日本最長ダート重賞としてもお馴染みの大井記念(2600m)。今年もバラエティーに富んだ好メンバー16頭が集結しました。
中でもフリオーソの半弟トーセンルーチェ(船橋・川島一厩舎)がここ最近の実績では一歩抜けた存在でしょうか。「フリオーソを大きくしてのんびりさせた感じがトーセンルーチェ」とよく例えさせてもらうんですが、栗毛の色合いも微笑ましいくらいにそっくりだと思います。この2頭が生まれ育ったハシモトファームさんに、とねっこ時代のお話しを聞いたことがありました。

トーセンルーチェとフリオーソ(奥)
「フリオーソは最初から垢抜けしていてスッキリ見せていたんですが、トーセンルーチェのほうは頭も脚もすべてがゴツイって感じでしたね(笑)。1歳秋で500キロは超えていたと思いますよ。性格はおとっとりしていて、ヤンチャをするのにも行動がのんびりしていたことを覚えています」(橋本場長)
そんなトーセンルーチェも今や立派な重賞ウイナー。今年に入ってから3戦を消化し、報知オールスターC3着、金盃優勝、ダイオライト記念3着と、どんな相手とでも崩れない安定さが光ります。
もともと素質の高さに定評がありましたが、背中やトモなどに違和感があって、マサカズ厩舎流に入念なケアを施してきました。その甲斐もあり、スタートの出が良くなっていい位置に取りついていけるようになり、さらには「金盃くらいから気合い乗りも良くなってきた」(張田京騎手)ということで、苦しいところを取り除いてあげたことで走りもしっかりしてきました。まだまだ上に行ける逸材と関係者の期待も大。

気合い乗り良好、トーセンルーチェ
今回は2か月ほど間隔が空いていますが、これまでの疲れを取りながらじっくり調整ができているそうです。本追い切りはいつもそんなに動くほうではないんですが、「こいつの追い切りレコード!」(大石厩務員)というくらいの力強い走りを見せました。
「いい脚を長く使えるしスタミナのある馬。ハミを抜いて走るようなタイプだから折り合いも心配はないし距離はこなしてくれると思う。去年より馬が丈夫になって窮屈なところがなくなってきたのは大きいね。代表馬になれるような存在になってほしい」と川島正一調教師。
この後は帝王賞も視野に入れられていますが、ここは強い競馬をして、再び偉大なる兄と対決させみたいというのはかかわる人たちの希望でもあると思います!

もう1度重賞を、ボンネビルレコード

連覇がかかるマズルブラスト
ボンネビルレコードとマズルブラストの10歳馬対決もワクワクします。ボンネビルレコード(大井・庄子厩舎)は元気のない成績が続いていますが、ここでは戦ってきた相手も違います。
「もう一度重賞を取らせたいという思いは今も変わらないよ。長距離戦はスローペースになるのは必至だから真ん中くらいにはつけてほしいね。地力の高さに期待」(庄子調教師)
昨年の大井記念の覇者マズルブラスト(船橋・川島正厩舎)。馬っぷりや近走の成績を見ても衰え知らずと言いますか……。来年11歳になっても南関東の一員として走る権利はすでに得ています。調教ではいまだに行きたがる素振りを見せるなど気合い満々。「若い頃は怖がりなところがあったけど、今は周りの馬が暴れてもドシッとしていい意味でズブくなった。大人になってきた感じかな(笑)」とこれまでたくさんの名馬を作り上げてきた多田厩務員。
北海道→川崎→北海道→大井と渡り歩いてコツコツ力をつけてきたビービーガザリアス(大井・村上厩舎)。大井に転厩してからたった2度しか掲示板を外したことがない堅実なタイプです。南関東では重賞初挑戦!
「とても乗りやすく注文のつかない馬。好位につけられて終いは確実に伸びてくれる。そんなにヒケは取らないと思うし斤量差を生かしたい」とコンビを組む酒井忍騎手。

母仔制覇を狙うピサノエミレーツ
女傑ネームヴァリューを母に持つピサノエミレーツ(大井・松浦裕厩舎)。母は03年大井記念を制したこともあり、母仔制覇となるんでしょうか? ピサノエミレーツは自分から競馬をやめてしまうところがあるので、力を出せたらどれだけ能力を秘めているんだろうというのは関係者共通の思いです。今回はブリンカーを外して終いにかけるそう。一発を秘めています!
今年の報知グランプリカップで念願のタイトルホルダーに輝いたケイアイライジン(船橋・川島正厩舎)。その後の黒船賞は9着、準重賞ブリリアントカップではスタート直後に落馬し競走中止。大事に至らなかったのが不幸中の幸いで巻き返しは必至でしょう。折り合いが鍵を握るので距離延長はポイント。
担当の重鎮・向山厩務員はテラザクラウド(11東京記念)やカワノスパート(98大井記念など)、ハセカツトップ(92・94ダイオライト記念など)と数々の長距離重賞を制してきました。「長距離戦は得意だよ」(向山厩務員)とニッコリ。大ベテランがどんな馬の作りで送り出してくるのか興味津々。