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スパーキングレディーC展望&帝王賞・優駿スプリント回顧

  • 2012年07月03日(火) 18時00分
◆スパーキングレディーC展望
(7月4日 川崎 サラ3歳以上牝馬 別定 JpnIII 1600m)

 スパーキングレディーCは平成9年創設、翌10年から交流GIII昇格。同時に“ホクトベガ・メモリアル”とサブタイトルがつけられた。ホクトベガは生涯16勝、内9勝を地方競馬場であげたが、中でも川崎コースと抜群に相性がよく、3戦3勝、ことごとく別次元の強さで独走した。95〜96年エンプレス杯連覇は、それぞれ後続に18馬身、8馬身差、96年川崎記念は牡馬相手に5馬身差。女傑、名牝、それだけではまだまだ言葉が足りていない。

 本来芝コースも十分走れた(エリザベス女王杯制覇など)彼女だが、ダートの登竜門になったのはまさしく川崎競馬場。いち早く“冠レース”に準じた理由は、川崎競馬関係者の愛着であり、誇りであるといえるだろう。かつて中野隆良調教師は、ドバイで夭折、星になった愛馬ホクトベガに向け、「彼女の強さは永遠の謎である…」とコメントした。統一G11勝の偉業はもちろん、JRA、地方、そんな垣根やらテリトリーやらを一挙に取り払ってしまったのが彼女でもある。没後15年。月日の流れとは改めて速いと思う。

(1)…おおむね順当。1人気[3-3-2-2]、2人気[2-2-3-3]、3人気[4-1-1-4]。堅いというより“上位拮抗”で、過去10年、5番人気以下の連対は2頭だけ。昨年は2→3→1人気の順で決着。

(2)…JRA優勢。JRA=8勝、2着7回と断然リード。次いで、船橋=2勝、2着1回。リピーターがきわめて強い傾向で、ラヴェリータ3勝、レマーズガール、トーセンジョウオーがそれぞれ2勝をあげている。

(3)…新鋭注目。4歳=4勝、2着3回と最も強いが、3歳もレマーズガール、ラヴェリータが勝っており、力とコース適性さえあればいきなり通用。5歳、6歳は1勝ずつと案外不振で、それなら7歳=2勝、2着1回。

(4)…逃げ=5、先行=2、差し=11、追込=2。例年ハイペース、道悪のケースも多く、2〜3番手の馬が案外厳しい。ただ08年メイショウバトラーなど、それまで先行型とされた馬が、一転差す競馬で好走例もある。

※…データ推奨馬
 ◎レッドクラウディア…牡馬オープン相手の昇竜Sなどダート3勝の3歳馬。前走ユニコーンS大敗(11着)を大外枠と納得すれば、昨年アイアムアクトレス(1人気・3着)並みの期待がかけられる。父アグネスタキオンらしい切れ味が武器。軽量52キロ。内田博Jはこのレース=1勝、2着1回、3着2回。

       ☆       ☆

◎クラーベセクレタ 56戸崎
○ミラクルレジェンド 56岩田
▲レッドクラウディア 52内田博
△ミヤサンキューティ 55真島
△スティールパス 55蛯名
△プレシャスジェムズ 55武豊
△エーシンクールディ 55森
 リカチャンス 52東川
 トウホクビジン 55吉井友

 当初“すれ違い…”と納得していた対決が、思わぬ形で実現する。ミラクルレジェンドVSクラーベセクレタ。いうまでもなくミラクルは先週GI・帝王賞に挑戦し5着。通常このケースで連闘は考えにくい。帝王賞の結果しだい…、陣営にハナからそういう思惑があったかどうかは不明だが、いずれにせよ大井二千を力走後、中6日という事実は残る。予想記者としては、楽しみ半分、困惑半分が正直本音だ。

 ただ今回クラーベセクレタ◎は、そうした理由だけでもない。直接対決2戦2敗。確かに総合能力は一歩譲るが、決定的な5馬身差をつけられた初戦レディスプレリュード=千八と較べ、2戦目マリーンC=千六は1.1/2馬身差。直線早めに交されながらもう一度食い下がり、レース内容も格段によくなった。

