7月1日終了時点で37勝を挙げ、関西リーディング6位。今、もっとも注目の若手といえば、この『キシュトーーク!』でもおなじみの松山騎手です。デビュー初年度に挙げた36勝を、あっさりと更新した今年、いったい彼になにがあったのか!? 今月は4週にわたって、ブレイクの裏側に迫ります!
■バレンチノは重賞を勝てる馬だと確信していた
函館スプリントSを制覇した松山騎手
──函館スプリントS優勝、おめでとうございます!
松山 ありがとうございます。
──函館での騎乗は、あの日が初めてだったんですよね?
松山 そうなんです。でも、ドリームバレンチノ自体は小倉でも勝ってますから、小回りが苦手ではないことはわかっていたので。けっこうパワーがあるタイプなので、初めての洋芝もこなしてくれるだろうと思っていました。
──スタートはもうひとつでしたが、焦りなどはありませんでしたか?
松山 それが逆にいいほうに出たと思います。とにかくロードカナロアが相手だと思っていたので、どうやったらロードを負かせるかを考えました。ロードの後ろを付いて行って、ロードが抜けてから追いかけた場合、2着は十分狙えるけど絶対に勝てない。だったら、一度外に持ち出して、外からロードより早めに動こうと。
──直線に向いたとき、右後ろにロードがいるのはわかってました?
松山 はい、わかってました。とにかくロードカナロアだけを意識していたので。あのときは、先に動かないと、っていう気持ちでしたね。
──追い出してからのコース取りは絶妙でしたね。結果的に、ロードは進路を変えざるを得なかった。
松山 たまたまです。意識したところで、なかなかできることではありませんからね。なにより、あれだけ外を回って、早めに動いてっていう競馬は、能力がないとできない競馬ですからね。ドリームバレンチノが能力の高い馬だったから、勝てたレースだと思います。
──相手は高松宮記念で1番人気に支持された馬ですものね。自信になったのではないですか?
松山 そうですね。そういう馬に勝てたっていうことは、今後に向けてもすごく大きいことだと思います。今後は、サマースプリントシリーズを目標に、キーンランドCに行く予定です。
──秋にはスプリンターズSという目標もできましたね。一緒に上を目指して行ける馬がいると、気持ちの面でも充実してくるのではないですか?
松山 はい、もちろんです。ただ、この先も僕が乗れるかどうかわかりませんけど…。でも、大きいレースで依頼されるジョッキーになりたいですし、ずっと乗せていただくためには、今しっかりやっておくことが大事かなって思っています。
──昨年の12月に公開した『あいうえおトーク』(キシュトーーク!)で、「くやしかった出来事は?」という質問に“乗り替わり”とおっしゃっていましたが、その直後の小倉で、ドリームバレンチノの手綱が勝浦騎手に…。
松山 すごく悔しかったです…。ただ、前走(12月10日・中山11R・ラピスラズリS)の負け方が負け方だったので(※スタートで後手を踏み、直線で脚を余して4着)、仕方がないなと思いました。悪いのは自分だと。自分の技術のなさが招いたことですからね。地道に結果を出して、いつか戻ってくる日を待とうと思いました。
──途中で乗り替わった時期もありましたが、デビュー戦からずっと騎乗されてきた馬ですものね。
松山 そうなんです。ずーっと乗ってきた馬でしたし、この馬なら重賞を勝てると、自分のなかで確信していたのもあって。ちょうど、(乗り替わったのが)僕自身の成績が上がってきたときで、今こそもっと目立たないと! っていう気持ちがすごく強かった時期だったんです。そんなときに、メインレースを勝つチャンスのあるバレンチノが乗り替わってしまったので、正直、今後の騎手人生にもかかわるなぁくらいに思いました。まぁ僕のせいなんですけどね。
手綱が戻って来たときは大緊張
──でも、その後、淀短距離S(安藤勝騎手で3着)を挟んで、4月の福島民友C(1着)で手綱が戻りました。力の入った一戦だったのでは?
松山 めちゃくちゃ緊張しました! あの福島のレースは……、本当に緊張しましたね。なにがなんでも勝たなきゃいけないって思ったし、絶対に取りこぼせないレースでした。でも、乗り替わるきっかけになったラピスラズリSと同じ、1枠1番だったんですよ。“あ、まただ…。どうしよ〜”って一瞬焦りました(笑)。でも、あのレースで改めてバレンチノの能力の高さを感じることができましたし、本当に勝てて良かったです。オープン特別でしたが、思わずガッツポーズしちゃいました(笑)。本当にうれしかったんです。
──その勝利をきっかけに、函館スプリントSまで3連勝。いまや、人馬ともすっかり注目の存在ですね。松山騎手ご自身も、今年は絶好調です。リズムを取り戻すきっかけなど、なにかあったのですか?
松山 最近、すごくよく聞かれるんですけど…(笑)。やっぱり、周りの人から見れば「なんで急に?」って思いますよね。とくになにかがあったわけではないんですけど、2年目から去年の途中までは、いろんな意味で落馬が尾を引いていて…。
【次回のキシュトーーク! は?】
今年前半、もっともブレイクした騎手といっていい松山騎手ですが、初年度の新人賞獲得から一転、ここに至るまでには苦しい時期もありました。次回は、落馬が続いた2年目から、昨年中盤までの試練のときを振り返ります。