絞ってもベスト10に入る内容だ。そのうち2勝を挙げているのが、ダローネガとオリービン。そのツートップが参戦し、京都で新馬勝ちを飾ったダイワマッジョーレも出走。注目しないわけにはいかない。
産駒の特性ともいえるのが、元気の良さである。父譲りの、粗削りな走り。行きっぷりの良さに加え、威圧感も十分。とりわけダローネガはそのタイプだ。朝日杯FSでは16番枠に泣いた格好だが、力任せに掲示板を確保した。条件を考慮すれば、1分34秒0の時計も優秀。まぎれの少ないステージの今回なら、思う存分に弾けることが可能になる。
オリービンはボディーが引き締まるとともに、折り合い面に進境を見せている。装着したメンコの効果も絶大で、ここ2戦は落ち着き過ぎるほど。とりわけ前走は加速がつくにのに手間取り、完全に脚を余した。ゴール板を通過するときのスピードは強烈で、上がり3Fもメンバー最速の34秒3を記録した。前残りのペースに逆らっての7着。着順以上に中身は濃い。
臨戦過程と状況こそ違う2頭だが、父譲りの闘志を受け継いでいる点では一緒。小細工なしの仁川のマイルコースなら、大崩れは考えにくい。
マッジョーレの初戦は3角で寄られるロスがあったうえ、4角でも集中力を欠くしぐさ。ステッキを入れられると走る気を見せ、2着に首差のVだった。父の産駒特有の粗削りな面を持っており、上がりの速い決着に対応。それも半ばの2Fを除いて、11秒台のラップがゴールまで続く戦いを制してのもの。辛勝だが、内容はそれ以上。上積みもおおいに望める。
ただ、見落としてはならないのが2つのレースのメンバー構成についてだ。
そう、昨年の朝日杯FSとラジオNIKKEI杯2歳S。GIとはいえ、マイル型が顔をそろえることが定着した前者。対する後者は、完全にクラシックを意識する素質馬が集結する一戦となっている。昨年の両レースはこれまでで最も、参戦馬の力量差が大きかったのではないか。関東の有力馬が地元のGIに集まり、今春を見据える関西の有力馬は2000mのGIIIに集中。例年以上に関西の強豪が後者を選んだことで、前者の関西馬が手薄だったことは否めない。
ダイワメジャー産駒のツートップに不安があるとすれば、そこだろう。関東馬が上位を独占した朝日杯FSで、5着に敗れたダローネガ。当コースと同じとはいえ、平場の500万下で2勝目を挙げたオリービン。安定性とコース適性の高さに目を奪われがちだが、レースの質がやや低かったという懸念は捨て難い。デビュー戦の直後で大敗の可能性もあるが、大駆けの期待ならむしろマッジョーレか。それでも、新馬勝ち直後で3着以内に入った馬は、改装後のこの舞台ではゼロ。勝利を争うとなると、分が悪いと言わざるを得ない。
そこで注目したいのが、ブライトラインである。阪神1600m戦で、常に種牡馬ビッグ3に次ぐ良績を残し続けてきた種牡馬フジキセキの産駒。繊細な面があり、関東圏で戦った京成杯は10着に大敗。大きな着順を拾ったが、全く折り合いがついていない状況で勝ち馬ベストディールと1秒1差なら、決して悲観する内容ではない。前々走のラジオNIKKEI杯2歳Sでは、4角で包まれる不利がありながら、5着に健闘。同世代で最もハイレベルな戦いで崩れなかった内容は、十分に評価されていい。
マイル戦の経験は1度切り。未勝利時代に中山で、急坂を克服してメンバー最速の上がり34秒4をマーク。抑えが利いた2戦目の当時と違い、ボリュームアップしたいまはうなるような行きっぷりを見せる。陣営が1600m戦に矛先を向けてきたのも、当然といっていい。まして鞍上には、安藤がリターン。この馬とは抜群のコンタクトを見せるだけに、何より心強い。
中心はブライトライン。続いてダローネガ、オリービン、ダイワマッジョーレのダイワメジャー産駒に着目する。
一発の魅力を秘めるのは、ヴィンテージイヤーだ。骨太の体に、太い四肢。やや硬めの走法から、ダート戦の方により向いている。だが、東京1600mダート戦の発馬地点の芝で見せた前走の勢いは、相当なもの。このアーリントンCは過去10年で、500万下のダートの平場戦をステップに勝った馬が、3頭もいる。いずれも発馬地点に芝がある、1400m戦だった
ヴィンテージは今回と同じマイル戦を制しているうえ、左手前に代えた瞬間、一気に相手を突き放した。右回りの方が合っているのではないか。もまれにくい外枠も歓迎材料。スピードと二枚腰に期待してみたい。