スマートフォン版へ

馬にもポカリスエットが有効!? 調教助手トリオが語る猛暑対策

  • 2012年07月31日(火) 18時00分
左から相田一善助手、柴田未崎助手、鈴木勝久助手

左から相田一善助手、柴田未崎助手、鈴木勝久助手

 今年も夏がやって来ました! 蒸し暑い日が続き、すでにウンザリの方も多いと思いますが…サラブレッドたちにとっても、この暑さは過酷な試練! 美浦トレセンでは、各厩舎さまざまな対策を講じていますが、今回は斎藤誠厩舎にお邪魔して、暑さに負けず元気モリモリな調教助手トリオにお話を伺いました(相田一善助手、柴田未崎助手、鈴木勝久助手)。

赤見 :斎藤厩舎の暑さ対策を教えて下さい。

未崎 :「設備としては、“よしず”とミストと扇風機ですね。よしずは厩舎のハナ前に立てて使うんですけど、直射日光や照り返しを遮ってくれるし、風通しがいいんですよ。やっぱり、昔からあるものはいいですね」

赤見 :厩舎の中は涼しくて気持ちいいですね!

昔ながらのよしずを活用

昔ながらのよしずを活用

自動で噴き出すミスト

自動で噴き出すミスト

未崎 :「外気と3度は違うと思いますよ。ミストは馬房の前にあって、何分か置きに自動で噴き出すようになってます」

赤見 :これを一日中?

未崎 :「いや、午前中いっぱいです。午後は屋根が熱を持つので、湿気がこもって蒸しちゃうんですよ。午後はよしずもミストもなしで、風通しを良くします。その日その日で天気も気温も違うので、色々考えながら調整してます。エアコンもいいのかもしれないけど、乾燥したり体の表面が冷えすぎたりしちゃうので。やっぱり自然の力で涼しく出来れば、一番いいですね」

赤見 :設備以外で、夏ならではのものってありますか?

相田 :「他の厩舎でも使っていると思いますけど、ポカリスエットやアクエリアスみたいな物の粉末バージョンをあげてます。人間もそうだけど、夏場は特に水分と塩分のバランスが大切ですから。水に溶かしたり、カイバに混ぜたりしますが、味があるので嫌がる馬もいるんですよ。そういう馬には岩塩を舐めさせます」

赤見 :岩塩!? しょっぱくないんですか?

相田 :「それがね、食塩と違ってうま味のあるしょっぱさなんです。けっこういい岩塩使ってるんですよ! カイバはかなり大事なことなので、うちの厩舎では厩務員さんが各自考えて作っています。人間でも、暑い日はそうめんが食べたくなるし、毎日焼肉出されたらウンザリでしょ? 馬は人より食べ物の幅が少ないから、その分体調に合わせて食べさせるタイミングとか量がすごく大事なんです」

岩塩で塩分吸収することも

岩塩で塩分吸収することも

赤見 :食べさせるタイミングですか?

相田 :「疲れて食欲がない時に、目の前に食べ物を出されたら嫌じゃないですか。ちょっとお腹が空いたなっていう時に出されれば食べたくなるし、タイミングは大事です。ベテラン厩務員さんを見てると、特にカイバを増やしたわけじゃないのに、レース前にきっちり筋肉が出来てるんですよ。あれは食べさせるタイミングとカイバのバランスだと思うんです。僕もいつかあの域に達したいので、横目で見ながら研究してます」

赤見 :よく、夏は女馬! って言いますけど、何で女馬の方が暑さに強いんだと思いますか?

未崎 :「う〜ん、なんでですかね。女馬は暖かくなるのと共に良くなる馬が多いですよね」

相田 :「なんでだろうね。本当に男馬はヘバりやすいですよ。30度越えたら、よっぽど暑さに強い馬じゃない限りはヘバりますね」

鈴木 :「科学的に証明されたわけじゃないけど、男馬ってヘバると急所が腫れたり下がったりするじゃないですか(笑)。あれ見てると、熱の逃がし方が下手なのかなって思いますね。馬って体温調節の仕方が人間とは違うじゃないですか。全身毛で覆われてるし。そういう意味で、女馬の方が熱の逃がし方が上手いのかなと」

未崎 :「まぁ、とにかく女性は難しいということですよ(笑)」

赤見 :7月22日の新潟で新馬戦を勝った、ナンヨーケンゴーは強かったですね!

未崎 :「男馬ですけど、暑さも全く堪えてないし元気いっぱいですよ。カイバもぺロっと食べちゃうし、それが取り柄ですね(笑)」

相田 :「やっぱり、ご飯を食べられないとダメなんです。食べることも素質ですから」

新馬Vのナンヨーケンゴー、次走は新潟2歳S

新馬Vのナンヨーケンゴー、次走は新潟2歳S

鈴木 :「この後は8月26日の新潟2歳Sに出走する予定です。デビュー戦はまだ太目残りだったんで、使った効果は大きいですね。あれだけの走りを見せてくれたので、これからが楽しみです」

赤見 :夏競馬は特に長距離輸送が増えますけど、その辺りの影響は?

相田 :「輸送自体はいいんですけど、やっぱり馬運車のエアコンは気になりますね。僕も直接風が当たるのは苦手ですけど、馬でもエアコンの風でまいっちゃうのがいるんですよ。もちろん、馬運車にエアコンがなかったら、それこそ蒸し風呂状態で困るんだけど、場所によっては風がまともに顔に当たることもあるから。着いた時に顔を触ると冷たかったりして、風邪を引く馬もいるんです」

未崎 :「みんなで使う馬運車だから、どこに繋ぎたいとかあんまり我がまま言えないし、なるべく調節してるんですけど、新潟までだと6、7時間はありますから」

赤見 :馬運車のエアコンですか。それは気づかなかったです。

相田 :「馬は言葉を話せない分、僕たちがしっかり考えてケアしてあげないと。僕たち人間は、暑いだの寒いだの言ってられないですよ」

赤見 :暑い夏と寒い冬、どっちがいいですか?

3人:「それはもちろん、春と秋が好きですっ!!!!」

 言葉を話せない馬たちのために、少しでも過ごしやすくしようと毎日奮闘している関係者たち。こういう陰の努力が、夏競馬を支えているんですね![取材:赤見千尋/美浦]

◆次回予告
次回は栗東から常石勝義さんがリポート。障害最年長ジョッキー・林満明騎手のベテラン技をご紹介します。公開は8/7(火)18時、ご期待ください。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング