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宝塚記念を読む

  • 2012年06月22日(金) 20時00分
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 今回の舞台は阪神の芝2200m。京都の外回りや東京の広い馬場とは明らかに傾向が違う。内回りということで速い上がり時計が勝負の明暗を分けることはまずない。印象としては有馬記念が行われる中山の2500mに近いといっていい。3角から一気に攻防は激しくなる。瞬発力以上にスピードの持続力が要求されるコースだ。

 伏兵として名を連ねてきた存在にも好機があるのはそのためだ。過去3年の勝ち馬にも表われている。09年ドリームジャーニー、10年ナカヤマフェスタとステイゴールドの産駒が連覇。11年はグラスワンダーを父に持つアーネストリーが勝利を飾った。

 適性の守備範囲を広げているステイゴールド。それでも長い直線では伸び負けしやすい産駒が多い。勝負どころから一気に進出を図ることが可能な中山や当コースと相性がいいのはその脚質によるものだろう。切れ味より力で押す産駒が多いことでグラスワンダーも種牡馬として仁川の2200m戦に良績を残している。

 前年に好勝負した馬が翌年も活躍するのが特徴のひとつ。京都や東京で求められる軽快なスピードや瞬発力が宝塚記念においてはそれほど重要ではないということだ。

 過去10年の1~3着ののべ30頭のうち天皇賞・春から臨戦してきたパターンが10回。勝ち馬は3頭。ただし京都で行われた06年も含んでのもの。1着ディープインパクト、2着ナリタセンチュリーはいずれもこのステップだった。3200mから2200mへ。戦いの拠点は随分と異なるがそれだけこのステージがタフだという証明でもある。軽快さより重厚さ。瞬発力より持続力。レースの質として頭に刻んでおきたい。

 もうひとつの核を形成していた金鯱賞の施行時期が変更となり今年は鳴尾記念がそれに当たる。同じ阪神の内回り。距離も200m短い2000m戦でコーナーを4つ回る。前哨戦としてはこれまで以上に本番に直結しやすい可能性を持つ。共通項として引き続き採用したいのは着順だ。金鯱賞組は過去10年で6連対とハイアベレージ。その半数が勝っている。全6頭のうち5頭が金鯱賞そのものでも連対。唯一3着だったのが昨年の覇者アーネストリーだった。トゥザグローリー、ショウナンマイティにとっては今年の鳴尾記念の1、2着馬。データにおいていずれも有力な存在ということになる。

 帰国初戦組では07年にアドマイヤムーンが勝利。同レース、同日の4月29日以来という事実を考慮すればルーラーシップの臨戦過程も割り引きは必要ない。まして3着のアドマイヤと違いルーラーは凱旋だ。

 宝塚記念の最大の特徴として過去10年の勝ち馬はいずれも前走で3着以内という明確なのものがある。2着馬も05年のハーツクライ、06年のナリタセンチュリーを除いて3着以内。ハーツは5着、ナリタは12着からの巻き返し。いずれも天皇賞・春だ。ナリタは京都でのもので例外ではあるが悪化した馬場状態で脚を伸ばしている。前記したように伝統ある盾の舞台の経験が直結するタフなコース設定ということを後押ししている。

 今年のメンバー構成に目を移してみたい。シビアなラップをつくりだしそうな面々が居並ぶ。ビートブラック、ネコパンチは緩みのないペースを刻むことで味が出る先行タイプ。本来の積極策で挑むと思われるアーネストリーが2頭から離れての3番手か。トゥザグローリー、フェデラリストが好位をキープ。ナカヤマナイトも続く。
 
 ポイントを握るのはルーラーシップの位置取りだ。体力の強化と鞍上のスタイルから好位組の直後につける可能性が高い。オルフェーヴル、ウインバリアシオンはルーラーをマークして進む格好になるだろう。ペースに左右されることなくショウナンマイティは後方待機で勝負。

 淀みのないペース。加えて金曜の降雨のあとで土曜は空模様が回復傾向。日曜は荒れ気味の良馬場になりそうだ。

 中心にはルーラーシップを推す。心身ともに成長して成績にムラがない。晩成の母系らしく後肢に力がついてきた。推進力が増したことで戦法に幅が出てきたのは心強い。反応が良化しており大きなストライドに準じて大外オンリーの形にこだわる必要もない。縦長の展開が見込めることで勝負どころからロスのない進出が可能だろう。優れた末脚の持ち主だが高速馬場での上がり勝負ではやや分の悪さがある。その点でも当コースの現状は合う。舞台設定、展開、馬場状態と今回は強調材料がそろった。

 フェデラリストはスピードの持続力に長けており対応力に優れている。復調途上のオルフェーヴル。体調が良くなる一方で条件は好転するのだからここ2戦より怖い。持久力とスピードのバランスがいいビートブラックも警戒がいる。ナカヤマナイトは折り合いに不安のない流れが期待でき一気の浮上が望める。奥手の血が騒ぎ始めた感のあるウインバリアシオン。枠順もプラスだ。

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1992年から2010年までスポーツ新聞社で中央競馬を担当。ラジオ関西・競馬ノススメ(毎週土曜16時30分~17時)にレギュラー出演するなどフリーランスで活動している。

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