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梅田智之調教師インタビュー Part1

  • 2012年05月07日(月) 12時00分
4/1の大阪杯でGI馬3頭相手に、鮮やかな差し切り勝ちを見せたショウナンマイティ。自身初の重賞タイトルは、開業6年目の梅田智之厩舎にもたらした悲願の勲章でもありました。早くから高い素質を感じながら、あと一歩でクラシックに乗せられなかった悔しさ。逃したGIのチャンスは安田記念で。梅田智之調教師を直撃します。

『うちの厩舎の良い所』

:梅田厩舎、今年好調ですよね。勝ち星は去年の勝利数をもう上回っていて、先月のショウナンマイティの大阪杯では厩舎初の重賞勝利も。

梅田 :そうそう、今年調子良くてね。今朝も「好調の訳は?」って聞かれたんだけど…何でだろう? 人は変わってない、馬も去年いた馬でしょ。去年勝ち損ねて2着3着だった馬たちが勝ってくれているのはあるんだろうけど、じゃあ何で今年勝ち出したのかって言われたら…やり方も変えていないしね。それなら、何で去年は勝てなかったのかなって。

:去年は本当に2着3着が多かったですよね。結構みなさん、していることは同じだけど勝つ時は勝つって。


やり方は変えていない

やり方は変えていない

梅田 :調子良くても勝てない時はあるし、逆に「攻め馬もいまいちだし、飼い葉も食べないし、あんまり具合良くないかな」って思っても、ハマって勝つ時もあるしね。だから何がいいのか分からない。ただ、2着3着でも去年のように連闘しないで、無理して使わないで我慢した結果が出たのはあるのかなって思うね。

:無理をしないで。

梅田 :そうそう。2着3着に来ても、「ちょっと疲れが出たから1回放牧に出そうか」とかね。その「無理しない」っていうのは、オーナーのご協力がないとね。

:そうですよね。もう一歩で勝てそうってなると、「調子いいんやろ」って思っちゃいますもんね。

梅田 :やっぱり「勝つまで使おう」って思いたくなるからね。そこを「あまり具合は良くないですし、もう1回行くことはできますけど、もう1回行ったら2回目はないと思います」っていう話をして納得いただいて。やっぱり同じ2着でも、具合が上がっている時の2着と、下降気味の2着では違うから。上がっている時ならもう1回使ってもそんなに疲れは出ないけど、下がっている時だと普段の倍疲れが残ることがあるんだよね。うちのスタッフもみんな、目先のことばかり考えないで、「今はあんまり状態が良くないから、1回放牧出して欲しい」って言ってくるしね。

:スタッフさんからも提案があるんですか?

梅田 :うん。うちの厩舎の良い所はそこなの。俺との壁がないというか。(西原)玲奈ちゃんとか3人攻め専がいるけど、俺に直接言いにくかったらその3人の攻め専を通して言ってくるしね。言葉が合っているか分からないけど、ワンマンではない。「どうや?」ってこっちから聞くし、助手も「テキ、今度の1600芝行くんやったら、1週延ばして1800ダート行こうや」「おう、じゃあそうしようか」とか。

:そこで「そうしようか」って言ってくれるのがあるから言えるんですね。


スタッフ1人1人と会話する

スタッフ1人1人と会話する

梅田 :言うよ〜。逆に言い過ぎるくらい(笑)。逆にこっちが「なあ、来週ここ使えるか?」って言うと、「まだ疲れが残っているから1週延ばして」「分かった、じゃあ1週延ばしていこう」とかね。厩舎のハナ前を歩きながら、1人1人と会話するよ。「どうや、これは?」「まだちょっと腫れてるな」、「こっちは飼い葉をよく食べてるし、中1週で行けるか?」「行けますよ!」とかね。やっぱり馬は、厩務員とか助手が1番分かるわけだから。見ている人よりも、乗っている人、触っている人の方が分かるから、その人たちの意見を尊重する。今までそうやってやってきたからね。

