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ジャパンダートダービー展望&スパーキングLC回顧

  • 2012年07月10日(火) 18時00分
◆ジャパンダートダービー展望
 ジャパンダートダービー(7月11日 大井 サラ3歳 定量 JpnI 2000m)

「ジャパンダートダービー」は平成11年新設(それ以前はスーパーチャンピオンシップ、スーパーダートダービーなどの名称で秋季実施)。以後13年間の歴史を積み重ねた。JRA9勝、地方(南関東)4勝。2〜3着数も含めJRA優勢は動かないが、さりとて、まったく敵わない…結果、傾向とも少し違う。

 もう一つ面白いこと。その優勝馬、ゴールドアリュール、カネヒキリ、フリオーソなど、長く時代をリードしていく王者の名前が並ぶ半面、マイネルコンバット、フレンドシップなど、1戦だけの栄光に終わってしまう馬も相当数存在する。思えば3年前の勝ち馬テスタマッタは、それから長い浮き沈みを経て、今季フェブラリーSでようやくGI復権を果たした。一昨年マグニフィカは、さらに深刻なトンネルに迷い込み、前走京成盃GMが何と2年ぶりの勝利だった。さらに昨年ワンツーを決めたグレープブランデー、ボレアスの信じがたいような挫折と低迷。理由が何かは特定できない。しかし現実に“不思議の勝ち”“不思議の負け”が、ある種レースの伝統になっている。

 12年アグネスデジタルを思い出した。ご存じの通り同馬は天皇賞、安田記念、フェブラリーS、さらに香港カップ、芝・ダート縦横無尽に勝ちまくった歴史的名馬だが、なぜか3歳春、このレースに限って謎の大敗(14着)を喫している。道中4番手、ごく自然体に好位キープ、しかし勝負どころであられもなく失速した。「大井の3〜4コーナーには魔物が潜む――」。翌日スポーツ紙の見出しが記憶にある。そして以後デジタルは、帝王賞、大賞典、格好のターゲットがありながら、大井に足を向けることは2度となかった。繰り返すが、不思議の勝ちと不思議の負け。「ジャパンダートダービー」は、記者的には楽しみと同時に、不可解かつ厄介なレースだと毎年思う。

 (1)…波乱含み。1人気〔4-1-1-4〕は水準の数字だが、21年スーニ、22年バーディバーディ、ともに一本人気(単2・0倍以下)で6、6着だから楽観できない。2人気〔2-2-2-4〕、3人気〔2-3-2-3〕もほぼ互角。

 (2)…JRA優勢。JRA=8勝、2着8。数字通り断然だが、21年スーニ(単2.0倍)、22年バーディバーディ(1.5倍)など、思わぬ破綻(ともに6着)もないではない。船橋=2勝、2着1。他は川崎=2着1。

 (3)…端午S組。ユニコーンS優勝馬〔1-2-1-2〕、同2着馬〔1-0-1-4〕と確率が低く、東京ダービー馬も〔0123〕だから胸が張れない。JRA「端午S」出走組が優秀で、前10年、3勝して2着2、3着3。

 (4)…好位差し。逃げ=2、先行=7、差し=10、追込=1。純然たる逃げ切りはゴールドアリュール1頭で、それを射程圏で進む好位〜中断からの差しが理想。3勝・武豊J不在は残念だが、替わって角居厩舎・2勝に注目。

 ※データ推奨馬
 ◎ハタノヴァンクール…ダート4戦4勝。出世レース「伏竜S」「端午S」を息の長い末脚で競り勝ち、いかにも堂々と王道を歩んでいる。ある程度信頼できる1番人気馬(当日推定)。鞍上・四位騎手も、前述アグネスデジタルで「南部杯」、イシノサンデーで「ダービーGP」制覇。地方Gを得意とする円熟のベテランといっていい。

       ☆       ☆

 ◎アートサハラ    56今野
 ○ハタノヴァンクール 56四位
 ▲ストローハット   56内田博
 △プレティオラス   56本橋
 △オースミイチバン  56川島信
 △トリップ      56小牧太
 △ホッコータルマエ  56 幸
  フリートストリート 56岩田
  マイネルセグメント 56今井
  
 JRA勢が例年にも増して層が厚い。準決勝である「ユニコーンS」から1〜2着両者いずれも参戦し、ダート登竜門、出世レースである「端午S」からも強豪が顔をそろえた。彼らの父、フジキセキ、アグネスタキオン、キングカメハメハ、クロフネ…と並べても迫力満点。ごく客観的にみて“空前のレベル”といえるだろう。

