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ホッコータルマエの半弟などが上場、2012サマーセール

  • 2012年08月15日(水) 18時00分
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 昨年は例年より2週間遅い9月初旬に開催されたサマーセールだが、今年はまた8月下旬に戻され、いよいよ来週月曜日(20日)より行われる。上場申込頭数は1297頭。疾病や怪我などによりここから一定数の欠場が出ることになるものの、相変わらず相当な多頭数がここに登場する予定である。

 サマーセールは以前、8月定期市場と称され、その上場頭数の多さにおいて昭和の時代より日高の代表的な市場であった。近年になっても、その基本的な位置づけは変わらず、サラブレッドの生産頭数が日高を始め全国的に漸減(ぜんげん)傾向になりつつある中でも、むしろ上場頭数は少しずつ増加傾向にある。

サマーセール

昨年のサマーセールの様子

 今年1歳になる2011年産のサラブレッド頭数は、日高管内で5630頭。全国では7085頭となっているが、5年前の2006年には、全国の生産頭数が7680頭、日高管内でも6233頭が生まれていた。

 それぞれ5年間でちょうど600頭ずつ減少したことになる。にもかかわらず、同じく2006年と2011年のサマーセールにおける上場頭数を比較すると、06年が1122頭、11年が1209頭で、むしろ増加している。生産者にとってのサマーセールは、生産馬を販売する上で必要不可欠な主要市場なのである。

 1297頭の大半を占めるのは日高管内で生産されたサラブレッドだ。牧場によっては、全生産馬の大半を上場申込している例も少なくない。仔分けや預託などの契約によってオーナーから預かっている繁殖牝馬の産駒は、通常の場合オーナーが引き取り競馬に供するが、牧場が自己所有している繁殖牝馬から生まれた産駒は、原則として販売しなければならない。

 もちろんオーナーブリーダーならば地方でも中央でも自分の服色で競馬に供することは可能だし、クラブ法人に提供する道もないわけではない。

 だが、多くの中小牧場にとって、これらはなかなかハードルが高く、損失を覚悟しなければならないため、どうしたって腰が引ける。よほどの素質馬であっても、期待通りに走るかどうかは未知数だから、販売できる機会があればできるだけ売ってしまいたいのが本音であろう。

 また、以前のように、個別に生産牧場を訪れて目当ての馬を庭先買いするオーナーは激減しているとも伝えられる。庭先で売れなければ、残る手段は公設市場しかなくなる。

 今年はどういう結果になるだろうか。昨年の例では、上場1209頭に対して519頭、42.9%が落札された。長年、20%~30%台で推移していた売却率が、一昨年あたりから急上昇してきているのは喜ばしいことだが、その反面、平均価格の落ち込みが気になる。

 昨年は390万6040円と、10年前の2001年当時の数字(637万6408円)と比較すると、実に247万円も減少してしまった。これにはさまざまな要因があり、一概に日高産馬の質の問題とは言い切れないが、競馬において相対的に社台グループ生産馬の活躍が目立つようになっているのは間違いなく、そういう風潮が市場での購買価格に反映しているとは言えるだろう。

 分厚い3分冊の市場名簿を繰り、近年の活躍馬たちを紹介する頁を見ると、サマーセールを含め日高の市場出身馬の競走成績がやや先細り傾向にあることも気になる材料で、2008年生まれの欄では、現時点で中央競馬における重賞勝ち馬がわずか2頭にとどまっている。

 2008年生まれは現4歳。オルフェーヴル世代である。マルセリーナ、エリンコート、リアルインパクト、グランプリボスなどが同世代である。こう列記して行くと、いかにも難敵揃いの世代であることがよく分かる。

 とはいえ、市場活性化にとって最大の良薬は出身馬の活躍以外になく、次週のサマーセールもまた数多くの落札馬の中から出世する逸材が登場することを願うばかりだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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