:スタッフさんを信頼されているんですね。

梅田 :うん、結構スタッフに投げるね。自分たちで考えてやると、責任を持ってやる。責任を持ってやるっていうことは向上心を持ってやるから、技術的にも絶対良くなるよね。それで結果が出なくても、馬主に謝るのが調教師の役目であってね。調教も、助手と厩務員が相談して決めているよ。「今日どこで追い切りやるの?」って聞くと、「ちょっと腰が悪いから下でやります」「今飼い葉食べないから、今週スルーして来週からやります」とか、そういう感じで。

:先生は最後に報告を聞くっていう感じですか?

梅田 :そうそう。朝厩舎に来て「今日どれ追い切るの?」とかさ(笑)。だいたいは任せている。まあ、たまに俺の方からも「この馬は下で長いとこビシッとやろうや」「休み明けやし、併せ馬で気合入れようか」って注文は出すけど、そんなことは言わなくても、みんなの意見が合っているというかね。


重賞初勝利で厩舎の雰囲気は?

重賞初勝利で厩舎の雰囲気は?

:その信頼関係の結果が、今の活躍なんですね。しかも重賞も勝って。みんなのテンションも上がりましたか?

梅田 :上がったね〜。厩舎で1頭走る馬が出ると相乗効果でって昔から言われるけど、ショウナンマイティが走ってくれたお陰で厩舎の雰囲気もさらに良くなったし、他にも毎週重い印の付く馬が1頭か2頭くらい競馬に出ているので、そうするとやりがいも出てくるしね。そうそう、この間祝勝会をやったんだけど、そこでもみんな和気あいあいとね。うちの厩舎、威張った年の人がいないから。

:そうなんですか。ベテランの方で難しい方がいると、そこで潤滑が悪くなったりしますもんね。先生のやり方は、お父様(梅田康雄調教師)から学ばれたことも多いんですか?

梅田 :それはない。だって、梅田康雄厩舎に入っていないからさ。厩務員、助手として西橋豊治厩舎に10年いたんだけど、西橋厩舎もそういう感じだったね。調教師が「これはCコース!」「明日この馬とこの馬で併せ馬!」とか、そんな感じじゃなくて、自分たちで考えてやっていたよね。(Part2へ続く)

◆梅田智之調教師と一問一答
Q.もうすぐダービーですね。関係者の方の思い出のダービーを聞いてみたいです。

梅田 :昭和56年のカツトップエースがすぐ出るんだけど、何でかって言うと、うちの親父のところの馬がそのダービーに出ていて。ダイタクプロスパアっていう馬なんだけど、家族全員で見に行ってね。今のダービーだと栗東で水曜に追い切って金曜日に輸送して使うんだけど、あの時のダービーは1か月くらい前から東京競馬場に滞在してね。あの時は28頭立てだったかな。

:えっ、28頭立てのレース!?

梅田 :そうそう。あ、1頭取り消して27頭立てか。小学校3年からずっと厩舎に住んでいて、毎週日曜日は競馬場に行っていたんだけど、その時のダービーのインパクトというか。人の多さとか、初めて行った東京競馬場の大きさに圧倒されてね。だからあのダービーは、断然印象に残っているね。

◆梅田智之
1969年4月20日、滋賀県出身。父はJRA調教師の梅田康雄。95年に競馬学校厩務員過程に入学。栗東・西橋豊治厩舎の調教厩務員、調教助手を経て、06年に調教師免許取得。翌07年に栗東で開業。同年4月7日の阪神5R、メイショウハナミチで初勝利。12年、ショウナンマイティの大阪杯で念願の厩舎重賞初勝利を挙げた。通算成績は1310戦78勝、うち重賞1勝(4月30日現在)。

◆復帰のご挨拶
☆皆様のご協力のおかげで復帰させていただきました。これからはママ目線もプラスしてより楽しいインタビューをお届けできたらなと思っています(*^_^*)東奈緒美

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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