今、もっとも注目されている若手騎手といえば、4年目の松山弘平騎手と3年目の川須栄彦騎手。今月はおふたりに登場していただき、さまざまなことを聞いていきます。1回目はお互いが騎乗し、川須騎手が重賞初制覇を成し遂げた小倉大賞典を回顧してもらいます!
――松山騎手は3月の中日新聞杯(スマートギア)、川須騎手は2月の小倉大賞典(エーシンジーライン)で重賞初制覇を成し遂げました。やはり、おふたりにとっては、これらのレースがベストレースですか?
川須 よく聞かれますけど、この質問に答えるのって、すごく難しいですよね。
松山 勝つときは、だいたいが上手くいったときだから、ひとつだけ選ぶのは難しいよね。
川須 大舞台で勝ったら、言えるのかもしれないですけど…。逆に他の人のレースだったら、ありますよ。岩田さんの桜花賞とか、内田さんの皐月賞もすごかったですよね。あと、松山先輩の中日新聞杯!
松山 ありがと〜(笑)。
川須騎手は小倉大賞典で重賞初制覇
――スマートギアもエーシンジーラインも、小倉大賞典のときが初コンビだったわけですが、最初の印象はいかがでした?
川須 エーシンジーラインは1度だけ調教で乗ったんですけど、乗りやすい馬だなって感じました。クセも以前乗ったことのある人に聞きましたよ。
松山 僕はぶっつけ本番でした。跨ったときの印象は、いい馬だなと感じましたね。
――実際、レースのときは何を考えていたんですか?
川須 枠と距離を考えると、僕のかオースミスパークのどちらかが行くことになるだろうなとは思っていました。ただ、最初から行く気はなくて、2番手でもいいと考えていましたね。小倉の1800mはスタートしてすぐにコーナーなので、とりあえず最初のコーナーまでは主張して、それでも相手がきたら向正面でゆずってもいいかなと。実際、一番スタートが良かったので、ハナに行けましたし、相手も無理にきませんでしたからね。離してはいましたけど、エーシンのリズムで気持ち良く走れていました。
松山 僕の馬は、重賞で追い込んで2着にきたこともある馬ですから、最初は後方からのイメージが強かったんです。ただ、ゲートを出てみないとわからない部分もあったので、スタートが良ければ無理に控えなくてもいいかなと思っていて。実際、ポンっと出てくれたので、そのままの位置でジッとしていました。
――相手はどの馬だと思っていました?
川須 コスモファントム(1番人気)や、エクスペディション(2番人気)ですね。瞬発力勝負だと分が悪いので、3コーナーで後続を離してはいましたけど、自分から動いていきました。
松山 僕はその人気馬2頭の近くにいたんですよね。3〜4コーナーのあたりは、結構内が悪くて、みんな外を回ってくれたんですよ。だから、内がポッカリ空いていたので、そこを突いていきました。
川須 前のレースで(藤岡)康太さんが人気薄の馬を2番手から押し切ったんですけど、そのときに康太さんが内から2頭目のところを通っていたんです。だから、僕も内から1頭分空けたところを通って、あとは、どれだけ粘れるかなという感じでしたね。
――結局、そのまま川須騎手のエーシンジーラインが逃げ切り勝ち。松山騎手のスマートギアは内から突っ込んできましたが、クビ差の2着でした。川須騎手は松山騎手が迫っていたのに気づいていましたか?
川須 松山先輩だってことはわかりませんでしたけど、ゴール後に横を見たら、松山先輩が二ターってしていました(笑)。
松山 えっ、覚えてない…。笑ってた?
川須 笑ってましたよ。
松山 うわーっ、あとちょっとやったのにー!とは思ったけど…。
川須 笑ってましたって(笑)。
まずはエーシンジーライン軍配
松山 たぶん、川須がゴールした後に、「ヨッシャ―!!」って叫んだから、イラっとしたのかも。笑ったのは、本当に記憶にないよ(苦笑)。本当に悔しかったなぁ。先を越されたというより、直線で、もしかしたら勝てるんじゃないかと思ってしまって。接戦だったわけではないけど、自分の中では中日新聞杯のときよりも、気持ちが高まったレースだった。もう必死になりすぎて、追い方がバラバラになったのがね…。川須もだけど。
川須 僕も残り100mくらいで、「いけるんじゃないか!?」と思って、必死で追っていました(笑)。
松山 正直、あの時は「止まれっ!」って思ったよ。僕の馬もそれほど伸びていたわけではないけど、他の馬も止まっていて、あとはもう粘り込み勝負みたいな感じだったし。
川須 だけどスマートギアは、次は勝つんじゃないかなと思いましたよ。松山先輩もそう思ったんじゃないですか?
松山 うん、思った。自分の中で結構反省点があって、道中、少しハミを噛んでいたし、そのぶん、3〜4コーナーでズブさを見せていたからね。それさえ上手くやっていれば、もっとキレる馬だと思ったから。正直、次の中日新聞杯のときは、川須の乗るエーシンジーラインには負けたくないと思っていたんだ。