 多分に癖があり(鋭角なコーナーなど)、器用さ、機動力が要求される川崎千六。3〜4コーナー早めに抜け出し、そこで引き離す形なら十分逆転が描けるだろう。クラーベ=4歳、ミラクル=5歳。まったく互角のライバルになる日も、そう遠くない気がする。

 レッドクラウディアは前述通り切れ味鋭い3歳馬。同時期のレマーズガール、ラヴェリータと較べやや線が細い印象だが、恵量52キロ、コースを熟知した内田博Jの手綱なら、流れひとつでチャンスが浮かぶ。

 プレシャスジェムズは昨シーズンから交流牝馬G参入、4、2、3、3着と思惑通りの結果を出した。ただ前走マリーンC3着など典型的な先行馬ペースを4コーナー先頭、それでいてミラクル、クラーベに並ぶところなく抜き去られた(最後0.9秒差)。昇り目、新鮮さは期待しづらい。

 それなら地方初登場でもスティールパスか。JRAダート4勝、今季1000万→1600万と連勝し、前走オープンも小差4着。父ネオユニヴァースで、馬体、走法ともパワーを感じる。地方側の穴馬はミヤサンキューティ。ここまで7勝すべて千二だが、昨夏重賞・優駿スプリント完勝など、ことスピード能力は交流Gでも遜色ない。ここで新境地を開くかどうか。笠松の快速エーシンクールデイは、逃げにこだわる単調さ。手の内が見えてしまった弱みがある。

◆帝王賞回顧
(6月27日 大井 サラ4歳以上 定量 JpnI 2000m良)

△(1)ゴルトブリッツ 2分03秒0
○(2)エスポワールシチー 3.1/2
△(3)テスタマッタ 首
 (4)シビルウォー 頭
◎(5)ミラクルレジェンド 3
 ……………………
△(6)トーセンルーチェ
▲(8)ランフォルセ
△(10)オオエライジン

単300円  馬複470円  馬単880円  3連複390円  3連単1940円

 ゴルトブリッツが圧勝した。道中先行するランフォルセ、エスポワールシチーの3番手を持ったまま。直線中ほど、それこそほんのひと気合で抜け出し、最後は人馬ともポーズを決めるような余裕があった。千通過61秒6。スマートファルコン、フリオーソ不在で、確かに楽な流れ(先行馬有利)にはなったが、ゴルトブリッツ自身上がり36秒3だから、少なくともこの夜に関しては100点満点の評価がそのまま当たる。新星誕生。3歳暮れ1000万の身で東京大賞典に挑戦し、当時スマートファルコンの7着だった。しかしそれから1年半、さまざまな経験を経て堂々たるGI級に成長した。

「パドック、返し馬の時点から絶好調を感じました。スッと流れに乗れたし、展開、ポジションも思惑通り。この先どこまで強くなっていくか、今の勢いはとにかく凄い」(川田騎手)

 同馬の戦歴を簡単におさらいする。JRA遅いデビューで6戦未勝利、やむなくいったん道営転入、しかし当地2勝をあげ、そこから改めて快進撃が始まった。前述東京大賞典こそ7着だったが、以後アンタレスS=GIII連覇、昨夏、盛岡・マーキュリーC=GIII圧勝で地方ダート適性も証明した。

「もともと夢と期待が大きい馬。まだまだ進化すると思うし、それを意識して育てていきたい」(吉田直弘調教師)

 吉田師のいう夢と期待とは、当然“良血”もあるだろう。スペシャルウィーク×シーキングザゴールド、ディープインパクトの甥。今後ひと息入れ、最終目標ジャパンCダートとコメントされたが、いずれにせよ同馬ベストは中〜長距離と判断したい。南関東再登場なら、今秋は川崎・JBCクラシックがあり、むろん年末には東京大賞典も控えている。