 だからあえて◎アートサハラは、正直ひいき、心情が大きく入る。ホームの利を含め、いくつか“幸運”が必要なことは否定しない。記者なりの根拠を3つあげる。大外をまくった「羽田盃」が掛け値なしに強かったこと。母アートロマン、姉アートブライアン、兄アートルマン、確かな南関東血脈を持ち、自身馬っぷりも素晴らしいこと。羽田盃の翌日「プリンセス賞」を制したアスカリーブルが、続くGII「関東オークス」でJRA勢を撃破したこと。結局今年の場合、南関東レベルが低いのではなく、今回JRA6頭のインパクト(ネームヴァリュー)が強すぎる、そういう状況と考えたい。羽田盃3着、続く前走「東京ダービー」でアートサハラ以下を差し切ったプレティオラスも当然脈あり。こちらはダービーのデキを維持しているかが鍵だろう。

 JRA勢の比較。レースぶりの凄みはハタノヴァンクールが最上位だ。ダート4戦4勝、ズブい気性だが、いったんエンジンかかってどこまでも伸びるパワーを感じる。逆に完成度とセンスはストローハット。「ユニコーンS」は完璧な好位差しで、いかにも父フジキセキらしい垢抜けた競馬とみえた。同レース2着オースミイチバンも末脚互角だが、当時出遅れを直線一気、ややダメージ(疲労)が残りそうな懸念もあり、こちらは当日の馬体、気配を重視したい。トリップは初ダートながら、弥生賞2着、クラシック善戦の絶対能力。クロフネ×ビーポジティブ(船橋・クイーン賞勝ち)の背景からも、いきなりが十分浮かぶ。ダート3戦3勝フリートストリートは今回4か月半の休み明け。それなら前走古馬を一蹴、端午S3着もあるホッコータルマエの充実度を上位にみたい。

◆スパーキングレディーC回顧
スパーキングレディーカップ(7月4日 川崎 サラ3歳以上牝馬 jpnIII 1600m重)

 △(1)スティールパス    1分39秒3
 ◎(2)クラーベセクレタ     1/2
 ○(3)ミラクルレジェンド    11/2
 ▲(4)レッドクラウディア    21/2
△(5)ミヤサンキューティ    11/2
 ……………………
  (8)リカチャンス
 △(11)プレシャスジェムズ
 △   エーシンクールディ  出走取消

  単1320円  馬複1310円  馬単3720円  3連複390円  3連単7260円

 スティールパスが鮮やかに差し切った。外からプレシャスジェムズの先行。ただ作戦通りというよりカカったような逃げで、テンポ自体はあまりよくない。リカチャンスが2番手追走、以下クラーベセクレタ、レッドクラウディアと続き、スティールパスはその直後でスムーズに折り合った。千通過61秒9、軽い馬場を思うとスローに近く、結果上がり勝負、決め手勝負になったことも同馬にとっては幸いした。4コーナー、一歩早く先頭に立ったクラーベセクレタ目標に、これぞ切れ者という瞬発力。

「パドック、返し馬の時点でいい感触がありました。イメージ通り追ってしっかり伸びてくれる」(蛯名騎手)。馬自身の能力はもちろん、勝負勘に優れた鞍上がそれを100%引き出したこと。蛯名J、同馬と初コンビだから、なおさら今夜は腕が光った。

 スティールパスは、ネオユニヴァース×ブライアンズタイムの5歳馬。JRAダート5勝ながら距離面に課題(千六以上連対なし)を抱え、評価は半信半疑(4番人気)だった。ただ今日のレースを見る限り、折り合いさえつけばマイルもまったく問題ない。当日22kg増の馬体もとりたてて太くは見えず、戦前「重心の低い、ダート馬らしい体つきになってきた」(松田国調教師)のコメント通りと納得できる。勝ちタイム千六=1分39秒3。高速馬場を考えれば平凡に過ぎないが(昨年ラヴェリータ=39秒0)、こうしたタイプは流れひとつで大きく時計を詰めてくる。クラーベセクレタ、ミラクルレジェンド、2強の勢力地図をひとまずこの日崩してみせた。ラヴェリータが抜けた統一牝馬G。新戦力(新鮮力)への期待はもちろん大きい。

 クラーベセクレタ2着。すぐ後ろを進むレジェンドを意識したレースになり、結果好騎乗、蛯名スティールに足元をすくわれた。ともあれクラーベ自身、地力をみせながら惜敗はやはり痛い。いわゆる“総合能力”は牝馬屈指。しかし“ピュッとくるタイプ”に弱い面はありそうだ。距離適性を含め、今後照準をどう定めるか、再びテーマが出たかもしれない。記者個人的にはパワー勝負、牡馬GI路線(中距離)を、もう一度試してほしい思いもある。3着ミラクルレジェンドは今日の場合、ごく普通の“不器用な追い込み馬”に終わってしまった。帝王賞からの連闘がどう響いたかはわからない。ただ一流馬としては感心しないステップで、馬券を買うファン側からも疑心暗鬼。前例にしてほしくない。レッドクラウディアは、勝ち馬とほぼ同位置をキープしたものの、追って案外伸びなかった。待機策を決め込んだミヤサンキューティ同様、今回は一つ経験ということか。プレシャスジェムズは前述通り折り合いを欠いた逃げ。元より厳しい流れをはね返す底力は疑問がある。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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