古い格言をひとつ。「府中の千八展開いらず」。逃げ馬の勝率が低い。脚質面に神経質になる必要もない。それだけほかのコースと比較してみて総合力が要求される。僕はそう解釈をしている。
2角の奥が発馬地点。1600m+200m。その考え方でいいと思う。安田記念が終わった翌週である。イメージとしては描きやすいはずだ。マイル戦で求められる瞬発力に加えて距離が延びている分だけ持久力がいる。例年ほぼ平均ラップで緩みがない。直線が長いため一瞬の切れ味で勝負するタイプは仕掛けどころが難しい。昨年の覇者ダークシャドウは持続力と瞬発力のバランスが絶妙である。当コースを制するうえでの理想形だろう。国内を代表する1頭で能力そのものが高いのであくまで参考対象として意識に置いておきたい。
東京の1600m戦は基本的にSS系の種牡馬の産駒が強い。その延長戦上での戦いということで今回も主流の存在となる。前出のダークシャドウはダンスインザダークを父に持つ。09年の勝ち馬シンゲン、10年の2着馬シルポートはホワイトマズルの産駒だがいずれも母の父がサンデーサイレンスである。父母のどちらもSSの血から目が離せないレースだ。
チョイスするうえで最適なのはディープインパクトの産駒ということになる。どのコースでも産駒は最上位を占めることが増えてきているが、とりわけ得意としているのが京都、阪神の1800m戦。コーナーが2つで直線が長い。持続力と瞬発力。双方を存分に発揮できる土台があればより強さが映えるというわけだ。3つのコーナーを回る当コースだが最初に曲がる2角はかなり緩やか。実質的にはコーナーを2つ回るという捕え方でいいだろう。ディープインパクトの産駒が持ち味を発揮しやすいコースのひとつと考えていい。
産駒で参戦しているのはトーセンレーヴとダノンシャークの2頭。母の父がカーリアンというところまで共通しているが外観はまるで違う。前者は胴が長くつなぎも長め。全体的にゆったりしたつくりである。後者は丸みのある筋肉に覆われ胴が短い。スピード持続型のトーセンと瞬発力型のダノン。2頭ともシルエットに違わぬ脚質だ。
どちらもマイラーズCをステップ戦に選択。内々を立ち回ったのは同様でも流れが明暗を分けた。逃げ馬と2番手につけた馬が同じ厩舎。ハイレベルなGII戦としてはペースが落ち着き4角では馬群がひしめき合う状態になった。上がり勝負に強いダノンは2着に食い込んだがトーセンは8着。平均的に脚を使ったことで展開にフィットする末脚を使うことができなかった。
東京の1800m戦に舞台が移ることで今回はトーセンレーヴを中心視する。スピードの持続力に優れておりコース形態も合う。水準以上の瞬発力も兼備しておりバランスの面でも優位に立つ。好位で脚をためる本来のスタイルで能力をフルに生かすことができるだろう。
ダノンシャークは1800m戦で3勝。未勝利戦と条件戦であり本質的には1600m戦より短い距離が合うように思う。騎乗する福永との相性の良さは無視できないが前走よりは信頼度が落ちる。
注目したいのはダイワファルコンだ。中山コースに良績が集中するがジャングルポケットの産駒である。本質的に東京が合っていないとは思えない。気性的に難しいタイプが多い同馬の産駒は器用さに欠けるケースがある。小回りに近い形態の中山の場合は、力が上なら勝負どころから一気に動いて押し切ってしまう競馬が可能だ。ワンパンチ足りないダイワの現状はオープンではその策が通用していないということだろう。忍耐力は増しており集中力も出ている。母の父はサンデーサイレンス。いまなら府中の舞台の方が合うのではないか。
コース形態がマッチしそうなレッドデイヴィス。血統背景と臨戦過程のいいシルクアーネストもおもしろい。過去10年で4勝しているのが新潟大賞典をへての参戦組。持続力に富む末脚を誇るメイショウカンパクにも注目したい。モンテエンはここ2戦で不完全燃焼の競馬が続いている。15番枠を生かしてスムーズな競馬が可能になる。