新装・中京競馬場。最終週を迎える現在の感想はまず、おもしろい! それに尽きる。器が大きいうえ、トラックに起伏がある。坂の部分と平たんな部分のつなぎ方。それが個性的で、ほかのどの競馬場とも違う高揚感をくれる。このポイントは、予想をするうえで重要だ。
旧コースの6F戦は、小回りコースのスピード勝負。条件級ではまず、先行馬が有利という鉄則があった。オープンレベルになって初めて、強力な差し馬が好勝負できる。力を持つメンバーがそろわない限り、単調な勝負になりがちだったのは否めない。ところが、いまは違う。ここまで芝の1200m戦は、6レース行われている。当然、大切な参考材料といっていい。もちろん、レースは生き物。今後、様々な変化を見せていくだろう。それでもいまは、この6つの中身をおおいに活用すべきだと思う。
未勝利戦から1000万下まで。馬場状態も良、やや重、重とそろっている。現状の傾向もはっきりと出ており、それぞれの内容を重要視していきたい。まず勝ち時計は1分10秒台がひとつ。11秒台が3つ、12秒台がふたつ。馬場状態に差異があるとはいえ、タイムを要している事実は明確だ。これは6F戦に限ったことではない。基本的にパワーを要求されるのが、ニュー・中京の特色。コース形態もかなりの影響を及ぼしていると考えられる
発馬直後はダッシュがつきにくいうえ、上り坂。勢いがつくと、坂に負けないようにスピードアップ。下り坂をややセーブしながら下りて、急坂をパス。ここまでにトータルで力を要する形を強いられており、平たんの残り200mに入る。上がり3Fすべて12秒台が3レース。上がり2F12秒台が2レース。そして上がり1Fのみ12秒台が1レース。最初のレースこそラップに乱れがあったが、残りの5レースは傾向が似通っている。
そして全レースに共通すること。これを見落としてはいけない。最後の1Fに最も、ラップを要しているのだ。シンプルにいえば、消耗戦にならざるを得ない。スピード勝負の6F戦だが、実際は違う。(1)数字以上に前半に脚を使わされている。(2)下り坂のセーブが開幕当初よりゆるめになり、スピードに乗って急坂へ。(3)急坂で勢いが鈍る。(4)残り200mで盛り返すことが可能。(5)残り200mに勝負をかけるスタイルもあり。
ポイントをこの5つに分けてみたい。先行勢については(1)+(3)の影響で、手応えほど伸びきれない馬が目を引く。それでも力量があれば(4)が加わるケースがある。最も無難なのは好位組だが、中途半端な結果に終わるのもこの位置取りが多い。小出しに脚を使ってしまい、うまく脚がたまっていないのだ。届きにくい印象を持たれがちだが、中団よりやや後方。このポジショニングが最も、Vロードを突っ切りやすいのではないか。
(1)の段階では、自分のリズムを守るだけ。抑える競馬になれているため、(2)と(3)の対処がうまい。となれば、脚を残した状態で最後の200mに挑める。(5)のスタイルを貫く場合は、勝利をつかむのはやや厳しいか。それでも馬券圏内に入ってくることは十分に考えられる。6つのサンプルは条件戦。しかしながら、クラスはバラエティに富む。考慮すべき材料としては満たされている。すでに見えているこの部分に、あとは見えていない面を補う作業が必要になる。
つまり、オープンの戦い。それもGIという、頂上決戦であるという事実だ。結論から入らせていただく。ひとつは、1400mをイメージして予想に向き合うこと。そして、もうひとつ。型にはまった強さを持つ馬を狙う。ハイレベルのメンバー構成。それだけに道中で費やすスピードは相当なもの。なおかつ、勢いで急坂を越えるパワーもある。最後の200mにすべてが凝縮される。僕はそう考えている。
ジョーカプチーノを本命に推す。恵まれ過ぎているスピードに隠れがちだが、その速さの持続力はすさまじい。その証明が、逃走劇を打ったときの二枚腰。追い込みに徹したときの破壊力。このふたつにあふれている。普通に発馬を切れば、ポジショニングは前、ということになるだろう。先陣を切る馬を視野に入れながら、追走する形が可能だ。差しに回った場合は、自分のリズムを刻むことが可能。道悪でもあきらめることなく、ステッキに応えた前走は、確実に今回につながる。
まして、内田が続けて手綱を取る。こういうクセのあるスピードスターを扱うためには1度目より2度目。前回の感触がてのひらにしみ込んでいるに違いない。忘れてはならないのが、マイルのGIホースということだ。同世代同士とはいえ、広大な東京の1600m戦を制している。さらに、昨年のシルクロードS。58kgのトップハンデをものともせず、外々を回って内の集団をひと飲み。さらに外からきた2着馬を封じたV劇がある。
6F戦ながら上がり勝負。負担重量が最も響く状況をクリアして、メンバー最速の上がり32秒6で突き抜けた。容易にはできない芸当といっていい。数字だけなら強烈な反応の良さを見せたように映るが、ジョーのそれはあくまでスピード持続型。だからこそ、新装・中京の1200m芝コースにジャストフィットする。
前走で得たものは多い。新しい武器が増えたと表現してもいい。急坂を越え、ラスト200mをフルに使い、勇ましくフィニッシュラインを先頭で突っ切るのはジョーカプチーノだ。スプリンターは天分に占められた馬が多く、クラスの壁を楽々と突破していくケースがある。ロードカナロアはまさにその典型で、挫折を知らずにこの場所までやってきた。
休み明けで、初の古馬相手。外々を回って楽勝したのが3戦前。2戦前は先陣を切ることも可能なほどのスタートを切り、速やかに控える。この従順さが素晴らしい。前走では馬群でもまれ、初めて位置取りが悪くなった。それでも抜け出す瞬間の速さは、自身最高といっていいほど。一戦ごとに進化を続けている。これは頼もしい。
今回のポイントは、全体的にメンバーが強化されていること。そして、中京コースに変わる点に尽きる。京都コースを中心に、直線が平たんな馬場で瞬発力を生かしてきた。それも、スプリンターの素質馬特有の内容でだ。アップダウンがある舞台で、57kgを背負う。反応の良さで勝負する傾向が強いことを考慮すれば、ここはまさに正念場だろう。
ツルマルレオンは自分の型をしっかりと持つ。前走は16kg減。それでもいくらか余裕が残るシルエットを見せていたように、上積み十分。骨折明け3戦目で、末脚を存分に生かすことができる舞台にチェンジ。前進だ。そのほかでは、3頭をチョイス。サンカルロは追い込み型だが、いい脚を持続できる時間は短い。外枠は懸念材料でも、堅実さで肉薄。カレンチャンは昨秋と比較して、体の張りがもうひとつ。地力に期待したい。メリハリの利いた立ち回りができるサクラゴスペル。左回り、コース形態とも合っている。