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皐月賞をもぎ取る!

  • 2012年04月13日(金) 20時00分
 ダービー、菊花賞と大きく違う点がひとつ。それは、強い馬が勝ち損ねる可能性が前記2つより高い、ということだろう。コーナーが4つで、直線が短い。小回りに近い中山でフルゲートの激戦となるのだから、当然かもしれない。表現を変えれば、いかにこのステージに合っている馬をチョイスできるか。そこに焦点を絞り、アプローチすべきだと思う。
 
 発馬地点は4角に近い。つまり、スピードに乗って急坂を駆け上がり、最初のコーナーに向かうことになる。この部分が大きなポイントだ。例えば、同じ中山でも1800mの芝コースはどうか。200m違うだけだが、こちらはゲートの位置が坂に近い。いきなり急坂が待っているわけである。勢いをつけて1角に入る形は同じでも、スピードに乗るまでそれだけ時間を要する。対象的に、2000m戦は最初のカーブまでの距離が長い。ましてクラシック。前哨戦のように緩やかなペースにはまずならない。本番という事実はもちろん、最初のコーナーまでに距離があること。これが、皐月賞では重要なウェートを占める。

 前哨戦との関係に触れてみよう。古馬のそれとは、別物と考えていい。本番への出走権利をかけて戦うため、クラシックのトライアル戦はペースが遅くなりやすいのだ。慎重に、脚をためながら進む。それだけ、先行勢のペースは上がりにくい。馬群が密集することになり、結果として内々を回った馬が有利に。内枠の馬が権利を獲得することが多い要因だろう。

 皐月賞の主要トライアルは、弥生賞とスプリングS。この図式は昔から変わりない。2つのどちらに有力馬の参戦が多いのかー。まず、その力関係の把握が大切になる。

 本番と同じ舞台で争われるのが、弥生賞。緩やかなペースになり、今年はとりわけ内枠有利の流れになった。権利を取った上位3頭の馬番は5、2、4。すべて内々で流れに乗り、1番人気のアダムスピークは12番で、もまれ込んで不利もあった。

 スプリングSは例年、内枠有利が顕著である。過去10年で、真ん中より外の枠で勝った馬は4頭。上位馬は内枠の馬が多いが、半分近い4頭が勝利を収めているとも考えられる。02年タニノギムレット、03年ネオユニヴァース、06年メイショウサムソン、09年アンライバルド。のちの2冠馬が2頭。ダービー馬、皐月賞馬が1頭ずつ。実に豪華なラインナップだ。当時、当欄で書かせてもらった。この馬は間違いなくクラシックを勝つ。そう判断すれば、枠順にこだわらない。

 それもまた、トライアル戦攻略のポイントだろう、と。同時に、今年の3歳世代でNo.1の潜在能力を持っているのはグランデッツァではないか、とはっきり記した。それでいて、成長途上の印象と大外枠のセットを懸念。対抗という煮え切らない評価をして、完勝劇を目の当たりにした。自ら主張しておきながら、何をしているのか…。猛省をするとともに考えた。出走馬1頭1頭に抱いてきた、これまでの評価を。原点に戻る。それがベストだ。

 グランデッツァを推す。前走を引きずっているわけではない。過去5戦の質の高さを改めて感じるとともに、ここ2戦の内容は歴史に名を刻むのにふさわしい。ラジオNIKKEI杯2歳Sと、スプリングS。昨年の2歳戦で最も高いレベルのメンバー構成で行われたのは、前者だと認識している。そして、今年の3歳戦で一番、強力な面々が顔をそろえたのが後者だと。

 前々走は筋肉痛明け。発馬で1馬身のビハインドがあり、常に外々を回る形だった。加えて、押し出される格好で早めに進出。外にもたれたのも、臨戦過程とレース展開の苦しさによるものだろう。勝ち馬に内を突かれ、2着馬には外から強襲された。3着とはいえ、中身は実に濃い。まして、坂の手前まで鞍上は追い出すことを我慢しているのだから。前走Vは、充電期間の成長を余すところなく伝えてきた。行きっぷりがいいうえ、大外を楽な手応えで追走。4角手前から勝ち馬にはられながら、まったくひるむところがない。急坂を上がってあっさりと差し切ったように、ポテンシャルは極めて高い。過去5戦、すべてがコーナー4つのコース。これは皐月賞において、かなりの強調材料になる。

 今年のクラシックロードの図式は、牡馬も牝馬も明白だ。ディープインパクト産駒か、それ以外か。桜花賞は、ディープ産駒がワンツーフィニッシュ。これは阪神のマイル戦という舞台設定が大きく影響したと考えられる。コーナーが2つで、直線が長い。京都の外回り・1600m、1800m戦と、阪神の同条件におけるディープ産駒の良績は際立つ。対象的に、コーナーが4つで直線が短い2000m戦になると、その信頼度は落ちる。自在性があり、折り合いの不安がない。コース設定とレーススタイルから考慮しても、グランを中心視するのは妥当だろう。ストライドが大きい。能力が一枚上という観点に立てば、18番枠はむしろ流れに乗りやすい。

 相手はアダムスピーク、ディープブリランテ、ゴールドシップ、ゼロス、シルバーウエイブ。

 アダムにとっては、2番枠が最高の追い風になる。ディープインパクトの産駒としては珍しく、正攻法でレースを運ぶ。だからこそ、前走のように外枠と緩いペースが重なると厳しいのだ。スピードとパワーのバランスが良く、反応がいい。2戦目でG奪取に成功したときと同じ馬番を獲得して、さらに怖い存在になった。
 
 掛かると言われるディープブリランテだが、僕は違う印象を持っている。この父の上質な産駒は総じて、その傾向が強いように言われる。それは、スピードがあまりに豊富だからだと解釈している。父同様に小柄、あるいは中格馬が多い。そのため後方で折り合いをつけるタイプが目を引くが、ブリランテは大型で、パワーもケタが違う。結果として、前へ前へと行ってしまうのだろう。休み明け3戦目で、本番。落ち着きがまして、肉体のレベルは逆に上がっている。過去2戦より明らかに警戒が必要だ。
 
 ゴールドシップは、スピードの持続力が素晴らしい。イメージ以上に器用さもある。ただ、共同通信杯から直行というローテーションがどうなのか。気になるのは、その点だ。同型馬・メイショウカドマツが4番枠を引いた。それでも16番枠のゼロスの方が、先陣を切りやすいのではないか。前走で、自分の形を取れていない。騎手の意気込みが上回るうえ、周囲は差し組が居並ぶ。先頭に立ったときのこの馬は、実に豪快なフットワークを見せる。そして、容易には止まらない。
 
 シルバーウエイブは上昇一途。粗削りで、道中でも遊んでいる。それでいて、涼しい顔で差し切ってしまう。能力の高さは並ではない。成長途上を承知のうえで、注目したい。

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1992年から2010年までスポーツ新聞社で中央競馬を担当。ラジオ関西・競馬ノススメ(毎週土曜16時30分〜17時)にレギュラー出演するなどフリーランスで活動している。

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