まずは馬場の形態について触れてみたい。札幌の芝1800mがクイーンSの舞台。正面スタンドの前が発馬地点で回るコーナーは4つ。癖のない設定と言っていいと思う。着眼点として挙げたいのは発馬地点から1角までの距離だ。この部分が短いことで外枠の馬は楽ではない。内に潜り込むために一気に脚を使うか後方待機を決め込むか。脚質にも左右されるが逃げ・先行型でない馬が外枠に入った場合は神経を使わされるのではないだろうか。
過去10年の傾向に目を移してみる。
当レースの特色は勝ち馬の4角における位置取りに尽きる。実にのべ7頭が先頭なのである。03、04年と連勝したオースミハルカは逃げ切っての勝利。07年のアサヒライジング、08年のヤマ二ンメルベイユも先陣を切って後続を封印している。逃走型に注意が必要なのは当然として4角で先頭に立つことが可能な馬が相当に有利だ。必然的に好位につけている馬が優位ということになる。それを後押しするものはなにか。小回りという形態を考慮しても枠順という答えに行き着く。
馬番が2桁で連対したのは10年の1着馬アプリコットフィズと11年の2着馬コスモネモシンのみ。ここ10年でわずか2頭しかいない。フルゲート14頭で争われたのは6回。それ以外も13頭が2回、12頭が1回、11頭が1回。すべて10頭以上そろっている。いかに内枠が有利かという証明といっていい。
もうひとつ注目しておきたいのが3歳馬の存在だ。3勝して2着が2回。3着も2回ある。3着以内の30頭のうち7頭を3歳馬が占めているということになる。3歳馬の出走数は26頭を数える。勝率の高さ、馬券の対象となる確率は他の世代を上回っているのだ。成長力の違いは当然として負担重量の差は小さくない。まして今年は8月中旬に施行されていた昨年までと違う。8月2日以降は3歳52kg、4歳以上55kgが基本で収得賞金3000万円を超えている馬は2000万円を超過するごとに1kg増える。
ところが今年は7月29日に行われる。4歳以上が55kgという重量に変動はないが3歳馬は51kgで出走が可能。洋芝という条件を考慮してもこの1kgの差は大きいのではないだろうか。
エリンコートを中心視する。まず1番という馬番は過去10年で2勝2着1回という良績を持つ。この馬自身当地で未勝利を卒業。元来は行きたがる面を持っていたことで短距離戦を使われていた事実もある。本来は前々で戦うことが可能なタイプだ。前走のマーメイドSは7着。じっくりと進み道中の行きっぷりも上々。外めをしっかり伸びていたように復調の兆しは伝わってきた。恐らくこの季節が合うのだろう。張りのある身体で5か月ぶりの実績を使われた効果は明白。そして鞍上である。横山典が騎乗しての最内枠だ。メリハリの利いた競馬を敢行することは十分に期待できる。好位からの積極策で昨年のオークス以来の勝利が可能になる。
ミッドサマーフェアは前走時に脚をぶつけた影響で復調途上の印象は拭えない。それでも51kg、潜在能力の高さ、まだ競馬の型が決まっていないという様々な魅力にあふれている。アニメイトバイオは装着したメンコが裏目に出たのか前走では行きっぷりが良くなかった。前々走はチークピーシーズをつけられ掛かるほどの闘志を見せた。直線で詰まる場面がなければ11着に終わることはなかったはず。実績のある舞台、内枠で上昇できる。自在性と52kgを生かすアイムユアーズにも注意がいる。先行力を持つピュアブリーゼも3番枠なら侮れない。コスモネモシンは小回り向きで洋芝も合う。