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HBAトレーニングセール

  • 2012年05月23日(水) 18時00分
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 5月21日(月)、22日(火)の2日間にわたり札幌競馬場を会場に開催されたHBAとレーニンセールは、この時期らしい爽やかな気候の下、好天に恵まれて前年を上回る成績を挙げ盛況であった。

 結果をおさらいしておく。2日間を通じて上場頭数は181頭(牡115頭、牝66頭)、落札頭数は123頭(牡82頭、牝41頭)で、売却率は67.96%(牡71.3%、牝62.12%)である。売り上げ総額は7億922万2500円。平均価格は576万5036円(牡629万1036円、牝471万6036円)。上場頭数は前年比で34頭減だが、落札頭数は10頭の減少に止まったため、売却率は6%程度上昇した。

 また、総額も前年より4583万円ほど増加した。それに伴い平均価格も77万7141円アップした。数字の上では、まずまずの結果だったと言えるだろう。

クィーンロマンス2010

クィーンロマンスの2010

この日の一番時計を計示

この日の一番時計を計示

 最高価格馬は52番クィーンロマンス2010(父ケイムホーム、母クィーンロマンス、母父ティンバーカントリー、牡栗毛)の2940万円(税込)。販売申込者と所有者は新冠・(有)大作ステーブル。生産は新ひだか町・(有)稲葉牧場。

 この馬はいわゆる“オグリ一族”の血脈で、3代母は桜花賞馬のオグリローマン。その半兄はかのオグリキャップである。昨年秋のオータムセール(1歳)に上場され150万円で落札されており、その後、大作ステーブルにて育成され、本トレーニングセールに上場された。

 上場馬中、公開調教におけるタイムが最速(10秒97、10秒79)だったこともあり、お台500万円からのスタートだったが見る見る間に価格が上昇した。落札者は飯村孝男氏。

 2日間のうち、高価格馬は初日よりも2日目に多く出るのではないかとの予測が流れていたが、蓋を開いて見れば、上位価格馬3傑はいずれも初日の取引馬であった。

グレイスケープの2010

グレイスケープの2010

タイキランデヴーの2010

タイキランデヴーの2010

 次点は67番グレイスケープの2010(父アルデバランII、母グレイスケープ、母父サクラローレル、牡栗毛)の1995万円(税込)。販売申込者と所有者はクィーンロマンス2010と同じく(有)大作ステーブル。生産は新冠・三村卓也牧場。飼養管理者は(有)フロンティアスタッド。落札したのは森田藤治氏。

 3番目は83番タイキランデヴー2010(父サクラバクシンオー、母タイキランデヴー、母父スペシャルウィーク、牡栗毛)の1627万5000円。生産者・販売申込者・所有者は小泉学氏。飼養管理者は(有)大作ステーブル。落札は(有)ビッグレッドファーム。

 このように、とりわけ2歳トレーニングセールの場合は、上場馬ごとにさまざまな事情が異なるため、販売申込者と所有者、生産者、飼養管理者がそれぞれ異なるケースも少なくない。育成牧場が1歳市場で仕入れを行い、半年間かけて当該馬を育成調教し、トレーニングセールに上場させる場合もあれば、生産者が所有したまま育成牧場に預け、このセールに出す場合もある。

 また繁殖牝馬の所有者が、産駒を売るために、どこかの育成牧場に預けて上場させるケースなどもあり、複雑である。

 価格帯別では、昨年13頭いた落札価格1000万円以上の馬が今年は10頭にとどまったものの、逆に600万円~900万円台のクラスが34頭に達し、昨年の17頭と比較すると倍増した。400万円以上600万円未満では28頭。この価格帯に昨年は48頭がひしめていたが、20頭の減となった。

 なお税込200万円未満の落札馬は昨年17頭いたものの、今年はわずか2頭。さすがにこの価格では、1歳秋からの半年間の育成費用を差し引けば、馬代金はほぼ残らない。

 もちろん売れたとはいえ、全体の3分の1近くは主取りとなっているので、セール後の庭先では“たたき売り”せざるを得ないケースも続出だろうが、セールでは極端な低価格馬が少なかったのが救いであった。

タニノクリスタルの2010

タニノクリスタルの2010

 2日目には、146番タニノクリスタル10(父アドマイヤムーン、牡黒鹿毛)や162番ネイチャーガイド2010(父スペシャルウィーク、牡鹿毛)など、“大物”が上場され注目を集めたが、それぞれ4000万円、3000万円というお台付け価格で声はかからなかった。

 種牡馬別では、ケイムホーム産駒が5頭上場され完売する好成績で、最高価格馬を出したこともあって平均価格も1018万5000円と大台を超えた。

 また今年GIレースにハナズゴールを送り出し、注目度が上がっているオレハマッテルゼ産駒は6頭中5頭が落札された。平均価格は886万2000円で、種付け料(今年度は受胎確認後50万円)を考えたらかなりの高評価と言えるだろう。

 ところで、周知の通り札幌競馬場は今年度の開催終了後から大規模な改修工事に入る。来年度の開催は休止が決定しており、それに伴ってこのトレーニングセールも、来年どこで実施されることになるかまだ未定という。函館競馬場を借りるのか、日高のどこかに会場を移すのか、それとも仮設スタンドなどを設置してまたこの札幌競馬場で行うのか、ちょっと気になるところだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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