◆帝王賞展望
(6月27日 大井 サラ4歳以上 定量 JpnI 2000m)
帝王賞は、今年第35回目。当初南関東限定、距離2800mでスタートし、以後第9回(昭和61年)からJRA交流、2000mと改定された。その新生第1回優勝馬はトムカウント(船橋)。当時まだ中堅のポジションにいた石崎隆之騎手が、内ラチ沿いから見事に差し切り、それを契機に彼は、トップジョッキーの道をひたすら歩み続けることになる。
以後25年、いわく“四半世紀”だから、古いファンの方はさまざま思い出と感慨が浮かぶだろう。そして今回記者、ファイルをめくり返し改めてため息をついたのは、当時の地方馬が、かくも強かったかということ。
翌年優勝はテツノカチドキ(大井)、翌々年チャンピオンスター(大井)、さらに次の年は、フェートノーザン(東海)が安藤勝己Jを背に圧勝した。JRAダート路線が、まだ整備、確立されていなかったころの話ではもちろんある。ただそれから22年間、JRA=12勝、地方=10勝の成績は、こちらが“ホスト”“ホーム”である以上、やはり不満というしかない。
さて今年。一枚看板フリオーソが脚部不安で直前回避。その半弟トーセンルーチェ、兵庫の怪物オオエライジンの出走はあるものの、ごく客観的に“駒不足”の状況になってしまった。いつもの繰り返しだが、オープン馬(とりわけ牡馬の中~長距離型)の層を厚くすることが、急務であり絶対条件。交流Gとはやはり、JRA対地方、その“対決図式”が成立してこそ盛り上がる。
(1)…近年堅め。1番人気[4-2-1-3]、2番人気[1-3-0-6]、3番人気[1-1-4-4]の数字はともかく、近年大きな波乱はない。過去5年、馬複はすべて3000円以内。昨年は1→2→3人のワンツースリー。
(2)…JRA対船橋。JRA=6勝、2着8回、3着6回と優勢で、これに船橋=4勝、2着2回、3着2回と肉薄する。他は大井、川崎、それぞれ3着1度だけ。ただ今年は前述通り、船橋看板馬フリオーソが回避した。
(3)…熟年層。5歳=5勝、2着3と最も強く、次いで6歳=2勝、2着3回、7歳=2勝、2着1回。牝馬は過去10年[1-0-0-5]だが(15年ネームヴァリュー優勝)、南関東限定時代も含めると、34年間で4頭勝っている。
(4)…脚質広範。逃げ=5、先行=4、差し=7、追込4。好走馬の脚質は広範だが、逃げて押し切るケースは18年アジュディミツオー、昨年スマートファルコンなど抜けた力が必要になる。好位差しがやはり理想。
※データ推奨馬
◎テスタマッタ…円熟、完成期の6歳夏。過去好走例が多い(フリオーソ、カネヒキリなど)「ジャパンダートダービー」優勝馬で、当時同条件2000?を中団待機から直線豪快に差している。今季GI「フェブラリーS」快勝で再び旬。岩田騎手とコンビ[2-1-4-1]のハイアベレージ。
☆ ☆
◎ミラクルレジェンド 55内田博
○エスポワールシチー 57佐藤哲
▲ランフォルセ 57横山典
△トーセンルーチェ 57張田
△テスタマッタ 57岩田
△ゴルトブリッツ 57川田
△オオエライジン 57木村健
シビルウォー 57吉田豊
ミラクルレジェンドを狙った。JRA=地方を通じ現ダート界No.1牝馬。何より強調したいのは大井コース適性で、昨秋ラヴェリータを退けレディスプレリュード、JBCレディスと重賞連覇。それも後者は上がり35秒9、まさしく究極の末脚をみせ、大井千八=1分49秒6自体、何と30年ぶりのレコードだった。いったん射程内に入れた相手をけっして逃がさない切れとガッツ。一見分が悪くみえる対牡馬(JCダート6着など)だが、抜群の相性を誇る大井が舞台なら話は別とイメージしたい。今回内田博幸J騎乗にも、むろん大きなロマンが浮かぶ。
エスポワールシチー○(対抗)は、ごく素直に格と実績を評価した。未踏の3連覇となった前走かしわ記念。逃げたフリオーソの2番手から完璧な横綱相撲で、千六1分36秒5も今の馬場を思うと驚異的な速さといえる。文字通り見事な復権。船橋千六→大井二千をどう折り合うかだが、現実に昨年帝王賞、スマートファルコンの2着からは大きな減点も考えにくい。もう一つ、今回フリオーソ回避は、同馬にとって絶好の追い風だろう。大外(13頭・13枠)でも、佐藤哲J、おそらく迷いのない徹底先行。GI通算6勝、今回その総決算になるかもしれない。
