函館記念は芝の2000mで行われる。コースの傾向に触れるまえにラジオNIKKEI賞ー七夕賞と続いた先週と先々週の福島を顧みる。前者は芝の1800mで後者は芝の2000mが舞台。先週の当欄で書かせていただいたようにこの200mの違いは小さくない。発馬地点が異なることで生じる1Fの差。すべて直線である。1角までの距離が長くなることで2000m戦の方が前半の攻防が激しくなりやすい。それだけ差し馬が台頭する余地が生まれるということだ。実際にラジオNIKKEI賞は好位組が1、2着を占めて七夕賞の連対馬は差し組。傾向通りの決着となった。
同様のことが当コースにも当てはまる。ゲートの場所は4角の奥。これが1800mだとスタンドの前になる。1角までの距離が短いことで流れは落ち着きやすい。対象的に2000mは1角までに十分な距離がある。国内で最も直線の短い競馬場とはいえこの形態の差は大きい。先陣争いが激しくなることが多い分、差し馬の活躍が増えるのだ。まして2開催目の最終週である。逃げ・先行勢にとっては楽ではない状況と考えていい。
過去10年を回顧してみても明白だ。先陣を切った馬の連対はわずかに2回。4角を6番手以降で回った勝ち馬は6頭。半数以上もいる。レースにおける最速の上がり3Fは09年の35秒5。良馬場ならおおむね35秒後半から36秒台。38秒0の年もあった。馬場が悪化した場合は39秒台の争いになる。先行争いが激しくなりやすいうえに2開催目の最終週で馬場は傷んでいる。ましてパワーを要求される洋芝だ。極端な小回りコースでも差し組を中心に考えを組み立てるべきだ。
ハンデ頭について。03年のエアエミネムが58kgを背負って勝利を飾ったのみ。残りの9年はすべて馬券の対象から外れている。56.5kgが1頭に57.5kgが3頭。そして58kgは前記のエアを除いて5頭。今年はコスモファントムが57.5kgのハンデを課せられておりトップハンデだ。データとしては厳しい立場にいる。パワータイプで初の洋芝がプラスに働くことは考えられる。休養明けの成績もいい。当日輸送が苦手なことを思えば滞在競馬も歓迎だろう。ただ最終週の荒れ馬場で1番枠。ハンデを背負っていることが影響しないか。夏場に弱い点を加えて気になる部分ではある。
最後に枠順に触れたい。差し馬が有利の傾向にあるとはいえ相当な小回りコースであることに変わりはない。経済的に道中を通過するためには内枠が有利なのは当然だろう。過去10年で馬番がひと桁の馬が9勝。4番が4勝。今年はミッキーパンプキンが4番である。6番が2勝。3、5、7番が1勝ずつ。真ん中より内枠が有利なのは顕著だ。ただ1頭の例外が09年の勝ち馬サクラオリオン。フルゲート大外枠の16番だった。後方からポジションを上げて4角では7番手。見事に差し切っている。
中心にはロードオブザリングを推す。行きたがる面があり2000m戦が合う。器用さに欠ける点から小回りコースも向く。持続力のある差し脚がコース形態にはまる可能性が高いからだ。血統背景や走法を考慮すれば初めての洋芝もプラスに働くだろう。昇級初戦で55kg。1kg見込まれた印象だが右肩上がりの現状と条件を踏まえれば問題ない。見込める展開もいい。
ミッキーパンプキンの前走はいきたがる面があったことに加えて舌を越していた。好枠を引き当たことで先行勢を見据えて内々でためていく競馬が可能。舌を縛って参戦する今回は怖い。54kgのトランスワープは昇級3戦目。発馬で1馬身遅れた前走で差してきたように潜在能力は高い。自分の型から外れていながら着順を上げている。これで54kgは恵まれたといっていい。回転力のある走法だ。当コースにも合うだろう。
トウカイパラダイスは馬群にひるむことなとのない根性の持ち主。7番枠をプラスにできる。反応がいいのでこの舞台にも向く。昨年の覇者を含めて高齢のマヤノトップガン産駒が3頭出走。注目したいのはイケトップガンとマヤノライジンだ。前者は一瞬の脚に長けている。2000mは本質的に適性よりやや長いが52kgを生かした立ち回りで克服できる。後者は5年連続6回目の当レースへの参戦。昨年2着時より1kgハンデが重い。力は落ちていない。