左回りという形態に目が向きがちだが東京マイルコースの本質は別。向こう正面の長さ。それをつなぐ緩やかなコーナー。そして直線。つまりストレートコースでどこまで踏ん張りが利くか。スピードの持続力。瞬発力。二枚腰。器用さはあまり必要ない。むしろ粗削りな方が魅力になる。まして3歳馬同士。小さくまとまった存在より、たったひとつでも強烈な武器を持った馬が強い。
差し・追い込み型が良績を残しているのもその証明だろう。逃げ切ることは至難の舞台。前残りの流れでも2、3番手の馬が交わし切る。過去10年でハナを切った馬の最高着順は03年の5着。勝ったウインクリューガーは2番手から抜け出しているが、レースの上がり3Fは36秒4。前半3Fが34秒1だからペースは差し馬向き。勝ち馬の二枚腰が勝った形だった。
これはひとつの例。10年の勝ち馬ダノンシャンティのように16番手からの強烈な追い込みVもある。このときは前半3Fが33秒4という、過去10年でも際立った激流。1分31秒4のレースレコードは今後も破られないのではないか。
超ハイペースが下地にあるとはいえ、追い込んでこれだけのVタイムを刻むことは能力が図抜けていたからこそ。1番人気に支持されていたのも分かる。前出のウインは9番人気。小雨での戦いだった。これ以外でも雨中の決戦は3回ある。
07年に17番人気のピンクカメオが勝ったときもそうだ。天気予報とにらめっこ。そういう戦いの場でもある。
完成された古馬が中心の安田記念と違い、同世代同士。脚質が定まっていないことや臨戦過程の幅広さが難解さに拍車をかけている。その年によって前哨戦それぞれの差が大きいの特徴でもある。どのレースを主流にして組み立てていくべきか。マイルC解決において最も重要視すべきなのはその点ではないか。
トライアルであるNZT。本番に直結しない時代が続いたが06年以降は3勝。2着2回、3着3回。これも数字だけを鵜呑みにはできない。ポイントはそのひとつ前のレースにあるのだ。06年以降のNZT組の連対馬5頭のうち、前走でスプリングSを使われた馬が2頭。弥生賞を使われた馬は1頭。
つまりクラシック路線のステップ戦を経験してい広大な府中のマイルでの頂上決戦。1800?~2000?戦の経験がいかに大切かが分かる。
その糧を生かして前哨戦をパス。そして本番に向かうことができれば理想的ということだろう。
それを裏付けるのが毎日杯組の勝率の高さ。過去10年で8頭が参戦して4勝。2着も1回ある。このハイアベレージはどうだ。とりわけここ4年は2勝、2着1回。改修されて以前の2000mから1800mに変更されている。距離は短くなっているがコーナー2つの外回り戦にチェンジ。舞台はむしろハードになった。厳しいコース設定をクリアしている事実はダイレクトにGIステージにも結びついている。
最後は枠順。広いコースということもあり基本的に内と外で有利不利の傾向はない。ただ過去10年で7枠に入った馬が4勝。2着2回。7枠が幸運を呼ぶ回数が多いことは覚えておきたい。
以上の観点からジャッジすると、最も注目すべき存在はオリービンということになる。1800m戦で勝利を挙げた実績を持ち、前々走は懐の深い阪神の1600m戦でV。3着に敗れた前走では唯一、外枠発進で掲示板に載った。クラシック路線での実績こそないがキャリア8戦の中身は濃い。さらに当レースと相性のいい7枠を引き当てた。これも追い風と考えていいだろう。
そのほかで気になるのは5頭。
マウントシャスタは高い勝率を誇る毎日杯組。キャリアが3戦以下で3着以内に入った馬は過去10年で1頭もいない。不安材料はそれだが粗削りな面は魅力にあふれている。激流が望みづらいメンバー構成だけにブライトラインの課題は今回も折り合いに尽きる。潜在するスタミナは中距離戦でも通用する。壁をつくりやすい枠順をうまく生かせれば好機が見い出せる。
カレンブラックヒルは過去3戦とも完勝。先行力があり、立ち回りもうまい。すべてコースの内々を通って無傷の3連勝。今回も内枠に恵まれたがその分、厳しい経験が少ないのも事実。その点がどうでるか。
マイネルロブストはクラシック路線を突き進みながら、常に折り合いというテーマを抱えてきた。これまで戦ってきたメンバーを考慮すれば今回は戦いやすい。距離短縮とともに強調材料は多い。スピード持続型で、当コースで好実績を残すシンボリクリスエスを父に持つアルフレード。体が引き締まって反応も良化。この距離も合うだけに一変が望める。