ともあれ、記者個人的には、本質中~長距離型を思わすランフォルセ、トーセンルーチェにも気持ちが動く。仮に帝王賞創設時=二千八百が続いていれば、この2頭をそれこそ“マルチ馬券”の軸に据えた気がする。今回両馬とも、自身の能力と可能性を探る戦い。状態万全で臨むだけにそれぞれ持ち味は生かせるだろう。
テスタマッタ、ゴルトブリッツも、能力、適性(大井二千)からは何ら減点の根拠もなく、あとは流れしだい、折り合いしだいの結果と思う。もう一頭、兵庫オオエライジンは注目したい。園田11戦11勝。統一Gも昨暮れから2度挑戦、3、5着と十分メドがついている。大井は昨夏遠征・黒潮盃を完勝。キングヘイロー×リンドシェーバー。いかにも地方出身馬らしい“荒ぶる”ようなレースぶり、風格が印象的だ。
◆京成盃グランドマイラーズ回顧
(6月20日 船橋 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 1600m重)
(1)マグニフィカ 1分38秒9
▲(2)トーセンピングス 1
△(3)ディアーウィッシュ 1
△(4)ケイアイライジン 1/2
△(5)シーズザゴールド 2.1/2
………………
○(6)カキツバタロイヤル
◎(7)クリーン
△(8)ルクレルク
単2360円 馬複5770円 馬単12530円 3連複13850円 3連単163390円
マグニフィカが復活した。快調に逃げるトーセンピングスを2番手でぴったりマーク。向正面、3~4コーナー、そして直線、終始鞍上と呼吸が合った走りとみえ、いざ追い出しての反応も素晴らしかった。直線中ほど、相手をグイとねじ伏せ、余裕残しの1馬身差。同馬の実績、格からいえば、ごく当然の結果かもしれない。
ただ現実に2年ぶりの勝利である。この間、大きな故障も休養もなく、ただしかし[0-0-0-13]という大スランプ。その原因が記者レベルでは正直まるでつかめなかった。なぜトンネルを抜けられたか。潜在能力の高さ、鞍上の好騎乗、自身夏型と思えること。今時点ではひとまずそう納得した。
改めてマグニフィカの“GI”をおさらいする。一昨年夏ジャパンダートダービーをコスモファントム、バーディバーディ、ミラクルレジェンド相手に競り勝ち、当時アジュディミツオーの再来という評価もあった。卓越したスピードと競馬センス。大きなタイトルを獲得し順風満帆、以後2年間未勝利など、おそらく誰もが想像しない。
「馬の気持ちは難しい。久々に本来の力を出してくれた。今日は乗り役さんの腕もあったし、いいきっかけになってくれれば…」(川島正行調教師)
千通過60秒4、緩みのない流れで、千六1分38秒9なら軽い馬場を割り引いても水準以上(昨年ディアーウィッシュ=40秒8)。いずれにせよ同馬の場合、今後は再びGロード挑戦になるだろう。ポスト・フリオーソ。父ゼンノロブロイの背景からも、体調さえ整えば距離は問わない。本物の復活かどうか、そしてさらなる前進があるのかどうか。次走未定とされたが、少なくとも一転夢はつながった。
トーセンピングスは立派な2着。前走さきたま杯同様勝ちに行く競馬で、自身千六1分40秒1だから時計的にも文句ない。
「道中ずっと手応えがよく4コーナーではやったと思った。展開もイメージ通り。だから結果的に完敗ですね」(張田騎手)
対マグニフィカ。近況はさておき、この日は相手の底力が上回ったと判断する。3連覇をめざしたディアーウィッシュも昨年以上の時計で走り、結果3着は合格点といえるだろう。ただ同馬は今季8歳、テンの行き脚、最後の粘りとも全盛時と較べひと息で、緩やかな下降線といううらみはある。
期待したカキツバタロイヤル、クリーンは、ともにスタートが決まらず、道中後手後手に回ってしまった。台風の影響もあり当日11レース、4コーナー5番手以後の馬は1頭も連対していない。しばしば起こる、特殊、一過性の馬場状態。おそらく両馬とも状況しだいで一変する。とりわけ◎クリーンには、前々走船橋千六、その爆発力を震感した。適条件に出走できれば、改めて狙ってみたい。