 この夜の場合、正直2着以下がかすんでしまった。エスポワールシチーは結果大事に乗った善戦だが、反面勝ちに行く闘志が感じられず、これはおそらく鞍上の判断(感性)だろう。本質マイラーということ。予想者としては今後の評価が難しくなった感がある。テスタマッタは元より不器用で、先行馬ペースは根本的に合っていない。それでも崩れず3着なら、我慢強くなった気性面の成長を評価すべきか。

 シビルウォー4着は、全体に時計がかかったこと、鞍上(吉田豊J)が思い切りよく捲ったこと。GIではスピード面に限界がある。期待したミラクルレジェンド5着。外枠からスムーズに内へ入れた内田博Jの腕はさすがと思えたが、逆に直線窮屈なインで脚を余した。ただこの日は上がり37秒6、同馬らしからぬ平凡な数字で、いずれにせよ能力通りとは思えない。体調と気分、微妙な破綻があったか。トーセンルーチェは中団のまま動けず終了。一つ経験にはなりそうだが、やはりもう1〜2F距離がほしい。

◆優駿スプリント回顧
優駿スプリント(6月29日 大井 サラ3歳 別定 南関東SIII 1200m良)

△(1)ゴールドキャヴィア 1分12秒2
◎(2)コウヨウタレイア 2
△(3)オゼキング 1.1/2
 (4)メビュースラブ 3/4
 (5)メイクアミラクル 首
 ………………
△(6)ラブミーファスト
▲(7)レイモニ
△(8)カムリ
○(14)チャンピオンヤマト

単880円  馬複2020円  馬単4380円  3連複4070円  3連単30330円

 ゴールドキャヴィアが鮮やかに抜け出した。最近になく好スタートが切れたこと、折り合いに不安のない千二百で終始スムーズに走れたこと。それにしても直線の脚いろは群を抜き、ここ数戦とは別馬のような力強さ、しなやかさが感じられた。負傷が癒え、今開催から7か月ぶりにカムバックした御神本騎手。

「リズムに気をつけて…という指示。(外から見ていた)イメージとは少し違ったけれど、走る馬です。最後まで余裕があった」

 同騎手はリハビリが長引き、まだ騎乗頭数を絞っている段階(ここが復帰9戦目)だが、それでいて気性の難しいゴールドキャヴィアを、いきなり絶妙な手綱捌きで勝利に導く。自身、重賞通算23勝目。“天才”を、改めてアピールした一戦といえるだろう。

 さてゴールドキャヴィア。昨暮れ道営(1勝)から船橋転入。以後大井・桃花賞→雲取賞と準重賞連破、しかし浦和桜花賞で期待を裏切り(2番人気・5着)、そこから一転トンネルに入っていた。この日496キロ、すらりと脚の長い体形で、フットワークも典型的な大跳び。ゴールドアリュール×コマンダーインチーフの背景からも、生粋のスプリンターとは雰囲気が大きく違う。

 持ち駒豊富な川島正行陣営。今後どういう方向へ育てていくか。気性面の成長があれば、むろん選択肢は大きく広がる。ともあれ今回千二1分12秒2。現時点3歳馬の時計としては合格点以上がつく。絶対能力が高いことは間違いない。

 2着コウヨウタレイア。2馬身差の数字通り完敗だが、道中混み合う中団からひるまず追い上げ、上がり37.8秒は勝ち馬と遜色ない。おそらくこちらは天性の短距離ランナー。心身とも一戦ごとに充実し、この路線で大きな飛躍が期待できる。3着オゼキングも、道中厳しい手応えながら直線の脚はきらりと光った。クロフネ×トウショウボーイ、バランスのとれた好馬体。まだまだ上積みがあるイメージだろう。

 差し有利の馬場で、メビュースラブ、メイクアミラクル、後方待機組が健闘。ともにJRA1勝らしい力は感じられる。チャンピオンヤマトは逃げて失速。隆々とした筋肉質の馬体など、いかにも快速スプリンターを思わせたが、今日の結果を見る限り精神面に課題を残す。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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