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即戦力が揃う第2回産地馬体検査(村本浩平)

  • 2012年06月29日(金) 18時00分
 POG本の発売後、そしてドラフトの後ということもあるのか、めっきりマスコミの数が減る第2回産地馬体検査。会場にやってくる2歳馬の数も少なくはなっているが、入厩の都合などで2回目に回った馬も多い。また、具体的な入厩時期が決まっているだけに、1回目よりもメイクデビューで勝ち負けできそうな即戦力が揃っているとも言える。

 一日目となった浦河・BTC会場へ、真っ先に姿を見せたのが、6月10日に行われたメイクデビュー阪神で、ミヤジタイガ(牡2/岩元厩舎)が早々と勝ち上がった、チェスナットファームの育成馬たちだった。

 会場に姿を見せた広瀬代表が勧めてくれたのが、イエローパピヨンの10(牡2・父タイキシャトル/大竹厩舎)。調教での動きが目立っている馬で、父譲りと言えるスピードに加え、坂路も苦にしないパワーも兼ね備えているという。入厩時期は8月中旬を目処にしているが、ミヤジタイガと同様にこちらも初戦から勝負気配がしてくる。

 第2回産地馬体検査を受検した馬は、かなりの割合で札幌開催のデビューを目標としているが、その中からはシュウジディファームの育成馬であるホームウォードの10(牝2・父Rock Hard Ten/加用厩舎)を取り上げたい。早い時期からスピード能力の高さが目立っていたとのことで、その後も順調に調教を進められてきている。気性にはまだ幼さこそ残るとのことだが、それだけにレース経験を積みながら、真のサラブレッドとして磨かれていきそうな気もする。

 ゼロファームで育成されていたガイヤールの10(牡2・父クロフネ/中尾秀)も札幌開催でのデビューを目指す1頭。育成当初は緩かった体も乗り込み量につれてしっかりとしてきた。速い調教でもテンションが上がらないとのことで、折り合いの不安もなさそうだ。

 今年の皐月賞馬、ゴールドシップ(牡3・須貝)を育成したのが吉澤ステーブル。堅実かつ、確実に勝ち上がってきそうな馬としてスタッフが教えてくれたのが、ホウライホーセキの10(牡2/父サウスヴィグラス・相沢厩舎)。BTCの坂路ではハロ13秒代の時計を計時。仕掛けたときの反応もいいとのことで、短距離戦でデビューしてきた際は要注目の1頭と言えそうだ。

 浦河・BTC会場一の血統馬と言えそうなのが、ゴールデンジャックの10(牝2/父ダイワメジャー・加用)。母はクラシックシーズンにGIIレースを2勝し、その年のGIオークスでも2着。半兄には重賞3勝馬サイドワインダーの名前もある。

 春先、優駿の取材で育成先である山口ステーブルの山口代表に、馬を見せてもらいながらお話を聞かせてもらったのだが、その時よりも、馬体、動きともに更に良くなっているという。血統馬ということもあり、当初は先を見越した入厩も目されていたが、ここに来ての成長が著しく、入厩、デビューも当初の予定よりも早くなるかもしれないとのこと。指名された方には嬉しいニュースではないだろうか。

 同じ山口ステーブルで育成中のチアフルスマイルの10(牡2/父ジャングルポケット・中竹)は、GIIIキーンランドSを制した母の能力を受け継いだかのように、スピードが勝った動きを見せている。成長が著しく、更なる良化も見込めるとのことで、今後は牧場での乗り込みを続けていく。

 第2回産地馬体検査2日目、静内・HBA北海道市場の会場には、「Dr.コパ」こと小林祥晃さんの姿があった。そのコパさんから「この馬、楽しみなんですよ」と紹介してもらえたのが、小国ステーブルで育成中のコパノニキータの10(牡2・父ゴールドアリュール/村山厩舎)。バランスの取れた馬体は、垢抜けた印象があるが、動きには軽さも感じられるとのこと。見た目通りのパワフルがあり、この検査でも元気さが目立っていた、同じく小国ステーブルの育成馬であるイノチノアカリの10(牡2・父クロフネ/上原厩舎)と共に応援していきたい。

 6月17日のメイクデビュー函館を勝利したのが、昨年のGIII函館2歳Sの勝ち馬であるファインチョイス(牡3・領家)の全弟となるアットウィル(牡2・領家)。この兄弟2頭を育成したヤマダステーブルからは6頭が検査に訪れていた。

 その中でも同じ領家厩舎、何よりも血統背景からも注目したいのがエジードの10(牡2・父ディープインパクト)。山田代表からも、「調教でも動きが目立っていて、瞬発力はかなりのものがある」との言葉も聞かれていた。順調に来ているとのことで、次期に入厩の知らせも届くことだろう。同じくヤマダステーブルの育成馬では、ダンツクインビーの10(牡2・父マヤノトップガン/角田厩舎)が札幌開催でのデビューを予定。乗り味も良く、距離も持ちそうとのコメントも聞かれた。

 第2回の産地馬体検査ならではと言えるのが、社台グループ(社台ファーム、ノーザンファーム、ノーザンファーム空港)の育成馬が、静内会場に検査を受けに来る光景である。

 その中でも注目の存在となっていたのが、ゴレラの10(牡2・父ネオユニヴァース/矢作厩舎)である。今年のPOGでも話題の1頭となっていたが、その高い評価を更に高めた感も受ける。

 2か月ほど前に姿を見た時よりも、どことなく大きくなった印象を受けたが、「2週間ほど楽をさせたことで、その時よりも体高が出たと思います」とノーザンファーム空港牧場の育成スタッフ。はじけるような動きは相変わらずであり、予定されている札幌芝1800mのデビュー戦が、今から待ち遠しくなる。

 社台ファーム育成馬の中には、重賞2勝馬ハイアーゲームの半弟となるファンジカの10(牡2・父ダイワメジャー/藤原英厩舎)の姿もあった。東礼治郎調教主任は、「心肺機能の高い馬で、走りにも集中力がある。スピード能力も高い」とその能力を絶賛していた。

 同じく社台ファームのスタッフが絶賛していたのが、ブッシュファイアーの10(牝2・父ディープインパクト/国枝厩舎)。「スピード能力、反応の良さもそうですが、最も長所だと思えるのはその柔らかさ。クラシックに出走して欲しい馬です」と普段から騎乗しているというスタッフは笑顔を見せてくれた。札幌開催でのデビューが予定されている。

 その他にもノーザンファーム育成馬であるプロモーションの10(牡2・父チチカステナンゴ/橋田厩舎)、重賞4勝馬スーパーホーネットの半弟であるユウサンポリッシュの10(牡2・父アドマイヤムーン/栗田厩舎)、2年連続でNAR年度代表馬とあったアジュディミツオーの半妹となるオリミツキネンの10(牝2・父キングヘイロー/松田国厩舎)といった血統馬も、順調に来ていることを逞しくなった馬体から証明していた。

▼筆者:村本浩平
 1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。

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