ふと気になって、今年の開催を1月まで遡り、改めて調べてみた。重賞勝ち馬の生産牧場(生産地)である。すると以下のような結果になった。
1月5日京都金杯……マイネルラクリマ(新ひだか町・武牧場)
1月5日中山金杯……フェデラリスト(千歳・社台ファーム)
1月8日シンザン記念……ジェンティルドンナ(安平町・ノーザンファーム)
1月9日フェアリーS……トーセンベニザクラ(日高町・エスティファーム)
1月15日日経新春杯……トゥザグローリー(安平町・ノーザンファーム)
1月15日京成杯……ベストディール(千歳・社台ファーム)
1月22日平安S……ヒラボクキング(浦河町・辻牧場)
1月22日アメリカJCC……ルーラーシップ(安平町・ノーザンファーム)
1月28日シルクロードS……ロードカナロア(新ひだか町・ケイアイファーム)
1月29日京都牝馬S……ドナウブルー(安平町・ノーザンファーム)
1月29日根岸S……シルクフォーチュン(新冠町・中地義次牧場)
根岸Sはシルクフォーチュン快勝(撮影:下野雄規)
1月分はここまでである。金杯に始まった今年の重賞は、1月だけで11競走あり、社台グループの各牧場が6勝に対して、それ以外の生産馬が5勝であった。注目すべきは、開催週(1月5日を除くと土日)のうち、必ずどこかで社台グループの生産馬が重賞を制していることである。
この傾向は2月になっても変わらず、次のようになる。
2月の1週目は、小倉大賞典、きさらぎ賞、東京新聞杯の3重賞が行われ、エーシンジーライン、ワールドエース、ガルボがそれぞれ勝利を収めた。ワールドエースは周知の通りディープ産駒のノーザンファーム生産馬だ。
2週目はクィーンC、京都記念、共同通信杯の3重賞で、勝ち馬はヴィルシーナ、トレイルブレイザー、ゴールドシップの3頭。ヴィルシーナは“大魔神”佐々木主浩氏所有でノーザンファーム生産馬である。
3週目にはダイヤモンドSとフェブラリーSの2つだけで、ケイアイドウソジンとテスタマッタがそれぞれ優勝した。ケイアイドウソジンは新冠町(村田牧場生産)、テスタマッタは米国産で、初めてこの週で社台グループ生産馬が重賞勝ちを逃したことになるものの、同馬の馬主は吉田和美氏。ほぼ社台グループの勝利と見做してよかろう。
4週目はアーリントンC、阪急杯、中山記念の3重賞が行われ、ジャスタウェイ、マジンプロスパー、フェデラリストがそれぞれ勝った。フェデラリストは千歳・社台ファーム生産馬。またジャスタウェイは、浦河町・白老ファーム生産馬である。これはおそらく白老ファームから繁殖牝馬が浦河町内のどこかに預託されて、そこで生産されたものと推測される。
レディアルバローザ中山牝馬S連覇(撮影:下野雄規)
3月に入ってすぐの1週目。チューリップ賞、オーシャンS、中日新聞杯、弥生賞の4重賞のうち日高産馬が3つを制する健闘を見せた。社台グループはこの週、オーシャンSのワンカラットのみに終わった。
2週目。阪神SJ、阪神FR、中山牝馬Sの3重賞が行われ、バアゼルリバー、アイムユアーズ、レディアルバローザがそれぞれ優勝した。白老ファーム、ノーザンファーム、そして新ひだか町のケイアイファームが生産者である。
3週目はファルコンS、フラワーC、阪神大賞典、スプリングSの4重賞。ファルコンSのブライトライン以外のオメガハートランド、ギュスターヴクライ、グランデッツァはいずれも社台ファーム生産馬という「固め打ち」の週であった。
4週目。毎日杯、日経賞、高松宮記念、マーチSの4重賞。ヒストリカル(ノーザンファーム)、ネコパンチ(浦河町・大道牧場)、カレンチャン(社台ファーム)、サイレントメロディ(社台ファーム)が勝ったが、日経賞は12番人気ネコパンチの大逃げがまんまと奏功し、単勝167倍もの万馬券となった。ルーラーシップが1.4倍の圧倒的1番人気に支持されており、もし順当に決まっていたら4重賞すべてが社台グループに制覇されるところであった。
以上、見てきたように、3月末までの時点で、2月3週目を除くすべての週で社台グループ生産馬が重賞勝ちを収めている。しかも春のGIが近づくにつれ、3月には15重賞のうち9つが同グループ生産馬により占められている。
もはや手の打ちようがないほどの“格差”を見せつけられている印象が強いのだが、それでも4月に入り、大阪杯、ダービー卿チャレンジトロフィーの2重賞が行われた先週は、久々に日高産馬が“独占”した。
ショウナンマイティ(新ひだか町・矢野牧場)、ガルボ(様似町・高村伸一牧場)ともにマンハッタンカフェ産駒というあたりが今風ではあるが、種牡馬ランキングに関してはさらに“寡占”傾向が強まるはず。
ハナズゴールの父オレハマッテルゼ
今週末はいよいよクラシック第一弾の桜花賞である。今のところ社台グループ生産馬と日高産馬は9頭ずつの出走になりそうだが、日高ではサウンドオブハート、ハナズゴールあたりに期待がかかる。
とりわけ、馬主も異色ならば、血統もまた渋いハナズゴール(父オレハマッテルゼ、母父シャンハイ)が、圧巻の脚を見せた前走のチューリップ賞の再現となるかどうかが注目される。
折から繁殖牝馬の交配シーズン真っただ中で、ハナズゴールの結果次第ではオレハマッテルゼの交配頭数にも大きく影響を与えそうな気配だ。その意味でも注目したいと思う。